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第241話 なんともひどい納得の仕方
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佐野はユキの言葉に胸を熱くする。
たとえ一刻も早くコンビニへ弁当を買いに行きたいという動機から出た言葉であっても、これはかなりの説得力がある。
そのうえ、もともと低かった自己肯定感も格段にアップする。このような角度と視点で自分自身を見たことなど、一度もなかったからだ。
「そうしたら、みなさんはどのように」
反対勢力への手応えが気になる佐野は身を乗り出して聞く。
「ようやくそこで全員が納得した。田上がそこまで言うのなら、間違いはないだろうと」
「説得、ありがとうございます!」
佐野は深々と頭を下げる。食い意地から発した気迫と熱弁とはいえ、ここで一気に不利な状況を『ひっくり返した』ユキの力量に心の底から脱帽する。
「うむ。で――反対していた三部署と取締役達は、ケイの採用を円満に合意したあと、口をそろえてこう言った」
「何と」
「確かに田上の言う通り、冷静に考えてみれば、佐野という技術者は、古山建設が地に落ちる前であれば、『閉店前のお買い得商品』であり、地に落ちたあとでうちの会社が採用すれば、元勤務先の汚名を背負っているので、対外的に『どんどん劣化する』という事態になる、と」
「……」
なんともひどい納得の仕方である。でも事実だから否定のしようがない。
たとえ一刻も早くコンビニへ弁当を買いに行きたいという動機から出た言葉であっても、これはかなりの説得力がある。
そのうえ、もともと低かった自己肯定感も格段にアップする。このような角度と視点で自分自身を見たことなど、一度もなかったからだ。
「そうしたら、みなさんはどのように」
反対勢力への手応えが気になる佐野は身を乗り出して聞く。
「ようやくそこで全員が納得した。田上がそこまで言うのなら、間違いはないだろうと」
「説得、ありがとうございます!」
佐野は深々と頭を下げる。食い意地から発した気迫と熱弁とはいえ、ここで一気に不利な状況を『ひっくり返した』ユキの力量に心の底から脱帽する。
「うむ。で――反対していた三部署と取締役達は、ケイの採用を円満に合意したあと、口をそろえてこう言った」
「何と」
「確かに田上の言う通り、冷静に考えてみれば、佐野という技術者は、古山建設が地に落ちる前であれば、『閉店前のお買い得商品』であり、地に落ちたあとでうちの会社が採用すれば、元勤務先の汚名を背負っているので、対外的に『どんどん劣化する』という事態になる、と」
「……」
なんともひどい納得の仕方である。でも事実だから否定のしようがない。
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