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第二章 初めての領地
18 領地への道中 1
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馬車に乗り込んだリオンティールは、今世で初めての外出に子どもらしくわくわくしていた。
「さて、リオン。大切なことがあるの」
「な、なんですか?」
ふふふと笑いながらそう言う姉に、リオンティールはびくっと体を震わせた。
「この子の言葉を通訳してちょうだい!前から約束してたでしょ!?」
「そういえば、そんな約束してましたね……」
だが、あの話は、もう半年以上も前の話だ。まだ有効だったのかと、リオンティールは苦笑いしてしまう。
「でも、魔物の言葉がわかるなんて……。リオンは、何かスキルを持っているのかもね」
「スキル……ですか?」
「そうよ。神さまから授かる特別な力のこと!」
その言葉に、リオンティールはドキッとする。
だが、目の前の姉が事情を知っているわけがないと、少しずつ冷静になった。
「貰える人と貰えない人がいるんだけど、リオンも選ばれし存在みたいね!」
「僕も、ということは……」
「私とお兄さまもスキルを持っているわよ!リオンほどすごいものではないんだけど」
「知りたいです!どんなものなんですか?」
リオンティールがわくわくしながら聞くと、アリアーティスを胸を張って答える。
「私は『魔力覚醒』で、お兄さまは『剣聖』が使えるわ」
「そ、そうなんですね~……」
絶対にそっちのほうがすごいだろ。
リオンティールは、苦笑いしながらそう感じた。
◇◇◇
馬車に揺られること数時間。リオンティールたちは、お昼を食べるために、一度休憩することになった。
領地はそれなりに距離があるため、一日で着くことはない。道中で様々な宿に泊まりながら、領地を目指す。
その休憩の間に、リオンティールは、アリアーティスの従魔の通訳をしていた。
アリアーティスの従魔は、鳥のような見た目だからか、囀りのようにピーピーと鳴いている。
「ピーピー。ピィ、ピィピピィ」
『あなたが主さまの弟君ですね。私は、マテリアルバードのシーリンと申します』
「よろしくね、シーリン」
リオンティールがそう言うと、アリアーティスは目を見開く。
「名前がわかるの?」
「シーリンが自己紹介してくれましたから」
「やっぱりすごいわね、リオン!」
アリアーティスが何度もすごいと褒めてくれるが、兄姉のスキルを知ってしまった身としては、素直に喜べない。
「マ、マテリアルバードは、魔力を吸収して貯めておけるんですよね?」
とりあえず話をそらそうと、マテリアルバードの話を始めた。
「あら、よく知っているわね。そうよー。だから、私の魔力を与えておいて、いざというときに使えるようにしているの」
「そうなんですか」
「ピィピィ、ピピィピィ」
『主さまの魔力はおいしいけど、量が多いのよね……』
シーリンが、アリアーティスの肩でぼそりと呟く。
リオンティールがあははと苦笑いしていると、アリアーティスがその額を指でつんつんとつつく。
「あら、リオンに自慢でもしているのかしら」
「いや、姉上への文句ですね……」
「私への文句!?」
「ピィピィ!」
『文句じゃありませんよ!』
リオンティールのボソッとした呟きに、アリアーティスとシーリンが反応して詰め寄る。
ルイスは、あれ?というように言う。
「だって、姉上の魔力が多いってぼやいたじゃん」
「ピピィ……ピィ、ピーピーピー!」
『言いましたけど……それだと、満足するだけ食べられません!』
「なんかわがままじゃない?」
多すぎても嫌だけど、少なすぎても文句を言うなんて、かなりの贅沢だ。
「にゃあにゃあ。にゃにゃあ……」
『貰えるだけいいじゃん。ボクなんてまったく貰えないのに……』
「魔力をあげないとダメなら、そう言ってくれればあげたよ?僕を人でなしみたいに言わないでほしいな」
リオンティールの腕の中で文句を言うラクに、リオンティールは負けじと抗議する。
じっと互いに睨みあっていると、アリアーティスがふふっと笑う。
「まだ契約したばかりなのに、仲がいいのね」
「そ、そう……ですかね?」
「にゃあにゃあ?にゃあ」
『ボクとリオンが仲良し?ないない』
「なんだと~!?」
ふっとバカにするようにそう言うラクにリオンティールは、ラクを押し倒し、お腹をくすぐる。
「にゃ~!」
『何するの~!』
「動物は、お腹が弱いんでしょ?もっとやってやる~!」
そうやってラクのお腹をくすぐるリオンティールを、いつの間にかその場にいた全員が微笑ましく見ていた。
「さて、リオン。大切なことがあるの」
「な、なんですか?」
ふふふと笑いながらそう言う姉に、リオンティールはびくっと体を震わせた。
「この子の言葉を通訳してちょうだい!前から約束してたでしょ!?」
「そういえば、そんな約束してましたね……」
だが、あの話は、もう半年以上も前の話だ。まだ有効だったのかと、リオンティールは苦笑いしてしまう。
「でも、魔物の言葉がわかるなんて……。リオンは、何かスキルを持っているのかもね」
「スキル……ですか?」
「そうよ。神さまから授かる特別な力のこと!」
その言葉に、リオンティールはドキッとする。
だが、目の前の姉が事情を知っているわけがないと、少しずつ冷静になった。
「貰える人と貰えない人がいるんだけど、リオンも選ばれし存在みたいね!」
「僕も、ということは……」
「私とお兄さまもスキルを持っているわよ!リオンほどすごいものではないんだけど」
「知りたいです!どんなものなんですか?」
リオンティールがわくわくしながら聞くと、アリアーティスを胸を張って答える。
「私は『魔力覚醒』で、お兄さまは『剣聖』が使えるわ」
「そ、そうなんですね~……」
絶対にそっちのほうがすごいだろ。
リオンティールは、苦笑いしながらそう感じた。
◇◇◇
馬車に揺られること数時間。リオンティールたちは、お昼を食べるために、一度休憩することになった。
領地はそれなりに距離があるため、一日で着くことはない。道中で様々な宿に泊まりながら、領地を目指す。
その休憩の間に、リオンティールは、アリアーティスの従魔の通訳をしていた。
アリアーティスの従魔は、鳥のような見た目だからか、囀りのようにピーピーと鳴いている。
「ピーピー。ピィ、ピィピピィ」
『あなたが主さまの弟君ですね。私は、マテリアルバードのシーリンと申します』
「よろしくね、シーリン」
リオンティールがそう言うと、アリアーティスは目を見開く。
「名前がわかるの?」
「シーリンが自己紹介してくれましたから」
「やっぱりすごいわね、リオン!」
アリアーティスが何度もすごいと褒めてくれるが、兄姉のスキルを知ってしまった身としては、素直に喜べない。
「マ、マテリアルバードは、魔力を吸収して貯めておけるんですよね?」
とりあえず話をそらそうと、マテリアルバードの話を始めた。
「あら、よく知っているわね。そうよー。だから、私の魔力を与えておいて、いざというときに使えるようにしているの」
「そうなんですか」
「ピィピィ、ピピィピィ」
『主さまの魔力はおいしいけど、量が多いのよね……』
シーリンが、アリアーティスの肩でぼそりと呟く。
リオンティールがあははと苦笑いしていると、アリアーティスがその額を指でつんつんとつつく。
「あら、リオンに自慢でもしているのかしら」
「いや、姉上への文句ですね……」
「私への文句!?」
「ピィピィ!」
『文句じゃありませんよ!』
リオンティールのボソッとした呟きに、アリアーティスとシーリンが反応して詰め寄る。
ルイスは、あれ?というように言う。
「だって、姉上の魔力が多いってぼやいたじゃん」
「ピピィ……ピィ、ピーピーピー!」
『言いましたけど……それだと、満足するだけ食べられません!』
「なんかわがままじゃない?」
多すぎても嫌だけど、少なすぎても文句を言うなんて、かなりの贅沢だ。
「にゃあにゃあ。にゃにゃあ……」
『貰えるだけいいじゃん。ボクなんてまったく貰えないのに……』
「魔力をあげないとダメなら、そう言ってくれればあげたよ?僕を人でなしみたいに言わないでほしいな」
リオンティールの腕の中で文句を言うラクに、リオンティールは負けじと抗議する。
じっと互いに睨みあっていると、アリアーティスがふふっと笑う。
「まだ契約したばかりなのに、仲がいいのね」
「そ、そう……ですかね?」
「にゃあにゃあ?にゃあ」
『ボクとリオンが仲良し?ないない』
「なんだと~!?」
ふっとバカにするようにそう言うラクにリオンティールは、ラクを押し倒し、お腹をくすぐる。
「にゃ~!」
『何するの~!』
「動物は、お腹が弱いんでしょ?もっとやってやる~!」
そうやってラクのお腹をくすぐるリオンティールを、いつの間にかその場にいた全員が微笑ましく見ていた。
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