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第264話 せっかち大魔王
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「それは重々分っているが、待ってられん」
ユキはスマホを耳に当てながら佐野に言う。どこかへ電話をしているのだ。
「あの会社の事務処理をくそ真面目に待っていたら、馬鹿を見るだけだ」
「ですが――」
佐野がそう言いかけた時、通話が始まった。
「田上です。お疲れさまです。社長は今、いらっしゃいますか」
社長と聞いて佐野は緊張する。
一体、何を話すのだろうか。取り次ぐ時間が特段長く感じる。
「もしもし――田上です。お疲れさまです。社長、今お時間よろしいですか」
ユキがそこで、チラリと佐野を見る。そして数秒後に口を開く。社長が承諾したらしい。
「佐野さんの件ですが、明日から正式にうちの社員として、私の現場に来てもらおうと考えているんですが、その許可をいただだきたくお電話いたしました」
「……!」
佐野は声を出さずに仰天する。次いで慌てて両手をクロスさせ、『それはまずい』のジェスチャーをユキへ見せる。
しかしユキはそれを一瞥しただけで何のリアクションもなく通話を続ける。
「古山建設は相変わらず佐野さんの退職関係の処理をわざと放置しているので、未だあの会社に片足を突っ込んだままの状態ですが、もうさっさと入社させたいんです」
この、せっかち大魔王!
佐野は両手をクロスさせたまま、ユキの暴挙になす術もない。
ユキはスマホを耳に当てながら佐野に言う。どこかへ電話をしているのだ。
「あの会社の事務処理をくそ真面目に待っていたら、馬鹿を見るだけだ」
「ですが――」
佐野がそう言いかけた時、通話が始まった。
「田上です。お疲れさまです。社長は今、いらっしゃいますか」
社長と聞いて佐野は緊張する。
一体、何を話すのだろうか。取り次ぐ時間が特段長く感じる。
「もしもし――田上です。お疲れさまです。社長、今お時間よろしいですか」
ユキがそこで、チラリと佐野を見る。そして数秒後に口を開く。社長が承諾したらしい。
「佐野さんの件ですが、明日から正式にうちの社員として、私の現場に来てもらおうと考えているんですが、その許可をいただだきたくお電話いたしました」
「……!」
佐野は声を出さずに仰天する。次いで慌てて両手をクロスさせ、『それはまずい』のジェスチャーをユキへ見せる。
しかしユキはそれを一瞥しただけで何のリアクションもなく通話を続ける。
「古山建設は相変わらず佐野さんの退職関係の処理をわざと放置しているので、未だあの会社に片足を突っ込んだままの状態ですが、もうさっさと入社させたいんです」
この、せっかち大魔王!
佐野は両手をクロスさせたまま、ユキの暴挙になす術もない。
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