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第二章 初めての領地
19 領地への道中 2
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昼休憩が終わり、再び馬車が進む。
リオンティールは、馬車の中で悶々としていた。
(めちゃくちゃ恥ずかしい……!)
リオンティールからしてみれば、ラクにお仕置きする意味合いで、ラクの腹をくすぐっていたのだが、今のリオンティールは五歳。端から見れば、猫のようなかわいらしい魔物と戯れるかわいらしい子どもにしか見えない。
だが、リオンティールの中身には、高校生の梨央も入っているのだ。そんな微笑ましく見られてしまうと、開き直るよりも、羞恥心のほうが勝ってしまう。
「にゃあにゃあ。にゃにゃん」
『まあまあ。可愛かったからいいじゃん』
「誰のせいだと思ってるんだ!」
「にゃ~」
『リオン』
「うっ……!」
ラクに一瞬で言い負かされたリオンティールは、さらに気分が落ち込む。
だが、そんな気分は、大きな馬車の揺れと共にどこかに行ってしまった。
「うわぁっ!な、なに!?」
急に馬車が大きく揺れたため、リオンティールは前屈みになって倒れる。
それを、咄嗟にアリアーティスが支えたので、事なきを得た。
「……リオン。ここにいなさい。何があっても、外に出たらダメよ」
「姉上……?」
いつものアリアーティスからは考えられないくらいに、冷たい表情でリオンティールに告げる。
それはいつか聞いた、ロウェルトの氷姫と呼ぶにふさわしい気迫だった。
「シーリン。行くわよ」
「ピィ!」
『お任せを!』
シーリンは元気よく鳴き、アリアーティスの後に続いて、馬車を出た。
何事だろうと、リオンティールは馬車の窓から外の様子を伺おうとするが、よく見えない。
「何があったのかな……」
リオンティールのその一人言のような呟きに、ラクが答える。
「にゃ~にゃ~。にゃにゃん」
『盗賊に襲われたみたいだよ。五人くらいかな』
「わかるの!?」
リオンティールが驚愕すると、ラクを誇らしげに話す。
「にゃ、にゃあにゃあ」
『ボク、耳はいいからね』
「そういえば、そんなこと聞いたような……」
リオンティールではなく、梨央としての記憶だが、猫は人間の何倍も聴力が優れていると聞いたことがある。
猫とスレイクスがまったく同じなのかはわからないが、そう言われると納得できる部分があった。
「幸運を招くって言われてるのに、なんで不幸を招くのさ~!」
「にゃにゃあ!」
『君がボクに魔力を与えてないからだろ!』
「えっ!?魔力あげないとダメなの!?」
「にゃお。にゃあ、にゃあにゃあ」
『当然でしょ。魔物の能力は全部魔力を消費するんだから』
「早く言ってよー!」
すべてが寝耳に水だったリオンティールは、再び落胆する。
だが、起こってしまったことを嘆いていても、解決するわけではない。これからはちゃんとあげるようにすればいいだけだ。
それに、あの盗賊たちがどのくらいの実力者かはわからないが、あの兄姉たちが負けることはないような気がしてならない。
(せめて、僕が巻き込まれないように祈っていよう)
リオンティールは、静かに手を合わせた。
リオンティールは、馬車の中で悶々としていた。
(めちゃくちゃ恥ずかしい……!)
リオンティールからしてみれば、ラクにお仕置きする意味合いで、ラクの腹をくすぐっていたのだが、今のリオンティールは五歳。端から見れば、猫のようなかわいらしい魔物と戯れるかわいらしい子どもにしか見えない。
だが、リオンティールの中身には、高校生の梨央も入っているのだ。そんな微笑ましく見られてしまうと、開き直るよりも、羞恥心のほうが勝ってしまう。
「にゃあにゃあ。にゃにゃん」
『まあまあ。可愛かったからいいじゃん』
「誰のせいだと思ってるんだ!」
「にゃ~」
『リオン』
「うっ……!」
ラクに一瞬で言い負かされたリオンティールは、さらに気分が落ち込む。
だが、そんな気分は、大きな馬車の揺れと共にどこかに行ってしまった。
「うわぁっ!な、なに!?」
急に馬車が大きく揺れたため、リオンティールは前屈みになって倒れる。
それを、咄嗟にアリアーティスが支えたので、事なきを得た。
「……リオン。ここにいなさい。何があっても、外に出たらダメよ」
「姉上……?」
いつものアリアーティスからは考えられないくらいに、冷たい表情でリオンティールに告げる。
それはいつか聞いた、ロウェルトの氷姫と呼ぶにふさわしい気迫だった。
「シーリン。行くわよ」
「ピィ!」
『お任せを!』
シーリンは元気よく鳴き、アリアーティスの後に続いて、馬車を出た。
何事だろうと、リオンティールは馬車の窓から外の様子を伺おうとするが、よく見えない。
「何があったのかな……」
リオンティールのその一人言のような呟きに、ラクが答える。
「にゃ~にゃ~。にゃにゃん」
『盗賊に襲われたみたいだよ。五人くらいかな』
「わかるの!?」
リオンティールが驚愕すると、ラクを誇らしげに話す。
「にゃ、にゃあにゃあ」
『ボク、耳はいいからね』
「そういえば、そんなこと聞いたような……」
リオンティールではなく、梨央としての記憶だが、猫は人間の何倍も聴力が優れていると聞いたことがある。
猫とスレイクスがまったく同じなのかはわからないが、そう言われると納得できる部分があった。
「幸運を招くって言われてるのに、なんで不幸を招くのさ~!」
「にゃにゃあ!」
『君がボクに魔力を与えてないからだろ!』
「えっ!?魔力あげないとダメなの!?」
「にゃお。にゃあ、にゃあにゃあ」
『当然でしょ。魔物の能力は全部魔力を消費するんだから』
「早く言ってよー!」
すべてが寝耳に水だったリオンティールは、再び落胆する。
だが、起こってしまったことを嘆いていても、解決するわけではない。これからはちゃんとあげるようにすればいいだけだ。
それに、あの盗賊たちがどのくらいの実力者かはわからないが、あの兄姉たちが負けることはないような気がしてならない。
(せめて、僕が巻き込まれないように祈っていよう)
リオンティールは、静かに手を合わせた。
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