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第165話 徹夜明けの頭で色々と考える

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 ユキから全く電話が来ないまま、五日の六時となった。言うに及ばず徹夜である。
 全員、無精ひげ。目の下にクマ。誰もが疲れ果てているので必要最小限の会話しかしない。部屋の隅にはドリンク剤の空き瓶が並び、隣にはコンビニの袋に入った大量の菓子とパン。冬なので日の出は遅く、まだ外は薄暗い。
 施工は三十分ほど前に全て終了し、今は資材や工具のあとかたづけをしている最中だ。 佐野は廃材を分別する作業をしている。眠気とあくびをかみ殺し、黙々と手を動かす。
 実にハードな現場だった。そして、とても勉強になった――佐野はしみじみ思う。
 今この時も現場責任者や技術者達は相変わらず自分に対して素っ気ないが、そんな中でも施工のコツや自分の知らない技法を懇切丁寧に教えてくれた。
 これを悪く解釈すれば、少しでも作業を早く終わらせるために仕方なく教えたのかもしれない。
 けれど今回ここで習得した技術は自分の財産となり、また、よき思い出となった。
 なぜなら自分は間違いなく会社を追い出されるからだ。しかも、早いうちに。
 もしそうなればこのご時世、今の勤務先よりもレベルが上の建設会社へ再就職というのは非常に難しい。鈴木のように明るく快活でコミュニケーション能力に長けていれば話は違うだろうが、残念ながら自分にはそういう要素はない。
 たとえ運が良くても、同じくらいのレベルの会社の日雇いかアルバイトだろう。でも一番確率が高いのは無職だ。雇用保険で細々と食いつなぐ日々を覚悟しておかなければならない。
 だからもう橋本建設のような大手ゼネコンの現場に技術者として立つこともないだろう。そうなればユキと音信不通になるのも時間の問題。事実、今も完全に放置されている。つまり、これがユキと自分との関係の「答え」なのかもしれない。
 別れの時が、リアルに近づいている――
 佐野は、睡魔と疲労でうまく回らぬ頭で、ぼんやりとそう思った。
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