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魔術大会

第32話 大会5日目:個人戦準決勝③

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「«デトニール»」
「……!」

「なんと!ベルナール選手も魔法掌握ができたのか!?"大洪水"が見事にベルナール選手を避けて流れていく!」

「貴様……!」

見よう見まねでやった割には上出来じゃないか?よくよく考えれば、固定するのが精一杯とはいえ分子レベルで操れるのだから、魔力さえ足りれば軽く軌道を変えるくらいは造作もないのだ。

「固体化・アクアジャベリン」

「ベルナール選手の頭上に水の槍が出現した!」

私のアクアジャベリンはアクアランスに比べ小さく威力も低いが小回りが効くし、1度放ったらそれで終わりではなく存在し続ける。つまり本物の槍を空中で自由に動かしているような状態になる。

「………」

王子が無言のまま両手でしっかりと剣を構える。固体化した槍は〘水惑刀〙と同レベルの魔力濃度だ、«デトニール»は使えない。そのため下手に策を練るより接近戦に備えようといったところだろう。

私は槍を王子に向けて放つ。王子は剣で迎え撃つ。

ガッ!カッ!キィン!!

槍が王子の剣に弾かれてはまた攻撃するを繰り返す。さながら剣士と透明な槍術士の戦いである。

これで多少はダメージを与えたかったのだが、槍単体では王子に歯が立たない。なので私自身も〘水惑刀〙を持ち王子へと斬り掛かる。

ガッ!カキンッ!カッ!!

槍を操作する分集中力が分散し多少私の動きが鈍いとはいえ実質2対1の状態であるにも関わらず、王子に上手く捌かれてしまう。この間確実に体力が削られていく。剣術に限って言っても、アランと同等かそれに準ずる強さかもしれない。

「アクアランス」

「リアムール選手、先程とは違い小さな大量の魔法陣から水の槍を放出!」

巨大魔法陣の1箇所から出したときと違い、あらゆる方向から水の槍が飛んでくる。

「固体化・アクアウォール、«デトニール»」

まっすぐ飛んでくる槍を水の壁で、隙間を縫って飛んでくる槍を魔法掌握である程度退ける。

ドン!ドガッ!!ゴォォ!!

「っ………!!」

が、私の魔法掌握における操作能力が低いことを見越してか、変則的に飛ばしてくるため退けきれず何発もヒットする。魔法抵抗と属性耐性を加味してもかなりのダメージだ。なんという魔法の操作能力と魔力濃度の高さなのか。

バキッッッ!!

「カハッ!!」

よろけた私にすかさず王子が剣で腹の脇から思いっきり斬りあげる。"固体化"した水でガードしたので致命傷は避けたが、吐血はするし息も絶え絶えだ。なんともデジャヴを感じる状況である。

しかしベークマンのときはジークとアランがいたから良かったが、今は私1人。自分でどうにかするしかない。


正直最初は第2王子のことを "権力があるだけの悪ガキ" くらいにしか思っていなかった。だが戦ってみてどうだ、判断能力の高さだけでなく、想定外の状況にも動じない冷静さ、決して自分の能力を過信しない慎重さをも持ち合わせている。それらは基本的なことに思えるが中々持つことができないものだ。それに魔法操作能力や剣術の技量の高さも、才能だけでは説明がつかない。並大抵な努力ではここまで辿り着けないだろう。

元は生徒会役員になることを避けたくて勝負しようと約束をした訳だが、正直もうそんなことはどうでも良くなり始めている。ただ純粋にこいつと全力で戦いたいのだ。なんだか"拳で語り合う" という言葉の意味が少しわかった気がする。

「まだ立つか。だがそろそろ終わりにするぞ。」

ダッ!

王子が私に斬り掛かる。


操血そうけつ

水惑刀すいわくとう〙・«鈍刃どんじん»

バァァァン!!!

「クッ…!」
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