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愛の贈り物

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家に入ってダイニングのテーブルにプレゼントを置いたマリーはバラの花束を先に花瓶に入れようとキッチンへ向かった。真っ白な花瓶に真っ赤な花束。小説で読んだプレゼントそのもの。真っ赤なバラを腕に抱いて歩いてくるアーサーは小説に登場するどんな王子様よりずっと胸をドキドキさせてくれた。
そっと花瓶を抱きしめながら目を閉じるも視線を感じて目を開けると祖父母が顔を半分出してニヤつきながら覗いている。

「キャァァァアアアッ! な、なななななななんで見てるの!?」
「花瓶のしまい場所わからないんじゃないかと思って」
「花瓶への入れ方わからないんじゃないかと思って」

 嘘だ。花瓶は何度もしまっているし、花瓶に花を飾る方法を知らない者などいない。いても赤ん坊ぐらいだ。明らかに狙って覗きに来た二人に怒るマリーを見て二人は笑う。

「もうっ! どうしてジッとしてないの! おじいさまは足が悪いんだからジッとしてて! おばあさまもおじいさまに付き添ってて!」
「紅茶を淹れようと思ってね」
「私が淹れる!」
「いやいや、紅茶はカサンドラが淹れんとな」
「じゃあおじいさまは戻って!」
「はいはい」

 笑いながら戻っていくベンジャミンを恨めし気に見てはキッチンに入ってきたカサンドラにも同じ視線を向ける。少し膨らんだ頬をカサンドラが指先でつつくとプッと小さな音が鳴る。

「すごい花束ね。何本あるのかしら?」

 そう言われると気になるとマリーは一度バラを全て取り出して一本ずつ数えながら花瓶に挿していく。数え間違いがないようカサンドラは十本ごとに指を折って記録する。

「百……超えてる。百八本」
「あら……それはそれはロマンチックね」

 百本を数えても手元にはまだ残っていた。目視で確認して八本。なぜ百八本なのだろうと首を傾げるマリーと意味深に目を細めるカサンドラ。

「買い占めたのかしら?」
「どうかしらね?」

 大公なのだから一つの花屋のバラを買い占めるぐらいなんでもないはず。アーネット家だってそれぐらい苦なくできる。
 確か、門の入り口に花を売っている屋台があった。両手で抱えるほど大きなブリキのバケツに一杯のバラがあったのを覚えている。それを買い占めたのかもしれないと思い、残り八本も花瓶に戻して階段を上がり、上がった所にあるフラワースタンドに花瓶を乗せた。
 どんな想いで買ってくれたのだろう。

励ますため?
慰めるため?
惚れさせるため? 

 どれが理由でもいい。全て当てはまってしまったのだから。
 貴族令息が貴族令嬢に花を贈るのは珍しいことではなく、むしろ礼儀とも言われている。だから特別な意味なんてないのかもしれないとも思う。バラを渡すとき、特別な言葉は何もなかった。出かけないかと誘ったからそれに乗ってくれた相手へのお礼として渡した。相手の言葉から読み取ればそういうことになる。
 それでもマリーは嬉しかった。単純だと自嘲してしまうが、それでも胸に宿る彼への想いは本物だから理由なんて気にならない。

「おーい、そこでニヤついとらんとプレゼント見せてくれんか?」
「もうっ、おじいさま今日は意地悪だわ!」
「はっはっは! 若者をからかうことだけが年寄りの趣味でな」
「孫をからかうと天罰が下るのよ?」
「ほう、どんな天罰かな?」
「……神のみぞ知るのっ」
「そりゃ恐ろしい」

 言ったはいいが思いつかなかったマリーがまた拗ねたように頬を膨らませて階段を下りていく。プレゼントを見せないという簡単な天罰もあるのにそれを口にしないのがマリーだとベンジャミンは笑顔のままソファーへと戻る。
 目の前にある二つの箱はどちらもそれほど大きくはない。一つはハンカチが入っていそうな手のひら大の箱。もう一つは指輪のケースが入っていそうな小さめの箱。
 花束だけでも女はじゅうぶん喜ぶというのに、一人の女のためにアーサー・アーチボルトは二つも何を選んだのだろうかとベンジャミンもカサンドラも気になっていた。

「じゃあこっちから開けるね」

 手のひら大の箱のラッピングを解いて蓋を開けると

「あ……」

 中に入っていた物にマリーは声をこぼした。

「リボン?」
「まあ、素敵なリボンじゃない。キレイね」

 マリーが好きだと言ったホワイトパールのシルクシフォンのリボンが入っていた。ベンジャミンは不思議そうな顔をするが、リボンを作るのが好きなカサンドラは女として、作り手として嬉しそうに目を細める。
 それをそっと取り出して手に乗せるとシルクシフォンの柔らかな生地が想像通りの手触りで、マリーの表情を緩める。ゴールドのレースが少し派手だが、ホワイトパールとの相性がいいため一目見て気に入った。花と一緒に髪飾りにすれば夜会でも使えるかもしれないと思ったが、アーサーからもらった物を人に見せるのは少し勿体ないとも思ってしまう。

(欲張りかなぁ……)

 もしかしたら複数人の恋人にも買っているかもしれない。存在がいるかさえ確認はしていないが、あの慣れたようなキスは経験値の高さを表していると少し寂しくなった。

「マリーはリボン好きだからな」
「私のリボンはもう卒業かしらね」
「そんなことないわ! これからもおばあさまのリボンを使うもの! アーサー様にはちゃんとお伝えしたのよ! おばあさまのリボンがたくさんあるからって。でも、私が素敵だって言っちゃったから……気を遣って買ってくださったの。私が傷ついてると思ってらっしゃるから」

 婚約破棄に傷つかなかったわけではない。祖父母を傷つけてしまうとショックを受けたが『そんな男と結婚せずに済んでよかった』と言ってくれたから気にするのはやめた。だから励ましや慰めなど必要ない。それでもこうしてしてくれるのはアーサーが優しいからだとリボンをそっと撫でて呟くマリーを見て二人は口元に笑みを浮かべたまま緩く首を振る。

「求婚されたのを忘れたか?」
「そうなんだけど……」

 求婚だけではない。キスだってした。小説の中にはなかった大人のキス。だが、マリーはまだ聞いていない。四十二年間、嫁を迎えなかった男が結婚をしようと思ったのか。それも相手は特別美人でもないただの男爵令嬢。
 どこまでが自分だけに向けられている優しさなのかもわからないのは少し不安で、マリーはまだアーサー・アーチボルトがどういう人間のかをよく知らない。

「よし、じゃあ最後の箱を開けてくれ。指輪なんじゃないか?」
「ベンジャミン、余計なことは言わないの」
「ああっ、すまない」

 指輪じゃなかったらどうするんだと怒るカサンドラに慌てて口を押さえて謝るベンジャミンにマリーは首を振る。指輪なわけがない。貴族が指輪をプレゼントして女性一人に開けさせるわけがないのだ。バラを百八本もプレゼントするようなロマンチックな男なら余計に。
 リボンを解いて箱を開けると中に入っていたのはブローチ。

「可愛い」
「これは……」
「あらあら」

 鳩が勿忘草をくわえて飛んでいるブローチを見てマリーは嬉しそうに笑うが、ベンジャミンとカサンドラは違う反応を見せた。見覚えのあるような顔をするベンジャミンの隣でニッコリ笑うカサンドラはアーサーが贈ったプレゼント三点に共通するものを発見し『ふふふふっ』と声を漏らして笑うのを不思議そうにマリーが見た。

「どうしたの?」

 カサンドラがそんな風に笑うのは久しぶりに見た。数年前、カサンドラの誕生日にベンジャミンがサプライズを仕掛けて失敗したとき以来。
 プレゼントは特に変な物はなかった。百八本のバラの花束。リボン。ブローチ。一夜で贈りすぎとは思えど、変な物は何一つないのにカサンドラはまだおかしそうに渡っている。

「こいつは懐かしい」
「知ってるの?」

 ブローチが入っている箱を手に取ったベンジャミンが懐かしいと目を細める姿に問いかけるとカサンドラと一度顔を見合わせて頷いた。

「これは私らが若い頃……それこそ五十年ぐらい前に流行った物だよ」
「そんなに昔の物なの?」
「ああ。今じゃあまり見かけなくなったな。花や草木が主流になってしまって、動物がモチーフの物はすっかり人気がなくなったからなぁ」

 寂しさを感じさせる声色だが、その表情は反対に暖かなものだった。慈しみに溢れていて、その時代の良い思い出を思い出しているようで、マリーもつられて表情が緩む。

「アーサー様からの贈り物は素敵な物ばかりね」
「ええ、とても」
「意味がわかればもっと素敵に見えるわよ」
「意味って?」

 また『ふふふふっ』っと笑うカサンドラの焦らすような時間の使い方にベンジャミンが軽く肘でついて急かした。

「このリボンを贈ってくれたのはマリーが素敵だと言ったからだと言ったわね?」
「ええ」
「リボンを贈る意味を知ってる?」
「いいえ」

 リボンは女性が身につけるか、ラッピングにしか使われていない。所謂、飾りとして使われるだけの物に意味などあるのかと言いたげなマリーにカサンドラはリボンの箱にチラッと視線をやった。

「リボンは人と人の結びつきを、絆を強くすると言われてるの。片想いなら、あなたと深い結びつきが欲しい。恋人からなら、二人の関係性をより深めたいという意味を持ってるの」

 まだ恋人ではないアーサーがこの意味を知って贈ったのだとしたらそれは告白のようなもので、馬車の中で突然受けた求婚よりずっと胸をトキめかせるものだった。

「このブローチは私の母が父から受け取った物だったわ。受け取った母がとても嬉しそうな顔をしていたからよく覚えているの」
「ひいおじいさまは商人だったのよね?」
「そうよ。だからあまり家にいなくてね。地方に仕入れに行っていたときに母にこれを贈ったの。鳩をモチーフにした物は日々、心穏やかに過ごすためのお守りと言われてたから、母に『心配しなくていいよ』と伝えてるようだった。それとこの勿忘草……」
「忘れないでって意味よね?」
「それもあるけど、真実の愛という意味もあるのよ。これは〝あなたを愛している私のことを片時も忘れないでほしい〟って意味なの。心穏やかに過ごしながら愛する私の帰りを待っていてほしいという意味で贈ったと父は言ってたけど」
「ロマンチック……」

 曾祖父には幼い頃に何度か会ったことがある。曾祖母を見つめる瞳が優しくて、愛情深い人なのだという印象を子供ながらに受けたのを覚えている。
 勿忘草の意味を「私を忘れないで」という悲しい意味だとばかり思っていたマリーにとってカサンドラの話は目から鱗で、一気に勿忘草が好きになった。

(このブローチをデザインした人にもきっと愛する人がいたんだわ)

 離れていても私があなたを愛していること、忘れないでほしい。そんな想いから作られた物だとしたら、どんな豪華な指輪よりもずっと素敵に見えた。

「それをあなたが贈られたってこと、覚えてる?」
「忘れてるんじゃないか?」

 ワッハッハッ!と笑い声を上げるベンジャミン。二人の言葉にマリーはボッと顔に火がついたように赤くなる。
 素敵だと思っていた物語に自分が参加している。アーサーは普段はアルキュミアという自分の国にいて、この国にはいない人。いつ帰るのかはわからないが、帰ってしまえば遠距離になってしまう。だから曾祖父が贈ったような意味を持ってこれを選んだのだとしたら……

「死んじゃいそう……」

 アーサーに会ってから自分はおかしくなってしまった。今まで恋愛小説を読んでいてもこんなにトキめいたことなどなかったのに、今日は何度トキめいたかわからない。本当に心臓がどうにかなってしまうのではないかと思うほど、恥ずかしくて胸が震える。
 鳩はゴールド、鳩の目はアメジスト、勿忘草の花はアクアマリン、葉や茎はエメラルドでできていた。けして安い物ではない。お金に余裕があっても慰めや励ましでこれを贈るはずがない。
 真っ赤な顔を両手で覆って隠しながら言葉を漏らすマリーに二人は満面の笑みを浮かべる。

(だって、相手が意味を知ってたら勘違いするもの)

 なぜ求婚されたのかはわからない。馬車の中でマリーは返事をしなかったし、アーサーも返事を促しはしなかった。ただひたすら無言でアーネット邸まで向かい、そしてうやむやで今に至る。
 もしアーサーがネイトのような遊び人なら勘違いさせて自分を優位に立たせるためだと思うだろうが、アーサーはそういう男ではないはず。
 頭の片隅には噂の〝複数人の恋人〟が過るも首を振って払う。

「百八本のバラにも意味があるのよ」
「もう……これ以上、素敵な意味だったら本当に死んじゃう……」

 もういいと首を振るもカサンドラは許さない。ここまで意味が揃っているのだから百八本のバラも狙って贈ったのだと確信がある。
 意味を持って贈った物はその意味に気付かれなければただの物でしかない。意味を知ってもらってこそ、その物はそれ以上の価値を発揮するのだ。〝ただの物〟が〝意味を持って贈られた物〟に変わる。
 求婚されたマリーにはそれを聞く義務があるとカサンドラは二階のバラを指さした。

「百八本のバラを贈る意味は……」
「意味は……」

 手を少しズラして目を覗かせてゴクリと喉を鳴らすマリーはカサンドラの言葉を待った。

「僕と結婚してください」

 いろいろな感情が限界に達したマリーの目から大粒の涙が溢れだす。また顔を覆って身体を震わせながら声を漏らすのを堪えるマリーをカサンドラが抱きしめ、ベンジャミンも一緒になって抱きしめた。
 マリーは昨日、婚約破棄をされたばかり。その日に求婚され、翌日また花言葉ではあるがプロポーズを受けた。もしそれを今、マリーが受け止めて再婚約が果たされれば早いと批判する貴族がいるのは間違いない。子爵、伯爵、侯爵、公爵が孫を『公爵より上の人間に迫ったか』とか『婚約破棄されるように仕向けたんじゃないか?』とマリーを責めるだろう。
 貴族達の好物は良い噂ではなく悪い噂。『男爵令嬢ごときが大公と結婚するなどありえない』と思うはず。そして『婚約破棄されたばかりの傷物に大公様が求婚などありえない』とも言うだろう。その言葉は直接マリーの耳に入ることはなくとも、ベンジャミンの耳には間違いなく届く。真実を確かめようと直接聞いてくる愚か者達がベンジャミンより上の爵位を持つ者達なのだから。
 それでもベンジャミンはマリーが今日、婚約すると言っても早いなどと言うつもりはなかった。くだらない男のくだらない欲望を叶えなかった孫は偉いんだ。どこぞの娼婦とは違う。自分の孫は清らかで美しいままだと胸を張って言うつもりさえあった。

「私……応えてもいいの……?」
「お前の心に従いなさい」
「でも、昨日、婚約破棄されたばかりなのに……」
「周りの意見などどうでもいい。お前を批判する者などお前の人生には必要ないだろう? お前の人生に必要な者はお前の背を押し、お前の間違いを正し、お前を守ってくれる者だ。むやみやたらに批判するようなバカな人間の意見など聞く価値もない」

 今までそうしてくれたのは祖父母だった。間違っていることは間違っていると言い、新しいことへの挑戦に怯えるマリーの背を押し、どんなときも守ってくれた愛する人達。
 この二人こそマリーの人生の全てだった。

「お前は私らにはもったいないほど素晴らしい子だ。優しくて、清らかで、強い子だ。だからこそ私らのために犠牲になろうとしてしまった。もういいんだよ。そんなこと、考える必要なんてないんだ。お前はお前の幸せを叶えなさい。それが私らの願いなのだから。ウエディングドレス姿を見ることこそが願いなんじゃないよ」

 ずっと覚悟はあった。両親がいないことを寂しく思う暇もないほど、抱えきれないほどの愛情で育ててくれた二人にできる恩返しはそれしかないから、そうしようと思った。それが婚約破棄という形で破られたことで二人に返せる恩がなくなってしまったとき、アーサーが救世主の現れた。
 ネイト・アーチボルト公子の伯父であるアーサー・アーチボルト大公。そんな男が自分のような娘に求婚するわけがない。あれはキスしようとしたことへの咄嗟の言い訳として使ったもの。そう思うことで本気にしないようにしていたのに、こんな素敵な物をもらって言い訳に使ったものだと言えるはずがない。

「私、彼と結婚したい。だから、お手紙を書くわ。結婚しますって」

 涙はまだ頬を伝っていて止まっていないが、マリーは満面の笑顔で二人に伝えた。頷く二人の目にも涙が滲んでいたが、溢すのはマリーに任せて二人は笑顔を見せた。
 プレゼントの蓋を閉じて抱え、小走りで二階へ上がっていく孫を見送ったベンジャミンはカサンドラの肩に頭をもたれかからせる。

「結婚します、か……」
「あら、一ヵ月後には挙式の予定だったじゃない」
「そうだが、あやつは気に入らんかった」
「彼を気に入る者などいませんよ」
「私はずっと思っとったんだ。どうせアーチボルト家と家族になるならアーサー・アーチボルトのほうが良かったと」
「言ってたわね」
「現実になるんだなぁ……」

 アーチボルトはアーチボルトでもアーサーではなくネイトだったことにガッカリしたのは記憶に新しい。カサンドラの言う通り、ネイト・アーチボルトに大事な娘を嫁がせて喜ぶ親はいない。それこそ政略結婚でもない限りは喜ばないだろう。二人は大切な我が子の大切な子だったから余計にその思いは強かった。
 ネイト・アーチボルトというよりはその親であるアベラルド・アーチボルトの狙いがわかっていただけにマリーが受けたときは驚いた。なぜ受けたのかはすぐにわかったからこそ心臓が抉れる思いだったが、マリーが『結婚できるの。すごく嬉しい』とムリに笑うから止められなかった。
 結婚式のマリーの表情次第でマリーを連れ帰ろうとさえ思っていたのだが、婚約破棄になったと聞いて心底安心した。
 息子に向ける顔がない。息子になんと言えばいい。何度、墓に足を運び、何度謝ったか。息子達ならきっとネイトと結婚すると言ったマリーを何時間、何日、何ヶ月かかろうと説得したはず。自分達はそれができなかった。申し訳ないと言わなければならないのは自分達だったのに。

「息子達が守ってくれていたんだな」
「そんな当たり前のことを今更言ってるの?」

 クスッと笑うカサンドラがベンジャミンの髪を撫で、そのまま手を下ろして手を握る。
 愛する娘を守らないはずがない。

「私は信じてましたよ。ネイトとの結婚は白紙になり、白馬の王子様が現れると」
「お前、調子のいいこと言うな」
「あら、私の言葉をお忘れ?」
「ああ、結婚式前日にネイトの馬車を襲って火かき棒でグサッとってやつか。……まさかお前、本気だったんじゃないだろうな?」
「愛する孫を守るためなら何でもするものよ」

 カサンドラならやりかねないと苦笑さえも滲まないベンジャミンはカサンドラの手を強く握った。

「一生愛してるからな。殺さないでくれよ」
「私も愛してますよ」

 殺さないとは言わなかったことに女の怖さを再確認したベンジャミンはハハッと乾いた笑いをこぼしてそのまま横になり、カサンドラの膝に頭を乗せる。そこから見える飾られたバラの花束。
 一日経っても気持ちは変わらなかったかと嬉しくなったベンジャミンが笑顔を見せるとカサンドラはベンジャミンが何を考えているのか見抜いているように頷いた。

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