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常田の思いとは裏腹に、智もまたこの場での流れを見ていた。

今日は姉を励ますというか、少しでも気分転換出来ればいいと、こんな店に連れてきた。

幸先よく二人の男性とセッティングが叶ったが、常田はまあ良いとして、真弥はあまりにも若すぎるのが少々マイナスポイントだ。

と、なると常田一本に絞るのが得策だが、ワイルド系の顔は美智香の好みではなく、また、常田自体が智の方に狙いを定めているのも丸わかりだった。

この男達とはムリか…と考えていたが、すぐに考えを改めた。

何故なら、ずっとつまらなそうにしていた、若い真弥が、さっきからずっと美智香の方を見つめ、そして美智香が話をする度に頷いたり、笑ったり、そして、質問をしたりしている。


(ひょっとしたら…)


智は美智香の方を見たが、彼女自身は特段二人に関心を持っている様子はなかった。
だが、真弥のルックスは美智香の好みである事は間違いなく、やはり年齢差の絡みで、気持ちが揺れるとまではいってないのだろう。

智は決めた。

ここは常田とマッチングして、二人で店を出て
後は美智香と真弥に任せる。
美智香の方は別に何もしないだろうが、真弥に少しでもその気持ちがあれば、きっと何かしらの動きがあるに違いないと…

美智香以外の三者の思いもあってか、話がすごく盛り上がり、常田、智はもちろん、真弥も積極的に話をした。

だが、真弥はほぼピンポイントで美智香だけに話し、美智香だけに質問した。

こういう場では空気の読めないマズイやり方だが、やはり若さゆえの事であろう。

常田も智狙いを決めていたので、いくら撒き餌の真弥が美智香と話をしてもマイナスにはならず、むしろ場を盛り上げてくれている事に感謝すらしていた。


大いに盛り上がった宴に手応えを感じた常田は、ここぞとばかりに動き出す。


「あの、この近くによく行くバーがあるんですけど、場所変えて飲み直しませんか。」

常田の言葉に、智と美智香は顔を見合わせた。

ここで、事前の打ち合わせ通り、真弥が

「すいません、ちょっと明日早いので…
遠慮させていただきます」

と、言った。

常田は、智だけついて来れば成功
美智香と一緒に来てもまあ成功

両方ダメなら、何としてでも連絡先だけでもゲットして次に繋げるのだと、心に決めて勝負に出ていた。


美智香は智の目を見て

(断ろう)

と、自分の気持ちを伝えたつもりでいたが…

「じゃあ、そちらも一人なんだったら、ワタシだけ行こうかなあ。

お姉ちゃんも明日早かったよね?」

と、言った。

美智香は驚いたが、智もいい歳をした大人で、そこまでは責任が持てないし、自分だけでも解放してくれるように持って行ってくれた事は良しとしなければと思った。

こうして、美智香と真弥をその場に残し、常田と智は出て行ってしまった。
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