冷宮の人形姫

第二章 愛される末っ子姫

第１話 魔法は弱まったけど

※第一章。ちょこちょこ改稿しております。主に、フィレンティア視点を。フィレンティアちゃんが部屋で動いていたよということ以外は、あまり変わっていませんので、読みたい人は読み直してください。

本編どうぞ↓

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　私、フィレンティアが転生して早五年半。予定では半年……正確には、五ヶ月後くらいに学園に行く事になる。
　5歳になるまでは、冷宮で暮らしていて、表情筋がまったく仕事しないから、冷宮の人形姫なんて呼ばれていた。それから、半年くらいはシトリン宮という宮で暮らしてきた。父親と交流したり、兄や姉と交流したり、皇妃様達の着せ替え人形になったりした。
　一番の変化は、私が話せるようになった事だと思う。まだ、感情や感覚は戻っていない。目をつぶっていたら、触ってもよく分からないし、表情筋はまったく仕事をしていない。フェレスが視たら、話せない原因の魔法は完全に解けているらしい。
　でも、他の魔法はちょっと弱っているだけで、そこまで変化はないのだとか。

　学園に行くために勉強もしていたけど、中身が大人のせいか、半年の間に初等部の内容は全部終わってしまった。
　私の前世は、静香という名前だったこと、孤児だったこと以外はあまり覚えていない。この前、夢にみた事から、昔も人形みたいだったのかもしれないけど、はっきりと覚えているわけではなかった。
　私は、最近まで、フェリクス兄様のアクアマリン宮で過ごしていたけど、護衛を増やしたのと、ほとんど危険はなくなったからという理由で、シトリン宮に戻った。
　そして、毎日のように誰かが訪ねてくる。

「ティア！起きてるー？」
「ローランドにいさま」

　前とは違って、割とはっきりと話せるようになっている。時々拙くなる時はあるけど、今思えば、はっきりと魔法が解けてなかったからかもしれない。

「ティアっていつも早起きだよね？」
「……？いつもこのくらい」

　冷宮では、誰よりも遅く寝て、誰よりも早く起きるのが当たり前だった。そうしないと、叱られるから。私という共通のターゲットがいないと、ルメリナのターゲットは使用人になるから。
　私は、ちょうどいいサンドバッグみたいなものだった。それを辛いと感じなくなったのは、いつだったかな……？そもそも、サンドバッグみたいになったのがいつだったかも覚えてないや。

「よく寝て、よく食べて、よく遊ぶくらいがちょうどいいのに！」

　冷宮とは真逆だ。寝た時間は、多分３～４時間くらいだし、食べ物なんてまともに与えられなかったし、遊んだ記憶なんてない。

「そうだ。ティアは、魔法が使えるようになったの？」
「ううん」

　私が人形姫になっている理由は、魔法のせいだ。他の魔法は弱まっているだけで、無くなっているわけではないので、まだ魔法は使えないみたい。
　まずは、魔法を無くすか、もう少し弱らせることから始めないといけないみたい。

「ねぇ、ティア。お菓子を用意したんだけど食べる～？」
「たべる！」

　私は、味覚も少しだけ戻っていて、お菓子のような甘いものは、美味しいと感じるようになっていた。
　私は、ローランド兄様に抱っこされて、連れていかれた。


※序章的な感じなので、ちょっと短めです。次からは、もうちょっと長くしますね。