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6 (※後半R18描写あり)
しおりを挟むその場では咄嗟に首を傾げて微妙な笑みで誤魔化したけれど、食べ終わった食器を片付けている間に心臓がバクバクしてきた。
央志さん、まさか、俺が天知にキスされた事を知ってる…?
(…いや、まさかまさか。)
浮かんだ考えを打ち消してみたが、他に思い当たる節がない。
央志さんはああ見えて嫉妬深いところがあるから、たまにあんな風にカマをかけてくる事はあるし…きっとそれだと思ってみたけれど、考えてみればアレは白昼の公園内、しかも直ぐそこに往来が見えていた場所で起きた事。
昼食から戻る途中の知った誰かに目撃されていてもおかしくはない。
そして、その誰かの口から、というのも十分有り得る事で…。そう考え至った俺は一気に全身から血の気が引くようだった。
央志さんが既に俺が天知とキスしていた事を他人の口から聞いていて、尚且つそれを俺にとぼけられたんだとしたら…。
俺はそっと肩越しに振り返って、ベッドを背もたれにしてテレビを見ているであろう彼を見た。
「……。」
「……。」
がちっ、と視線がかち合う。
央志さんはテレビも見ずに、洗った食器を拭いている俺を見ていた。
そしてまた、にこりとさっきと同じ余所行きの笑顔で言った。
「湊、俺に言わなきゃいけない事、あるよな?」
「…ぁい…。」
ヤバい。こりゃ知ってる。もし知ってなくても、何かがあった事には完全に気づいてる。
そう確信した俺は、この後の事を何時も以上に覚悟しなければならなかった。
「……っ、ふっ、ぅ、…!!」
激しい。
何時もは隣の部屋への音漏れを一応は気にしてくれて、ギリギリ俺が声を我慢できるくらいのゆっくり静かな交わりなのに、今日は全然容赦ない。
腰を打ち付け肉のぶつかる音は部屋中に響き渡ってるし、彼の質量に奥を穿たれる度に俺の声も押し出される。
「……ふ、ぅあ…、あ、あ、」
大きい。長い。太い。内臓が押し潰されそう。
苦しい筈なのに、それだけではないから困る。
この一年で央志さん仕様に作り替えられてしまった俺の体は、彼と触れ合ったところから従順に快感を拾う。
俺の尻穴が拡がって戻らないのではと心配してしまうくらい長い時間、彼は俺の中を掻き回す。過剰に可愛がられ過ぎた俺の中はすっかり央志さんの形を覚え込んでしまって、多分もう他の誰とセックスしたって満足なんかできそうにない。男どころか、今更女性を抱く事も出来ないだろう。
「天知とのキスは良かったか?」
後ろから突かれながら大きな手で髪を引っ掴まれて喉が反る。少し苦しい姿勢で耳元に囁かれる嗄れた低い声にぞくりと腰が砕けそう。
「…っ、だれ、から?」
トンッ、トンッと打ち付けを止めてくれない央志さんの腰に手をやりながら声を絞り出すと、ふっと鼻から息の抜ける音がした。
(……ひぃ…笑っ…てる…。)
この人は怒りが深い程にそれを覆い隠すかのようによく笑う。けれど彼の中ではぜんっぜん中和されてるという訳ではなくて、その結果が笑顔で激しいセックスな訳だ。しかも、怒りの度合いによって時間が長くなるオプション付き。
抵抗しても力ではなかわないし、泣いても失神しても許してもらえない、何時終わるかわからない地獄の耐久セックスなんである。
今の所の最長は、半年前に給湯室で、上の戸棚に入ってた予備のポットの箱を取ろうとしてよろけたのを天知に抱き留められたところを、手洗い帰りの央志さんに見られた週の金曜日。因みに夜22時から始まり、翌日の朝10時にやっと解放されて泥のように眠った時。
それ前後にもちょっとした同僚達との接触に嫉妬される事はあったけど、考えてみれば天知との事で怒られてるのが多い気がするなー…。
そんな事を考えていた俺の耳に、央志さんが答えを囁いた。
「誰からって、天知からだけど?」
「…え…?」
「あいつは俺達の事、勘づいてる。」
「え…え?」
驚きを隠せない俺の耳の後ろに唇を這わせながら、央志さんは苦々しそうに言った。
「何時も言ってるよな?天知には気をつけろ、って。
…この耳は可愛いだけの飾りかな?」
カリッと耳輪を齧られて小さく悲鳴が出る。痛い、そこ、結構痛い。
尻穴抉られるより、それで涙目になる俺。でも叫んだりできないし…。
「ごめ、ごめん、しゃ…ん、んっ、」
シングル用のベッドが何時もよりギシギシ軋んで、これはもう絶対に隣にバレている。隣だけで済むかな…騒音で管理会社にクレーム入れられたらどうしよう。
気が気じゃなくて、どうにか早目に機嫌を直してもらおうと謝るけど、体に休みなく与え続けられる刺激に上手く呂律が回らない。
「前から忠告してるよな?天知にだけは気をつけろ、アイツの爽やか面に油断するなって。」
「ぁい、うん、ん、ん、んっ、ぁ…っ」
「ああいう奴が一番タチが悪い。ドブネズミに色目を使われたくらいで簡単にお前を手放せる程度の前の男なんかより、ずっとな。」
捕まったら逃げられなくなるぞ、と言われるけど、それ何の自己紹介?もしかして同類だからわかるって事?
笑いながら俺の尻を両手で鷲掴んで押し広げ、より深く挿入しながら言う央志さんに、俺は頷くしかできない。
チカチカ、と視界の端に光る何かがチラついた。
ヘッドボードの充電器の横に斜めに立て掛けてあった、俺のスマホだった。勿論消音はしているけど、伏せるのを忘れていた。
画面にLIMEの通知が表示されていて、それが天知からのものだと確認してしまった央志さんは舌打ちしてそれを伏せた。
それから、また俺への抽挿を再開した。
「…ぁ、ぁあ、おうし、さ…っ」
「湊…少しでもあっちに気を惹かれたら、許さないからな。」
ああ、俺、もう一生この人から逃げられないんだろうなあ、幸せだなあ…と、伏せられたスマホの上部に点滅する青い光を横目にぼんやりと思った。
こういう訳なんで、俺の事はさっさと忘れてくれ、永。
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