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第七章 魔法王国の動乱
迎賓館にて
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道の先、すごい行列ができている。
王族軍が駐留しているために人と物の動きが活発すぎるからだろうか。
俺とエヴァは列に並ぶ。
順番が来た。門のなかで兵士たちに簡易な荷物のチェックを受け、都市のなかへ入ることを許された。
こうして3日ほど歩いて俺たちはようやくドレディヌスに到着した。
「町長の迎賓館に軍の本部が置かれてるようだわ」
「迎賓館ですか。さっそく向かいましょう」
ドレディヌスは人であふれかえっていた。
昼前というのもあるだろうが、どこの通りも騎士に、冒険者に、簡易な鎧を着込んだ民兵崩れだったりでごったがえしている。
商品たちは商売根性たくましく、人の需要に敏感に威勢よく客引きをする。
戦場は悲惨だったが、それを打ち決してくれるような気がするほど、ここは活気に満ち満ちている。
崩壊のあとには再生がやってくる。こういうことを言うのかもしれない。
迎賓館にたどり着き、テンタクルズからもらった召喚状を騎士へ見せる。
「あなたがアーカム・アルドレア様ですか……っ」
「急ぎ陛下への謁見を願いたく思います」
「は、はは! どうぞこちらへ。長旅でお疲れでしょう、どうぞおくつろぎになって、しばしお待ちください!」
騎士は慌てて仲間を呼び、召喚状を見せて「あのアーカム・アルドレアだ!」とどこか興奮した様子で話した。
それを聞きつけたまわりの騎士やら兵士やらも様子をうかがうように慌ただしくなっていく。
最初に召喚状を渡した騎士に案内され、俺とエヴァは客間に通された。
辺境の地、さして大きくない町の迎賓館であるが、内装は上品に質素にまとまっており、この街を治める騎士貴族殿のセンスの良さが現れていた。
ほどなくして客間の扉が勢いよく開け放たれる。
見やれば、見覚えのある方がいらっしゃる。
太陽のごとく輝く黄金の髪に、透き通った碧眼。
飾り気の少ないドレスは、彼女の美しさを引き立たせるために主張しすぎない。
エフィーリアはだんだんだんっと駆けこんでくると、腕をおおきく開いて抱擁をしてきた。
王女様の慎ましいものの感触に、不敬さを自覚しながら、されるがままにする。
「王女殿下、ご無事なようでなによりです」
「アーカム、よく無事で戻りましたわ!」
「はう……うちの子が王女殿下まで落としているなんて……っ」
「エヴァリーン、あなたも無事でしたのね! 父から活躍を聞いていますわ!」
エフィーリアは腕の力を緩めぬまま。
そうしている間にも、客間の扉から高貴な身分の方々がぞくぞくとやってきている。皆さん、そんなまじまじとこっちを見ないでください。
あっ、ヘンリックだ。
顔が疲れているが元気そうだ。
絶滅指導者との戦いの混乱以来、見失っていたので無事を確認出来てホッとする。ヘンリックは俺と目が合うなり、目線をすこし下げ、恭しく目礼をしてくれる。俺もそれにぺこりと応じる。
「君がアーカム・アルドレアか。この時をどれほど待ったか、のう、ハイランドよ」
「あの赤子がこれほどに立派に……なんということだ……」
まずい、高貴そうな2人が勝手に話をはじめた。
エフィーリアそろそろ解放を!
「お、王女殿下、そろそろ離していただいても?」
「だめですわ。アーカムは王都と私やヘンリックの命と救ってくださったのに、勝手に戦場へいって、礼のひとつもさせずに消えたのです。責任はあると思いますわ」
俺としては美しい姫様に抱擁されてまるで苦しくないんだが、母や高貴な方々──たぶん王が混じってる──のまえで、慎ましいお胸の様相を楽しめるほど豪傑ではないのだ。
「ふふ、ちょっといたずらしただけですわ」
「御冗談が過ぎます」
エフィーリアはそっと俺を解放してくれる。
皆の視線がじーっと集まる。
えーなにこの空気、これ俺が処理するの?
エフィーリアを見やればちょっと意地悪な顔をしてスンっと澄ましている。
我関せずと言わんばかり。
「こほん。えー……はい、僕がアーカム・アルドレアです。召喚に応じ、参上いたしました」
俺は視線を数人の高貴そうな者たちのあいだで行き来させる。
整えられた顎鬚を携えた人物が愉快そうに笑みをうかべ、一歩前へ出る。
「すまない、大魔術師殿、私がマーヴィンに命じ、貴公を召喚したウォルゲル・トライア・ジョブレスだ。ローレシア魔法王国現国王である。こんな事態た、気負いせず、さあ腰を下ろしてくれたまへ」
王は言って椅子を手で指し示した。
王族軍が駐留しているために人と物の動きが活発すぎるからだろうか。
俺とエヴァは列に並ぶ。
順番が来た。門のなかで兵士たちに簡易な荷物のチェックを受け、都市のなかへ入ることを許された。
こうして3日ほど歩いて俺たちはようやくドレディヌスに到着した。
「町長の迎賓館に軍の本部が置かれてるようだわ」
「迎賓館ですか。さっそく向かいましょう」
ドレディヌスは人であふれかえっていた。
昼前というのもあるだろうが、どこの通りも騎士に、冒険者に、簡易な鎧を着込んだ民兵崩れだったりでごったがえしている。
商品たちは商売根性たくましく、人の需要に敏感に威勢よく客引きをする。
戦場は悲惨だったが、それを打ち決してくれるような気がするほど、ここは活気に満ち満ちている。
崩壊のあとには再生がやってくる。こういうことを言うのかもしれない。
迎賓館にたどり着き、テンタクルズからもらった召喚状を騎士へ見せる。
「あなたがアーカム・アルドレア様ですか……っ」
「急ぎ陛下への謁見を願いたく思います」
「は、はは! どうぞこちらへ。長旅でお疲れでしょう、どうぞおくつろぎになって、しばしお待ちください!」
騎士は慌てて仲間を呼び、召喚状を見せて「あのアーカム・アルドレアだ!」とどこか興奮した様子で話した。
それを聞きつけたまわりの騎士やら兵士やらも様子をうかがうように慌ただしくなっていく。
最初に召喚状を渡した騎士に案内され、俺とエヴァは客間に通された。
辺境の地、さして大きくない町の迎賓館であるが、内装は上品に質素にまとまっており、この街を治める騎士貴族殿のセンスの良さが現れていた。
ほどなくして客間の扉が勢いよく開け放たれる。
見やれば、見覚えのある方がいらっしゃる。
太陽のごとく輝く黄金の髪に、透き通った碧眼。
飾り気の少ないドレスは、彼女の美しさを引き立たせるために主張しすぎない。
エフィーリアはだんだんだんっと駆けこんでくると、腕をおおきく開いて抱擁をしてきた。
王女様の慎ましいものの感触に、不敬さを自覚しながら、されるがままにする。
「王女殿下、ご無事なようでなによりです」
「アーカム、よく無事で戻りましたわ!」
「はう……うちの子が王女殿下まで落としているなんて……っ」
「エヴァリーン、あなたも無事でしたのね! 父から活躍を聞いていますわ!」
エフィーリアは腕の力を緩めぬまま。
そうしている間にも、客間の扉から高貴な身分の方々がぞくぞくとやってきている。皆さん、そんなまじまじとこっちを見ないでください。
あっ、ヘンリックだ。
顔が疲れているが元気そうだ。
絶滅指導者との戦いの混乱以来、見失っていたので無事を確認出来てホッとする。ヘンリックは俺と目が合うなり、目線をすこし下げ、恭しく目礼をしてくれる。俺もそれにぺこりと応じる。
「君がアーカム・アルドレアか。この時をどれほど待ったか、のう、ハイランドよ」
「あの赤子がこれほどに立派に……なんということだ……」
まずい、高貴そうな2人が勝手に話をはじめた。
エフィーリアそろそろ解放を!
「お、王女殿下、そろそろ離していただいても?」
「だめですわ。アーカムは王都と私やヘンリックの命と救ってくださったのに、勝手に戦場へいって、礼のひとつもさせずに消えたのです。責任はあると思いますわ」
俺としては美しい姫様に抱擁されてまるで苦しくないんだが、母や高貴な方々──たぶん王が混じってる──のまえで、慎ましいお胸の様相を楽しめるほど豪傑ではないのだ。
「ふふ、ちょっといたずらしただけですわ」
「御冗談が過ぎます」
エフィーリアはそっと俺を解放してくれる。
皆の視線がじーっと集まる。
えーなにこの空気、これ俺が処理するの?
エフィーリアを見やればちょっと意地悪な顔をしてスンっと澄ましている。
我関せずと言わんばかり。
「こほん。えー……はい、僕がアーカム・アルドレアです。召喚に応じ、参上いたしました」
俺は視線を数人の高貴そうな者たちのあいだで行き来させる。
整えられた顎鬚を携えた人物が愉快そうに笑みをうかべ、一歩前へ出る。
「すまない、大魔術師殿、私がマーヴィンに命じ、貴公を召喚したウォルゲル・トライア・ジョブレスだ。ローレシア魔法王国現国王である。こんな事態た、気負いせず、さあ腰を下ろしてくれたまへ」
王は言って椅子を手で指し示した。
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