87 / 267
― 第三章・南陸行路 ―
第87話 撫子と涼音の背景
しおりを挟む
道すがら、紫蓮らは、いろんな話しをした。
それぞれの生い立ちや現状などを……。
例えば、紫蓮と同じ年齢の撫子は、孤児なのだという。
七年ほど前に天涯孤独の身となったものの、イーガーの現国主夫妻に養女として引き取られたのだそうだ。
その頃は未だ、[忍者マスター]こと“成蔵”が国主だったらしいが…。
イーガーは“忍びの国”であるが故、任務で命を落とす者たちもいる。
彼ら彼女らの忘れ形見であり、親戚などの身寄りがない子供を引き取ってくれたのが、現国主の奥方なのだそうだ。
この国主夫婦には、実子が一人いて、それ以外に九人の養子が存在している。
撫子はそのなかの一人との事だ。
今から約一年前、“忍者マスター”が現役を退き、息子に国主の座を譲った際に、城から少し離れた別邸で暮らすようになり、二十人の忍が警備に選ばれた。
そのメンバーには、撫子であったり、現国主夫妻に育てられた子らの半数くらいが含まれている。
他の子どもは、まだ10歳前後なので、城で生活しているらしい。
二人の実の息子は18歳だが、跡継ぎなので、親元にいるそうだ。
しかし、此度の侵入事件を重く見て、逃走した犯人どもを捜すべく、彼もまた国を発ったとのことである。
[サッツゥー国]には、この子息が赴く予定だったが、〝次代の跡取りを危険にさらす訳にはいかない〟と撫子が主張して、再三に亘って説得し、役目を変わったらしい。
もし、あの侵入者らが、本当に“サッツゥーの忍”であった場合、これを放った棟梁に面会するなり殺されかねないので。
そこで、実子であれ、養子や養女であれ、我が孫として分け隔てなく接してくれていた成蔵が、撫子を案じて書状をしたため、かつての冒険仲間である[トゥーサーの大巫女]に協力を仰いだとの事だ。
まさか、断られるとは思いもよらなかったが……。
彼女としても、自分の身内を危ない目に遭わせたくなかったのだろう。
それでも、孫の一人である涼音を伴わせてくれたのだから、撫子にとっても文句はない。
更には、[ヒーゴンの侍王]に仕えていたという紫蓮にも出会えて、パーティーを組めたのは、嬉しい誤算である。
戦力が増えたのだから。
一方の涼音はというと…。
本人が12歳の頃に、[ヒューガー国]の要請を受けたトゥーサーの国主が、援軍を送ったことがある。
ヒューガー国を制圧すべく南下して来た[南陸第十二神国]を撃退すべく。
この時に、御宮からも、それなりの数を送り出した。
その部隊を率いたのが、涼音たち姉妹の母親の婿養子、すなわち、父親である。
だが、彼は、帰らぬ人になってしまったのだそうだ。
神に殺された事によって。
これ以来、涼音は、神々を討つ事を、秘かに誓っていたらしい。
大巫女は、娘婿を始めとして命を落とした者らに胸を痛め、他国のいざこざには関わらぬよう決めたとのことである。
御宮の関係者を守る為に。
懐かしき戦友である“忍者マスター”の頼みに、当初は首を縦に振らなかったのは、そのような内情があったからだ。
だが、自分の娘を促し、旅立ちを許可させてくれた祖母に、涼音は感謝している。
ちなみに、涼音は、紫蓮と撫子の一つ年上であった。
紫蓮も、神々を倒したい理由や、これまでの出来事を、語っていったのである―。
それぞれの生い立ちや現状などを……。
例えば、紫蓮と同じ年齢の撫子は、孤児なのだという。
七年ほど前に天涯孤独の身となったものの、イーガーの現国主夫妻に養女として引き取られたのだそうだ。
その頃は未だ、[忍者マスター]こと“成蔵”が国主だったらしいが…。
イーガーは“忍びの国”であるが故、任務で命を落とす者たちもいる。
彼ら彼女らの忘れ形見であり、親戚などの身寄りがない子供を引き取ってくれたのが、現国主の奥方なのだそうだ。
この国主夫婦には、実子が一人いて、それ以外に九人の養子が存在している。
撫子はそのなかの一人との事だ。
今から約一年前、“忍者マスター”が現役を退き、息子に国主の座を譲った際に、城から少し離れた別邸で暮らすようになり、二十人の忍が警備に選ばれた。
そのメンバーには、撫子であったり、現国主夫妻に育てられた子らの半数くらいが含まれている。
他の子どもは、まだ10歳前後なので、城で生活しているらしい。
二人の実の息子は18歳だが、跡継ぎなので、親元にいるそうだ。
しかし、此度の侵入事件を重く見て、逃走した犯人どもを捜すべく、彼もまた国を発ったとのことである。
[サッツゥー国]には、この子息が赴く予定だったが、〝次代の跡取りを危険にさらす訳にはいかない〟と撫子が主張して、再三に亘って説得し、役目を変わったらしい。
もし、あの侵入者らが、本当に“サッツゥーの忍”であった場合、これを放った棟梁に面会するなり殺されかねないので。
そこで、実子であれ、養子や養女であれ、我が孫として分け隔てなく接してくれていた成蔵が、撫子を案じて書状をしたため、かつての冒険仲間である[トゥーサーの大巫女]に協力を仰いだとの事だ。
まさか、断られるとは思いもよらなかったが……。
彼女としても、自分の身内を危ない目に遭わせたくなかったのだろう。
それでも、孫の一人である涼音を伴わせてくれたのだから、撫子にとっても文句はない。
更には、[ヒーゴンの侍王]に仕えていたという紫蓮にも出会えて、パーティーを組めたのは、嬉しい誤算である。
戦力が増えたのだから。
一方の涼音はというと…。
本人が12歳の頃に、[ヒューガー国]の要請を受けたトゥーサーの国主が、援軍を送ったことがある。
ヒューガー国を制圧すべく南下して来た[南陸第十二神国]を撃退すべく。
この時に、御宮からも、それなりの数を送り出した。
その部隊を率いたのが、涼音たち姉妹の母親の婿養子、すなわち、父親である。
だが、彼は、帰らぬ人になってしまったのだそうだ。
神に殺された事によって。
これ以来、涼音は、神々を討つ事を、秘かに誓っていたらしい。
大巫女は、娘婿を始めとして命を落とした者らに胸を痛め、他国のいざこざには関わらぬよう決めたとのことである。
御宮の関係者を守る為に。
懐かしき戦友である“忍者マスター”の頼みに、当初は首を縦に振らなかったのは、そのような内情があったからだ。
だが、自分の娘を促し、旅立ちを許可させてくれた祖母に、涼音は感謝している。
ちなみに、涼音は、紫蓮と撫子の一つ年上であった。
紫蓮も、神々を倒したい理由や、これまでの出来事を、語っていったのである―。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
27
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる