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第一章 異世界召喚

勇者と聖女

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 レンと見知らぬ美人は、どうやら召喚されたらしい。

 あの神社の爆発は恐らくこれが原因だ。

 タツノさんが一生懸命レンに話しかけているが、全く気づいてもらえない。

 ついにタツノさんがレンを引っ張ろうとし始めたので、慌てて俺が止めた。

「何よ、止めないでよ!」

「今、こんなに人がいるところで、騒ぎになるのはまずい。ここの人たちが俺たちの味方か敵か分からないうちは慎重になろう。二人きりになるのを待って、筆談でもすればいいんじゃないか?」

 タツノさんはいったんは納得してくれたようだが、女の方を凄い目つきで睨んでいる。

 知らない美人と思ったが、実は知り合いじゃないか?

「タツノさん、女の人のことも知ってるんじゃ?」

「エリコよ。レンの元カノよ。一体どうなってるのよ」

 レンって野郎はモテるんだな。タツノさんだけじゃなく、元カノも美人だぞ。こんな奴、ゴブリンにやられてしまえ。

「とりあえず、俺たちも黙って話を聞こう」

「わかってるわよ。もう取り乱したりしないわ。二人とも後で痛い目にあわせてやるから」

 変な方向に行きませんように!

 お婆さんの話が続いている。

 魔王に世界が征服どうのこうの、勇者と聖女を召喚してどうのこうの、要は魔王を倒すために勇者と聖女を召喚したということだ。

 何とレンは勇者か。じゃあ、魔王にやられてしまえ。でも、当然、そんな面倒なことはまっぴらごめんだと、レンは言うよな。俺だってそう答えるさ。

 ほう、でも褒美がすごいじゃないか。金銀財宝と美女でも美男でも何人でも選び放題だって?

 おっ、レンが顔を引き攣らせつつも、断った。お前、やるじゃないか。しかし、なんと美人の方は了承しちゃったよ。

 いかん、タツノさんがプルプルし始めている。やはり、タツノさんが動いた。俺はすぐに後ろから羽交締めにする。

「こ、こら、あなた、また、私の体を触るのっ!?」

「いや、冷静になってくれよ、タツノさん。もうあと少しの辛抱じゃないか」

「エリコも許せないけど、レンもあんなにエリコのことばかり見て、何なのよぉっ」

「ほら、こんな奇妙な世界に来てるんだぜ。知り合いがいれば、寄り添うって。タツノさんも俺と一緒に行動したじゃないか」

 何とかまたタツノさんをなだめたが、これはどうやら丸く収まりそうもないな。下手するとあの聖女、魔王にやられる前にタツノさんに殺されてしまうぞ。レンの野郎は死んだ方がいいが、聖女は俺が守らないとな。

 結局、勇者と聖女は魔王討伐を約束したようだ。異世界召喚の定番のチートスキルもあるようで、勝算ありと主に聖女の方が踏んだようだ。魔法の契約書をお婆さんと取り交わしている。反故にすると死んでしまうらしいが、よくそんな怖い契約をほいほい結べるよなあ。

 勇者たち御一行はこれから王様に謁見するらしい。さすがに公式に召喚された奴らは、来て早々イベントが目白押しだな。俺たちは不法入国者のようなものか。誰も相手にしてくれないから、もちろんお前たちに着いていくぜ。
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