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第181話 厚顔無恥の新任取締役
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「そこで金髪の若造の話に戻るんだが」
総務部長が苦々しげに言う。今朝出社したら、自分の席にチンピラ風情の若い男が座っていたという話の続きである。
「その男に『ここは私の席だ』と言ったら、鼻でせせら笑いながら『ここはオレの席だ。てめえはどこかに勝手に座れ』と言う。さすがに私も頭に来て、どういう意味だと問い返したら、『今日からオレは姉ちゃんの顔ききで取締役総務部長になったんだ。なので、てめえは今日からヒラ社員。オレのパシリだ』と答える。で、その姉ちゃんというのが――」
間違いない。その金髪の若造、レイナの弟だ。佐野は確信する。
「もしや、三日前に入社した女性、ですか?」
「そうだ」
「あー……」
佐野はスマホを耳に当てながらガックリと肩を落とす。そして自分の推測が当たっていたことに深く絶望する。
「もちろん、その男にも履歴書はない。でも本人は日本の超有名大学を出たあと、海外の大学へ入学し、トップの成績で卒業して、五年ほどそのまま現地で働いていたと言い張ってるよ」
「……それはすごいですね。学生時代に飛び級でもしたんですかね」
どう計算しても年齢と経歴が合わない。何という面の皮の厚さと、ふてぶてしさ。さすがレイナの弟だ。通話先の総務部長のあきれ顔が目に浮かぶ。「それで、もうこの時点で私は会社を辞める決心がついていたから社長室へ行った。どうせ辞めるんだから、ていっぱい文句をたれてやろうと思ってな。そしたら先客がいてさ」
「誰ですか」
「経理部長。頭から湯気を上げて社長を睨みつけてたよ」
「うーわー……」
今度は何だ。またしても、嫌な予感。
総務部長が苦々しげに言う。今朝出社したら、自分の席にチンピラ風情の若い男が座っていたという話の続きである。
「その男に『ここは私の席だ』と言ったら、鼻でせせら笑いながら『ここはオレの席だ。てめえはどこかに勝手に座れ』と言う。さすがに私も頭に来て、どういう意味だと問い返したら、『今日からオレは姉ちゃんの顔ききで取締役総務部長になったんだ。なので、てめえは今日からヒラ社員。オレのパシリだ』と答える。で、その姉ちゃんというのが――」
間違いない。その金髪の若造、レイナの弟だ。佐野は確信する。
「もしや、三日前に入社した女性、ですか?」
「そうだ」
「あー……」
佐野はスマホを耳に当てながらガックリと肩を落とす。そして自分の推測が当たっていたことに深く絶望する。
「もちろん、その男にも履歴書はない。でも本人は日本の超有名大学を出たあと、海外の大学へ入学し、トップの成績で卒業して、五年ほどそのまま現地で働いていたと言い張ってるよ」
「……それはすごいですね。学生時代に飛び級でもしたんですかね」
どう計算しても年齢と経歴が合わない。何という面の皮の厚さと、ふてぶてしさ。さすがレイナの弟だ。通話先の総務部長のあきれ顔が目に浮かぶ。「それで、もうこの時点で私は会社を辞める決心がついていたから社長室へ行った。どうせ辞めるんだから、ていっぱい文句をたれてやろうと思ってな。そしたら先客がいてさ」
「誰ですか」
「経理部長。頭から湯気を上げて社長を睨みつけてたよ」
「うーわー……」
今度は何だ。またしても、嫌な予感。
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