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27話

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「改めまして、ろよしくね 」

クラリサはにっこり笑って俺に宝剣を差し出した。

本当に大事な剣を俺なんかが貰っていいのだろうか? 今更剣の威厳ある風格に生唾を飲み込む。
クラリサは俺に渡すと決めたと言うけど、俺にはこれが何を意味するものなのかも知らない。

「・・・・・・本当に俺が貰っていいの? 」

剣を目の前にして今更後込むなんて、ホント今更だと思う。 だけどそれほどに剣には特別な何かを感じる。

「私はカインクラム様に持っていて欲しいの。私の心も持って行ってしまったんだもの、当然この剣もあなたの物よ 」

にっこり微笑むクラリサ、俺の何処が気に入ったのか・・・でも一緒に旅したら俺が役立たずだと分かって幻滅するだろう。

「・・・・・・じゃあ・・・・・・ 」

俺はどうにでもなれという気持ちで宝剣に手を伸ばした。
宝剣を手にした瞬間、一瞬俺の身体が光った気がした。

「ん? 今なんかおかしかった? 」

「一瞬、カインクラム様が光に包まれたわ 」

クラリサも目の前で見ていて分かったみたいだ。でも一瞬で消えた。なんだったんだろう? 宝剣の力かな?
なんて事を考えながら剣を鞘から抜いて構えてみる。
綺麗に磨き上げられた刀身は千年以上も前の物だと思わせない輝きと鋭さを持っている。それに、重そうに見えたのに重さを全く感じない。手にしっくり来る。本当に俺用にあつらえたみたいに馴染む。これが宝剣の力なのかな。

「カイン、様になってるわね 」

イリヤが横からニヤニヤと笑いながら褒める。
くっ・・・・・・絶対思ってないな。

「どうせ俺には宝の持ち腐れだって言いたいんだろ? 俺が一番よく分かってるよ 」

「そんな事思ってないわよ、ね?  」

イリヤはマリンに同意を求め、マリンも頷く。

「どうだか・・・・・・ 」

何を思ってようと、罵られ慣れてる俺はなんとも思わないさ。
剣を鞘に戻してクラリサを改めて見る。

「そう言えばクラリサはどんな加護をもってるの? 」

「私は遠見の加護をもってるの。大抵の物は探せるわ 」

「そうか、それで俺達が何処にいるかも分かったんだ 」

「ええ、逃げたと聞いて探してたら街道沿いで煙の上がってるのを見つけて、報告の見た目から多分あなた達だと思ってうちの忍びを向かわせたの  」

道理で早く見つかったし、音もなく現れた訳だ。クラリサの能力も凄いな。

「ちなみに魔術は自分の防御魔術以外役に立たないので戦闘は出来ないからね 」

「分かった、自分の身を守れるだけ凄いよ 」

シンシアも目が見えないから当然戦えないけど、自分の身を守る魔術を使えるし、何より回復魔術が凄いからとても助かってる。

「さぁ、じゃあ出発しましょうか 」

イリヤの声にみんな同意する。
クラリサの準備と食料の準備を整えて、俺達は城を後にアーシエンダに向けて出発した。



「ねぇ、そう言えばカインクラム様は飛ぶ時何をイメージしてるの? 」

出発してしばらくしてクラリサが俺の横に並びながら問いかけてくる。

「イメージ? 特に何もしてないけど 」

「それじゃあ、どこに出るか分からないで当たり前だと思うけど 」

「え? クラリサは何か知ってるの? 」

「知らないけど、そういうのって行きたい場所のイメージが大事なんじゃないかと思っただけよ 」

「なるほど! 」

クラリサの言う通りかも知れない。今まで考えもしなかったけど、確かに何処に行きたいかが無ければ全く違うところに飛んで当たり前だ。

「・・・・・・あれ? でもジュナとはぐれた時俺はジュナの元に戻りたいと思ってたんだけどな・・・ 」

「そうなの? シンシア様は? 何をイメージしてた? 」

「私は・・・ ジュナ様を見たことがないので特に何も・・・ 」

「ああ、ごめんなさい、シンシア様は目が見えないんだったわね 」

「いえ、ごめんなさい 」

「シンシア様が謝ることじゃないのよ、本当にごめんなさい、気にしないでね 」

クラリサはシンシアに対して特に責める感じではなかったんだけど、この時のシンシアは少し様子がおかしいと思った。
目も伏せがちで、なんか何時も胸を張って堂々としているシンシアらしくない。

「そうか! 二人のイメージが合っていないと望む場所に行けないって事? 」

イリヤも何か気がついたのか、手をポンと叩いて俺とクラリサを見る。

「そうじゃないかなと・・・やってみないと分からないけど・・・・・・ 」

そう言いながらクラリサはシンシアを見る。
なんかそれって結局シンシアの目が見えない事がいけない事のように聞こえて嫌だな。

「クラリサ、きっと俺に魔力が無いのがいけないんだよ、だから暴走するんじゃないかな? 確かにクラリサの言うように、二人のイメージが一致していればいいのかもしれない。だけどそれは風景だけでなくて人物の名前とか、地名とかかもしれないよ、それは試す価値はあるかもね 」

「そうかもしれないわね 」

納得したように笑顔を向けるクラリサ。
俺は出来るだけ二人を傷つけないように言ったつもりだけど、シンシアの表情はやっぱり曇ったままだった。





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