エロ漫画先生に犯されるっ!

雪見サルサ

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第一章 襲われがちなアラサー女子

第14話 淑女の嗜みを見られるっ!

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 柚月にとって災難だったのは丁度、三日前に十八歳を迎えたばかりだったことだろうか。
 律儀に十八になったタイミングで柚月は18禁漫画を解禁したのだ。
 毎日のようにエッチな漫画を読み漁り、柚月は完全に侵されていた。

「ぁん……学校の中なのに……ぁん……こんなこと……だめだよ……私には好きな人がいるのに……」

 柚月が思い描いていたのは、『放課後に、相手役男子のライバルのオレオレ系のヒール役男子に襲われる』というシチュエーションだった。
 どちらかと言えば柚月は受け身な性格だったのもあり、妄想する時は大抵、強引に押し倒され、抵抗も虚しく犯されてしまう状況ばかりだたのもある。

「い……やめッ……やめてッ……ぁぁん!……気持ちくなんて……ない!」

 柚月は抵抗の言葉を口にしつつも、下着の中で陰核をこねる手が止まらない。
 それどころか激しくなってくる。

「やんっ……そんなに、触ったら……感じちゃう!……ぁん」

 柚月は妄想の中の、大柄なオラオラ系の大男に後ろから抱きしめられ、身動きが取れないまま、執拗に陰核を攻め続けられた。
 男の指さばきは絶妙だった。
 手慣れた感じがして、きっと何人もこうやって手籠めにしてきたのだろう。

「あっ……あっ……もっと……強くっ! ……んぅ!……ぁっ!……ぁっ、激しい!」

 柚月の蜜壺からは、とめどなく愛液が溢れ出していた。
 嫌いな男にクリ皮を剥かれ、柚月の一番弱いところをこすられる。
 嫌なのに、感じてしまう……その屈辱と快感の相互作用が、柚月の情欲を否が応でも掻き立てる。


『おいおいどうなってんだよ、マ◯コから汁が溢れてとまんねぇじゃねぇか。どんだけ変態なんだよ、この淫乱な雌豚が……!』


 そんな男の幻聴さえ聞こえてくるようだ。
 しかし、今の柚月に男の言葉を否定できるような要素は皆無だった。
 暴言を吐かれることにすら、それが的を得ていると客観視してしまう自分がなんと卑しいことか。

「ハァ……ハァ……イッちゃう……イッちゃうよぉ……!」

 柚月の呼吸が荒くなり、いよいよ絶頂の時が近くなる。
 教室内にはピチャピチャと、いやらしい粘り気のする淫液の音がこだましていた。
 奇しくもその音は、下着の中の指の動きに連動している。

 ーーそして、その時が来た。


「あっ! あっ! あっ! いッ……イグッ……イ……グッ……! (ビクンッ!……ビクンッ!) ハァ……! ハァ……!」


 イク寸前、柚月から出たとは思えないような野太い声が漏れる。
 数拍の後、数度にわたり押し寄せる痙攣。

 柚月は自身の身体を大きくのけぞらせた。
 やがて足の力が抜けてしまったのだろう、柚月は崩れ落ちるようにしゃがみ込む。
 半開き状態の口からは唾液が滴り、黒目はぐるんと上を向き、オーガズムに酔いしれていた


「上村さん……まさか、イッたのか……?」


 堂島は思わず、そんな素朴な反応をしてしまう。
 脳の処理が完全に追いついていなかったからだろう。

 柚月のオーガズムは、余韻というものがあった。
 脳が快楽物質で満たされたまま、緩やかに痙攣の間隔が伸びてゆく。
 それはまるでサウナで「ととのう」という感覚のよう。

 かつての凛とした華のような美少女の姿は何処にもない。
 今の柚月はーー"快楽に堕ちた淫らな雌"に過ぎなかった。


「すごい……上村さん……。こんなの、エッチすぎる……! グフッ……」


 柚月の痴態を目撃した堂島の目はガンギマり、鼻血が勢いよく吹き出した。
 同級生、それも高嶺の花であった女子が自慰にふける姿を目撃するというのは、普通に生きていれば起こり得ないシチュエーションである。
 しかし、堂島は目撃してしまった。
 センセーショナルな事件というのは、往々にして創作活動に影響を及ぼすもの。
 堂島にとってのそれは"劇薬"であった。

「……描きたい……。俺は……! 上村さんがイキ狂う描写を描きたい……!」

 堂島の性的指向、あるいは人生観にまで影響を及ぼす重大事件だったと言えよう。
 堂島がこれ以降、覗き行為に嵌まらなかったのは、ひとえに創作活動に出会っていたおかげである。
 そうでなければ堂島は今頃、覗き魔変態ストーカー行為を繰り返し、逮捕されていただろう。


「ハァ……ハァ……ごめん……私……汚されちゃったよ…………”九条くん”」


 ふと、柚月が一人の青年の名前を口にした。
 意識を取り戻してなお、柚月のロールプレイはまだ続いていた。

「ッ?!」

 堂島は、柚月からその名前が出たことに激しく動揺する。
 おそらく柚月の妄想の中の相手役の名前なのだろう。
 "九条"……その名字で思い浮かぶのは、”九条涼矢”。
 堂島や柚月と同じクラスの男子で、一際人目を引く甘いマスクの青年であった。


(そうか……やはり上村さんも九条のことが……)


 思えば順当と言うか、全く不思議なことはない。
 全校の女子のほとんどがこの青年に懸想していた。
 付いたあだ名が"中崎の白王子"
 人付き合いを苦手としていた堂島と比べ、九条は非の打ち所のない青年だ。
 成績優秀、サッカー部ではエースストライカー、話もうまく、誰から見ても頼りがいのある男だった。

 ーー心が締め付けられるような思いがした。

 比較するんじゃなかった。
 堂島は思わず唇を噛み締める。

 これまで柚月を観察してきただけあって、仕草や視線から誰にどんな印象を抱いているかはある程度分かる。
 柚月が九条を見るその眼差しには、ただのクラスメイトを見る以上のものが含まれていた。
 その度に堂島の胸中はひどくざわついたのを覚えている。


(二人は……いつか付き合うのだろうか……)


 高校で一番の美男美女。
 きっと誰もが羨むような最高のカップルになるに違いない。
 まさにヒロインと相手役にふさわしい。
 実際に堂島の漫画の相手役"蛇石"は九条をモデルにしていたのもある。
 堂島が描いている少女漫画のストーリーをなぞるならば、それが順当なハッピーエンドであるはずだ。

「お似合い……だしな」

 柚月自身がそれを望んでいるのなら、それでいいじゃないか。
 堂島が出る幕はない。
 今まで通り、遠くから眺めていればいい。

「だけど……」

 そのはずなのに、堂島が抱いた想いはまるで正反対のもの。
 それは傲慢で、自分本意な考えだ。


「……少し嫌だな」


 堂島は自身の口からそんな想いがこぼれたことに驚く。
 柚月は確かに堂島の漫画家を目指す大きなきっかけをくれた少女だ。
 しかしそれは、堂島が描きたいと思うモデルとしてだったはずだ。
 柚月が、他の男のものになったとしても支障はないはず……だった。

 ーー特別な出会い方をした。

 堂島が漫画を描いていることを知り、その上で拙い絵を褒めてくれた。

 ボーイミーツガールは、かけがえのないもので、色褪せてはならない。
 そんな不動のルールがふと頭をよぎる。
 あるいは"恋愛"を描く一人の創作者としての意地だったのかもしれない。

 それを踏まえて、一人の漫画家が選んだ結論は……。


「俺はきっと……上村さんのことが好きだ」


 言葉にしてみたら、全身にすっ、と抵抗なく浸透していったような感覚がした。
 同時に柚月への想いが溢れてくるのを感じる。

 ーー美人で落ち着いた雰囲気のある柚月が好きだ。
 ーー実はスタイルが良いが、恥ずかしがり屋なところがある柚月が好きだ。
 ーー意外とスケベなところがある柚月が好きだ。

 それこそ……
 ……今すぐ押し倒して、めちゃくちゃに"犯したい"くらいに。


 しかしながら、現実は思いもよらぬ方向に、それも前触れもなく、舵を切ることになる。


 このまま何事もなければ、柚月は制服に着替え、教室を出ただろう。
 その後、堂島も何事もなかったかのように教室に戻り、鼻血を拭いてから本気で柚月に向き合おうと決意を新たにしたことだろう。


 ーー無常にも、ガラガラと教室のドアが開いた。


 そこから先の出来事が、柚月と堂島の十一年を変えることになる。
 しかしながら、今ここで堂島の口から語られることはなくなった。

 なぜなら、耳をつんざくような柚月の羞恥の叫び声が、堂島を現実に引き戻したからである。

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