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第6章「ようこそ愛ヶ咲島」
第17話「お風呂イベント(後編)」
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ここの民宿の露天風呂は混浴だったのだ。脱衣所が別れていたのは、単純に男女別の方が着替えやすくなるためだ。俺はてっきり風呂も男女別になっていると思っていたが、それはただの勘違いだった。おそらく梓達もそう思っているのだろう。
「まてよ。じゃあ俺、隠れる必要なくねーか?」
しかし混浴だと気がついた俺はふと冷静に考えた。混浴だったらわざわざ隠れる必要はないのではないかと。別に悪いことをしてるわけではないしな。混浴なのだから仕方ない。
「いや、そもそもそんな理屈があいつらに通用するか?」
だが、彼女達にそんな理屈が通用するとは思えない。特に有紗とイーリスちゃんは。
「…マズイなあ」
俺は再び冷静に考えてみると、この状況で見つかってしまったら、痛い目にあうどころの話ではなくなるだろう。下手したら死ぬかもしれん。
となると、どうしようかと思考を巡らせた。このまま岩陰に身を潜めてやり過ごすべきか、それとも隙を見て出て行くか。
「うーむ、後者の方は難しそうだな。ここから入り口まで見つからずに行くなんて、相当むずいぞ」
俺は岩陰からちょっとだけ顔を出し入り口の方を見た。ここからだと100メートルぐらい離れていた。その距離を見つからずに行くにはステルススキルがないとほぼ不可能だ。風呂から上がらないといけないしな。
「となると、前者でやり過ごすしかないか。まあこの距離なら近づかない限り、見つからないか」
後者の方を諦めた俺は前者の方でいくことにした。
俺は三度顔をちょっとだけ出して彼女達の様子を伺っていた。目のやり場にものすごく困ったが、彼女達の行動をしっかり見ておかなければならないからな。別に見たくて見てるわけじゃないからな。
「キキー」
「あっ、お猿さんだ。かわいい♡」
「本当ですね。どこから来たんでしょう」
「ひょっとしてこの猿、この島に住んでる野生の猿?」
「…猿なんて初めて見たわ」
そんな時だった。どこからか一匹の猿が梓達のところへ寄って来ていた。温泉といえば風呂に入る猿というイメージもあるが、本当に猿って温泉に入るんだな。
梓達はその猿を愛でるように可愛がっていた。猿は人懐っこいようで、梓達に頭を撫でられて嬉しそうな様子だった。くそ、あの猿が羨ましい。
「きゃっ!」
「ッ!?」
すると猿は突然、梓の身体に密着してきた。気のせいか、梓の未発達な胸を鷲掴みしているような気がする。
「もー、くすぐったいよー♡」
「ーーー!!」
梓は猿の毛並みでくすぐったいだけのようだが、その様子を見ていた俺は、だんだんあの猿に声にも出せない苛立ちを感じていた。
あの猿、絶対わざとやってる!
あの猿を見てみると、どこかエロい目で見ているような気がした。胸を鷲掴みしている時点でおかしいだろ。手が小さいから掴んでいるようには見えないのだろうが。
「キキー!」
「あら?」
「ッッ!?」
そして猿の次の行動は俺は確信した。あの猿、今度はみのりの身体に密着し出したのだ。
「キキッ!!」
「ふふっ、どうやらこのお猿さん、甘えんぼさんなんですね!」
「ーーー!!」
あの猿は無論、みのりの実りに実った豊満な胸を鷲掴みしていた。それだけでなく、あの猿はみのりの胸に顔を埋めていた。みのりも梓と同じような反応をしていたが、あの猿、完全にエロ目的だ。
「…くそ…」
なぜエテ公なんかにこの人間様が嫉妬しているのだろうか? なぜ人間様である俺が肩身狭い思いをしなければいけないのだろうか? 俺は知らず知らずのうちにあの猿に嫉妬と嫌悪を抱いていた。俺だって女の子の胸を鷲掴みにしたいのに。
「キキー!」
そして猿は次の目標を有紗に決めたらしく、有紗の方に向かって行った。流石に有紗も猿相手にはなんにもしないだろうな。
「…キキ?」
「?」
そう思っていた矢先だった。上機嫌だった猿の表情が有紗の顔を見て怯え始めたのだ。
「この猿、わざとやってるわね」
「キッ!?」
小声で何を言ってるのか分からないが、あの猿の怯えようを見てまさかと思った。
「キキッ!!」
しかし猿は機転を利かしたのか、有紗から逃げるようにイーリスちゃんの方へと向かって行った。
「……」
「キッ!?」
だが、それが間違いだった。イーリスちゃんの顔を見ても怯え出す猿。どうやら頼る相手を間違えたようだな。
「あ、有紗ちゃん、イーリスちゃん! どうしたの?」
その2人の様子を見てまだその意味を理解していない梓は猿を守ろうと2人をなだめようとしていた。
「この猿、初めから私達の身体目当てで近寄って来てるのよ」
「ええっ?!」
しかしイーリスちゃんが梓を一言で説き伏せた。梓はイーリスちゃんの一言を聞いて驚愕していた。みのりも気づいていなかったらしく、口を開けて固まっていた。
「猿とはいえ、許さないわよ!」
「キッ!?」
そして有紗は猿を睨みつけ近くにあった桶を手にした。あの猿、殺されるぞ!
「キーー!!」
有紗から殺意を感じた猿は慌てふためきながら逃げていく。アレ? あの猿、こっちに向かって来てない?
「逃がさないわよ!」
「キーーーーー!!」
「ちょっ、嘘でしょー!?」
猿はなぜかこっちに向かって逃げてくる。なんでこっちに逃げてくんだよ!
有紗は猿めがけて桶をおおきく振りかぶっていた。まさか投げる気か?
「こんのおお」
「キーーーーー!!」
「お、おい猿! こっち来ん…」
「エロ猿がーー!!」
「ッ!?」
おおきく振りかぶった桶を有紗は猿に向かって投げてきた。
しかし桶は猿の頭上を掠め、俺が隠れている岩に向かって飛んできていた。
ドゴォッ
「なっ!!」
すると桶は岩を砕いてきた。しかも勢いは止まらずそのまま俺に向かってきていた。嘘でしょ。
「んげふっ!?」
岩を砕いた桶は俺の顔面に命中し破裂した。
「有紗ちゃん?! やり過ぎだよ!?」
「アレ? 今後ろにだれかいませんでしたか?」
「変な声も聞こえたわね」
意識が朦朧とする中、梓達のざわつく声が薄っすらと聞こえてきた。マズイ。早く他の場所に隠れない…
そこで意識がぱったりと消えていくのだった。
「まてよ。じゃあ俺、隠れる必要なくねーか?」
しかし混浴だと気がついた俺はふと冷静に考えた。混浴だったらわざわざ隠れる必要はないのではないかと。別に悪いことをしてるわけではないしな。混浴なのだから仕方ない。
「いや、そもそもそんな理屈があいつらに通用するか?」
だが、彼女達にそんな理屈が通用するとは思えない。特に有紗とイーリスちゃんは。
「…マズイなあ」
俺は再び冷静に考えてみると、この状況で見つかってしまったら、痛い目にあうどころの話ではなくなるだろう。下手したら死ぬかもしれん。
となると、どうしようかと思考を巡らせた。このまま岩陰に身を潜めてやり過ごすべきか、それとも隙を見て出て行くか。
「うーむ、後者の方は難しそうだな。ここから入り口まで見つからずに行くなんて、相当むずいぞ」
俺は岩陰からちょっとだけ顔を出し入り口の方を見た。ここからだと100メートルぐらい離れていた。その距離を見つからずに行くにはステルススキルがないとほぼ不可能だ。風呂から上がらないといけないしな。
「となると、前者でやり過ごすしかないか。まあこの距離なら近づかない限り、見つからないか」
後者の方を諦めた俺は前者の方でいくことにした。
俺は三度顔をちょっとだけ出して彼女達の様子を伺っていた。目のやり場にものすごく困ったが、彼女達の行動をしっかり見ておかなければならないからな。別に見たくて見てるわけじゃないからな。
「キキー」
「あっ、お猿さんだ。かわいい♡」
「本当ですね。どこから来たんでしょう」
「ひょっとしてこの猿、この島に住んでる野生の猿?」
「…猿なんて初めて見たわ」
そんな時だった。どこからか一匹の猿が梓達のところへ寄って来ていた。温泉といえば風呂に入る猿というイメージもあるが、本当に猿って温泉に入るんだな。
梓達はその猿を愛でるように可愛がっていた。猿は人懐っこいようで、梓達に頭を撫でられて嬉しそうな様子だった。くそ、あの猿が羨ましい。
「きゃっ!」
「ッ!?」
すると猿は突然、梓の身体に密着してきた。気のせいか、梓の未発達な胸を鷲掴みしているような気がする。
「もー、くすぐったいよー♡」
「ーーー!!」
梓は猿の毛並みでくすぐったいだけのようだが、その様子を見ていた俺は、だんだんあの猿に声にも出せない苛立ちを感じていた。
あの猿、絶対わざとやってる!
あの猿を見てみると、どこかエロい目で見ているような気がした。胸を鷲掴みしている時点でおかしいだろ。手が小さいから掴んでいるようには見えないのだろうが。
「キキー!」
「あら?」
「ッッ!?」
そして猿の次の行動は俺は確信した。あの猿、今度はみのりの身体に密着し出したのだ。
「キキッ!!」
「ふふっ、どうやらこのお猿さん、甘えんぼさんなんですね!」
「ーーー!!」
あの猿は無論、みのりの実りに実った豊満な胸を鷲掴みしていた。それだけでなく、あの猿はみのりの胸に顔を埋めていた。みのりも梓と同じような反応をしていたが、あの猿、完全にエロ目的だ。
「…くそ…」
なぜエテ公なんかにこの人間様が嫉妬しているのだろうか? なぜ人間様である俺が肩身狭い思いをしなければいけないのだろうか? 俺は知らず知らずのうちにあの猿に嫉妬と嫌悪を抱いていた。俺だって女の子の胸を鷲掴みにしたいのに。
「キキー!」
そして猿は次の目標を有紗に決めたらしく、有紗の方に向かって行った。流石に有紗も猿相手にはなんにもしないだろうな。
「…キキ?」
「?」
そう思っていた矢先だった。上機嫌だった猿の表情が有紗の顔を見て怯え始めたのだ。
「この猿、わざとやってるわね」
「キッ!?」
小声で何を言ってるのか分からないが、あの猿の怯えようを見てまさかと思った。
「キキッ!!」
しかし猿は機転を利かしたのか、有紗から逃げるようにイーリスちゃんの方へと向かって行った。
「……」
「キッ!?」
だが、それが間違いだった。イーリスちゃんの顔を見ても怯え出す猿。どうやら頼る相手を間違えたようだな。
「あ、有紗ちゃん、イーリスちゃん! どうしたの?」
その2人の様子を見てまだその意味を理解していない梓は猿を守ろうと2人をなだめようとしていた。
「この猿、初めから私達の身体目当てで近寄って来てるのよ」
「ええっ?!」
しかしイーリスちゃんが梓を一言で説き伏せた。梓はイーリスちゃんの一言を聞いて驚愕していた。みのりも気づいていなかったらしく、口を開けて固まっていた。
「猿とはいえ、許さないわよ!」
「キッ!?」
そして有紗は猿を睨みつけ近くにあった桶を手にした。あの猿、殺されるぞ!
「キーー!!」
有紗から殺意を感じた猿は慌てふためきながら逃げていく。アレ? あの猿、こっちに向かって来てない?
「逃がさないわよ!」
「キーーーーー!!」
「ちょっ、嘘でしょー!?」
猿はなぜかこっちに向かって逃げてくる。なんでこっちに逃げてくんだよ!
有紗は猿めがけて桶をおおきく振りかぶっていた。まさか投げる気か?
「こんのおお」
「キーーーーー!!」
「お、おい猿! こっち来ん…」
「エロ猿がーー!!」
「ッ!?」
おおきく振りかぶった桶を有紗は猿に向かって投げてきた。
しかし桶は猿の頭上を掠め、俺が隠れている岩に向かって飛んできていた。
ドゴォッ
「なっ!!」
すると桶は岩を砕いてきた。しかも勢いは止まらずそのまま俺に向かってきていた。嘘でしょ。
「んげふっ!?」
岩を砕いた桶は俺の顔面に命中し破裂した。
「有紗ちゃん?! やり過ぎだよ!?」
「アレ? 今後ろにだれかいませんでしたか?」
「変な声も聞こえたわね」
意識が朦朧とする中、梓達のざわつく声が薄っすらと聞こえてきた。マズイ。早く他の場所に隠れない…
そこで意識がぱったりと消えていくのだった。
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