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第3章 老害

第48話 攻略開始

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 人人人。見渡す限り人。人がゴミのようだ。
 バルス唱えちゃうぞ。

 「協会が滅茶苦茶宣伝してたからな。効果がすげぇ事になってる」

 野次馬に探索者にアナウンサー。北海道にこんなに人が居たのかってぐらい溢れてる。

 「だんちょ~だけじゃなくて~他のギルドが攻略するのが大きいんだろうね~。他国に先んじて日本の探索者のレベルが上がったって示せるからね~」

 「お偉いさんは忙しいね。狭間攻略も政治の一種ってか」

 「分かりやすい武力だもんね~。核なんかよりだんちょ~の魔法の方がやばそうだし~」

 戦争なんて拡声器持って傲慢ルシファー で死ねコールしてたら終わるぞ。
 必要なのは俺の魔力だけ。なんてエコな戦争なんでしょう。
 あいにく、やる気は全くありませんが。

 「さって。野次馬とかは気にせずにさっさと入りますか。今日中に攻略出来たらいいなぁ」

 「『暁の明星』に期待だね~。他のギルドとはレベルが少し違うと思うし~」

 そりゃ、一ヶ月みっちり天魔ブートキャンプしたからね。他との違いを見せてくれないと、俺の指導の意味がない。

 「じゃあ、皆さん入りますよー」

 世界的には歴史的瞬間になるかもしれないけど、俺達は特に気にせずヌルッと狭間へ突入した。


 「んん? おおー。ラッキーラッキー。戦いやすそうな敵だな」

 狭間に突入して人数確認。
 大村さんは既にカメラを回している。

 「天魔さんはもう敵が分かるんですか?」

 「多分ですけどね。人型が出てくるんじゃないかなと」

 2級だからか1級と違って、狭間は洞窟っぽいけど、この据えた匂いはオーク特有のやつだ。
 あいつらの肉うめーんだよな。

 稲葉さんは不思議そうにしてたけど、これは経験ですよ。異世界で食糧確保の為にくそほど狩ったからな。オークキラーといっても過言ではない。

 「さて、どのギルドからいきます?」

 「僕達からでもいいですか? 天魔さんに指導してもらった成果を早く確認したいんですよね」

 みんな立候補してきたけど、先頭バッターは『暁の明星』に決まった。
 うずうずしてたもんね。俺も気になるし。

 そうこうしてるうちに、オークの上位種が4体やってきた。ノーマルのオークは3級でもでてくるらしいからね。上位種になって強さもワンランク上になってるけど、果たしてどうなるか。

 「安藤!」

 「はい! はぁあ!!」

 うわ。すげーパンプアップ。
 『風神雷神』の双子姉妹がきゃーきゃー言ってる。どうやら安藤さんのファンらしい。
 あの筋肉達磨お姉さんは男にも女にもモテるのか。

 稲葉さんと安藤さんがタンクを受け持つ。
 そして、後方から氏家さんが相手にデバフをかける。

 「射線をあけてください!」

 魔法行使の準備が整った明智さんが声をかけると、稲葉さんと安藤さんが飛び退く。
 その瞬間、10個程の火の弾丸がオーク達を襲った。

 「畳み掛けますよ! 氏家さん! バフを!」

 「了解!」

 バフを受けた安藤さんの右ストレートがオークの顔を捉える。
 モロにもらったオークの首は折れて、ダラリと倒れる。

 「『筋肉増強』があるとはいえ、ステゴロのパンチであの威力。やっぱり成長してるね」

 「後は武器だよね~。安藤さんの力に耐えられるガントレットとかあれば良いんだけど~」

 俺のアイテムボックスの中に眠ってるけどね。
 かなり効果が高いやつしかないけど。だから出すのを躊躇ってる。
 出所を聞かれても面倒だし、実力が伴わないうちに強い武器を持っちゃうとそれに頼り切りになるから。いつか1級攻略したら記念にあげてもいいけどさ。

 安藤さんに1体倒されて、残り3体になったオーク。魔法のダメージもあって動きが鈍い。
 そこを稲葉さんは見逃さず、『魔装』で身体能力を上げて、剣で一気に2体を仕留めた。
 最後の1体を明智さんが再度魔法を行使して戦闘終了。まだモブ戦とはいえ、完勝である。

 「悪くないですね。後はペース配分ですか」

 「良かったですよ。最初という事で全力でいったんですが、もう少し力を抜いても大丈夫そうです」

 うんうん。後は回数こなして慣れていけば、2級のモブ相手はなんとかなるんじゃないかな。
 指導の成果がしっかり出てて安心してするよ。

 「えぇー。明星さんめっちゃ強なってるやんか。天魔さんのお陰でっか?」

 「どうですかね? そうならば嬉しいですけど」

 「またまた謙遜してー。これはわいらも今回が終わったら真剣に考えさせてもらいまひょか」

 「依頼お待ちしてますね」

 ふむ。早速顧客を掴めた予感。やっぱり結果が出ると分かりやすいよね。

 「安藤さんカッコよかったですー!」

 「ですー!」

 双子姉妹は安藤さんより明智さんを参考にしてほしいんだが…。キャピってやがるぜ。

 他のギルドの面々も今の戦闘には感心したらしく、『暁の明星』のみんなにどんどんと質問していく。それは良い傾向なんだけど、今は狭間の中なんだよね。

 「はいはーい。意見交換は狭間から出てからにしましょうねー。そろそろ次が来ますよー。映像も撮ってる事ですし、今は攻略に集中しましょー」

 「だんちょ~が言ってもあんまり説得力がないよね~? 普通に喋りながら攻略してるくせに~」

 それはそれ。これはこれ。
 嫌な言い方になるけど、俺と他では実力が違う。
 リラックスしながら攻略したいなら、もっと地力をつけてからにしてもらわないと。

 しかも今回は引率の立場だからね。
 万が一事故で死者を出したら目も当てられん。
 不穏な空気を出してる奴もいるしさ。ちょっと警戒し過ぎくらいで丁度良いんだよ。
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