勇者として召喚されちゃった!~実際はチョメチョメ三昧!~

冬生羚那

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新しい出会い

じゅういちわめ

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 セーなんちゃら王国を出てジュークとの旅路も3日目、とうとう魔物と遭遇しました。
 といってもジュークがスパパパーンと一刀両断で俺はすることなかったんですけどね。

 魔物は生命いのちあるものを襲い、喰らう。
 どうして魔物が生まれるのか、未だ解明されていない──。

 俺はちょっと聞いたけどね。
 お子様に。
 かといってそれをどうにか解消出来るかはわからず、今の所方法もないので魔物は黙って倒すのが1番だ。
 魔物は延々と生まれるからね。
 そして人間達の中では魔族が魔物を生み出しているのではないか、と疑っているし、そう決めつけている所もある。
 ま、自分と違うモノを受け容れられないっていう気持ちは誰しもが持つから、どうにも出来ないしどうする気もない。

 俺達が遭遇した魔物はゲームでいうところのゴブリンと、野犬だ。
 ここでの表記もゴブリンだったよ。
 わかりやすくていい。
 ゲギャゲギャ鳴いてた。
 可愛い感じはなかった。
 ゴブリンも野犬も集団で行動するみたいで、数で押し負けることもあるらしい。
 あ、これは一般人での話ね。
 食料を求めて小さな集落に団体で押し寄せて来たこともあって、それで無くなってしまった集落もあるんだって。
 数の暴力ってやつですね。

 1匹見かけたら30匹いると思え。

 どこの黒光りヤロウか。
 野犬も似たような感じらしい。
 そして野犬に噛まれると高熱が出たり暴力的になったり、どこか狂ってしまうんだって。
 怖いねぇ。

 ここはジュークの居た国じゃないからどこから魔物が来るかわからないって言われた。
 そういうことでジュークが操る馬は速度を上げて道を進む。
 その先には町と呼べる程の集落があった。
 今日はベッドのある部屋で眠れるのかな?

 町の入り口には門番が立っていた。
 腰に剣をいている人と、身の丈はある槍を持っている人……人?人なのかな?
 俺が首を傾げている間にジュークが門番に身分証を提示して町に入る為の手続きをとっている。
 じろじろと不躾な視線を向けちゃいけないってわかっている……わかっているんだけど見ちゃう。
 どう見てもネコ耳に見えるんだもん!
 凄く触ってみたい!

「……どうしたシオン?」

 手続きを終えたジュークが馬と並んで待つ俺の所に戻ってきて眉間に皺を寄せた。
 そわそわして落ち着きのない俺を訝しげに見下ろしている。

「あの、あのね……あの……」

 俺もふもふ好きなんだよ!
 もっふもふしたいんだよ!
 あそこの人の耳触ってみたい!

 とは声を大きくして言えない。
 ジュークの服を軽く摘んで引っ張り、身を屈めたジュークの耳元に囁く。

「あのね、槍持ってる人の耳触ってみたいな、って。もふもふさせてくれないかなぁ?ちょっと、ほんのちょっとでいいんだけどさ」

 弾む声音は隠せなかった。
 槍を地面に突き立てて動かない細身のおじさまのネコ耳が聞き耳を立てていて、そわそわピコピコ動いてたのは俺には見えなかった。



 初対面でネコ耳もふもふは失礼に当たると言われてしょんぼりしながらジュークの隣を歩く。
 しょんぼりしていてもしょうがない、いつかは満足いくまでもふってやる、と決意して気を持ち直しす。
 そうしてキョロキョロと辺りを見回せばあっちに外人さん、こっちに外人さん、そしてちょこっと獣人さんが見えた。
 セーなんちゃらだと獣人さんが見られなかったから異世界感を凄く感じる。
 セーなんちゃらは獣人さん──妖魔族──を奴隷として使役しているらしい。
 これはジュークから聞いた話だ。
 お子様も妖魔族が不当な扱いをされていると言ってたから実際にジュークが『奴隷』という言葉を使ったことになんだか悲しくなった。
 あんなにもふもふで可愛いのに。

 表面に表れる獣らしい部分は、血の濃さとかで変わるんだって。
 人間の血が濃いと耳や尻尾だけ、とか鱗が生えているだけ、とか一部分に表れる。
 そして完全な人間の見た目はとれないらしい。
 逆に血が濃い人は『変態』が出来て人間の見た目になれたり獣の見た目になれたり自由自在らしい。
 わかってると思うけど、ここで言う『変態』は変質者的な意味合いじゃないからね。
 見た目の話ですから!

 耳もいいけど、もっと猫っぽい人とか犬っぽい人はいないものだろうか?
 全身くまなくもふらせてもらってブラッシングして差し上げたい。
 幸せな妄想に頬を緩ませていると、ジュークの足が止まった。
 慌てて意識を戻して周囲を確認してみると、どうやら村の外れの方らしい。
 一軒だけぽつん、と家があった。
 何故こんな外れにあるんだろう?
 ジュークはさっさと馬を家の脇にある木に繋いでいる。
 追いかけてみるとそこには馬の為らしき水入れや飼い葉があった。

「よし、行くぞ」
「あ、うん」

 ジュークの行動は慣れた人のそれで、知ってる場所なんだな、とぼんやり思った。
 玄関扉をゴンゴンノックしたかと思ったら徐ろに扉を開く。
 ノックの意味は!?

「エル、いるか!?」

 そして大きな声で住人に声をかける。
 ああ、知り合いの家なのか、とビックリしつつも納得する。
 扉を開けてすぐリビングのような場所だった。
 テーブル席があって、暖炉が壁側に、反対の方にはキッチンらしきものも見える。
 2階に上がる為の階段があって玄関以外の扉が2つ見えた。
 こうして見るだけならただの一軒家でいいんだけど、色んな物が散乱していてちょっと汚い。
 一人暮らしの男の人の家みたいだ。
 いや、綺麗にしてる人もいるからそんなこと言ったら絶対失礼だとは思うんだけど、イメージ的にね?

 ただ、この家の住人は大雑把で無頓着ではあるとは思う。
 寝室がバタバタなのは別に誰が見る理由でもないから、って乱雑になったりすると思うけれど、訪ねて来た人がまず視界に入れるリビングが『これ』だからね。
 あっちこっちに脱いだままらしい服があったり、本が積んであったり、テーブルの上にはコップとか食器が置きっぱなしだったりしてる。
 そして埃っぽい。
 ジュークも部屋の中を見回して盛大な溜め息を吐いている。

「まったくアイツは……少し待ってろ」

 そう言ってズカズカと上がり込んだジュークはテーブル周りにあるものを集め始めた。
 服とか本は適当に纏めて邪魔にならない所へぽいっと放り、食器は割れないように少し気を付けてキッチンへ運ぶ。
 手伝うべきか、とは思ったけど、ジュークならまだしも俺が触っていいものか悩んでいる内に座るスペースは出来た。
 ジュークに促されテーブル席に腰かけた瞬間、奥の扉がガチャリと開いた。
 そこから現れたのはちょっと違和感のある美人さんさんだった。
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