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第4話

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「お父上、貴方に紹介をしたい女性がおります」

 パラセコルト王国の現王であり父の私室へと、ラーテンは足を運んだ。
 彼は尊敬する敬愛の王へと、期待を高鳴らせて近づいていく。

 綺羅びやかを体現した、その内装に顕在けんざいするその人物こそが現王である。
 偉大さ、威厳が誇りとなって具現化されたる偉容の塊である。
 彼こそは偉大という言葉であり、彼の為す事に間違いは無し。
 故にこそ、王は玉座にて座らずとも王であった。
 
「女性だと? サラタ嬢が来ているのか? ならば然るべき時に挨拶があればよい。余計な気遣いは無用と伝えろ」
「サラタ? いえ、あのような魔女でございません。
到底似ても似つかぬ清らかさが、かの女性にはありますので。サラタなど、あの女の名を口に出すだけでも穢れるというものです」

 王の御前で不敬極まりないが、その言葉に一切の躊躇いは見受けられなかった。
 むしろ誇らしくさえあるのか、口角を上げて笑う姿はまるで英雄譚を語る少年のようである。
 そんな息子に、父は静かに口を開いた。

「……よいのだな?」
「は? 失礼ながら質問の意図を掴みかねます。よいとは、どういう意味でしょうか?」

 怪しげな問いかけに、眉根を寄せた息子の表情は険しさを増す。しかし、それも一瞬の事。次の瞬間には喜悦きえつに顔を歪めていた。
 それはまさに、物語の英雄たるに相応しい顔つきだった。そしてその男に隣に立つべきはルーインに疑いようが存在しない。
 王が続ける。

「その選択が貴様ならば、これ以上は問うまい。……よい、気が変わった。通せ」
「はは! では仰せの通りに。我が将来の妃ををご覧に入れましょう。
きっとお父上も気に入ること必至」

 水を得た魚か。そう呼ぶに値する程に歓喜を纏った王子は、王の私室を飛び出すように出ていった。
 送る目線を解き、王は目を瞑る。

「救国か……、全て神が賽の投げられるままだ。魔女とは毒か薬なのか、どちらにせよ我が子にとって良き道となる事はあるまい」

 王はそのまま身を整える事も無く、二人が来るのを待った。
 見極めは不要。流れるままにあるが如く。

(老いぼれは朽ちるのみ。時代の台頭に席は無し)
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