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第82話 やられ損の泣き寝入り
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警察が帰ったあと、佐野とユキは養生シートでシャッターを覆い、ガムテープで固定した。周囲の目もあるし、何よりこの不愉快な風景を視界に入れたくないからだ。
元旦ゆえにリース会社も休み。落書きの除去か倉庫自体の交換かは、仕事始めの日までその判断を待つしかない。
「突風や雪ですぐに外れてしまうけど、いたしかたない」
吹雪の中、ユキが憮然として言う。
「ええ。その都度、貼り直しましょう」
佐野も正月早々の警察沙汰に渋面でうなずいた。
作業を終えた二人は現場事務所へ入った。各自の席で熱いインスタントコーヒーを手に一息つく。 まだ仕事を開始する心境とテンションではなかった。今の状態なら確実にミスを連発してしまう。
昨夜といい、今朝といい、星崎に振り回されっぱなしだ――
佐野は、窓から見える青い養生シートで覆われた資材倉庫のシャッターに強い不快感をつのらせる。
ユキは警察へ、あえて何も言わなかった。誰かがいたずらで書いたということにした。佐野も余計な口を挟まなかった。
この件に星崎が関係しているのは間違いない。しかし防犯カメラには写っていないし、下手に星崎の名前を出せば色々と厄介な事態になる。佐野とユキ、双方の会社を巻き込んでの問題となってしまうからだ。
加えて倉庫はリース品。補修費等の折衝はユキの会社がしなければならない。
結局は、やられ損の泣き寝入り。やった者勝ちかよ……!
佐野はユキへの申し訳なさと星崎への怒りで、空になった紙コップをグシャリと握りつぶした。すると、隣席のユキが落ち着いた声で言う。
「気にするな。元はといえば俺の蒔いた種なんだから」
元旦ゆえにリース会社も休み。落書きの除去か倉庫自体の交換かは、仕事始めの日までその判断を待つしかない。
「突風や雪ですぐに外れてしまうけど、いたしかたない」
吹雪の中、ユキが憮然として言う。
「ええ。その都度、貼り直しましょう」
佐野も正月早々の警察沙汰に渋面でうなずいた。
作業を終えた二人は現場事務所へ入った。各自の席で熱いインスタントコーヒーを手に一息つく。 まだ仕事を開始する心境とテンションではなかった。今の状態なら確実にミスを連発してしまう。
昨夜といい、今朝といい、星崎に振り回されっぱなしだ――
佐野は、窓から見える青い養生シートで覆われた資材倉庫のシャッターに強い不快感をつのらせる。
ユキは警察へ、あえて何も言わなかった。誰かがいたずらで書いたということにした。佐野も余計な口を挟まなかった。
この件に星崎が関係しているのは間違いない。しかし防犯カメラには写っていないし、下手に星崎の名前を出せば色々と厄介な事態になる。佐野とユキ、双方の会社を巻き込んでの問題となってしまうからだ。
加えて倉庫はリース品。補修費等の折衝はユキの会社がしなければならない。
結局は、やられ損の泣き寝入り。やった者勝ちかよ……!
佐野はユキへの申し訳なさと星崎への怒りで、空になった紙コップをグシャリと握りつぶした。すると、隣席のユキが落ち着いた声で言う。
「気にするな。元はといえば俺の蒔いた種なんだから」
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