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第一章 異世界召喚
竹藪の先
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竹藪はやはりやばかった。恐ろしい数の魔物が次々に襲いかかって来る。
しかし、さすがは勇者と聖女だ。レンもエリコも戦いなんて初めてだろうから、へっぴり腰で格好悪いが、強烈なエネルギー波がしこたま飛び出て来て、魔物がぐちゃぐちゃになって気持ち悪いぐらいオーバーキルしている。
ちなみに、魔物も人もエネルギー波も、すべて俺とタツノさんを通り抜けて行く。試しに魔物を殴ってみて驚いた。力一杯殴ると、魔物の内臓を直接殴ってしまうようで、心臓を殴ると即死してしまう。さっきの召喚のとき、おじさんの肩にそっとトントンした程度で本当によかった。危うく殺人犯になるところだった。
「なあ、タツノさん、俺たちってひょっとして無敵なんじゃないか?」
「だからどうだっていうのよ。人と交われないんじゃ、意味ないじゃない」
はあ、ごもっともですが、「無敵」の響きにロマンを感じないとは、いくら美人でも女は悲しいねえ。
タツノさんはずっと不機嫌だが、俺はだんだんと面白くなって来ていた。
しかし、こいつら、よくこんな暗い竹藪の中をズンズンと前に突き進んでいくな。と思っていたのだが、どうも写真のネガのような風景に見えるのは、俺とタツノさんだけのようだ。
竹藪を抜けた先は広大な陸地が開けていた。俺には赤黒い大地にしか見えないが、エリコには綺麗な大地に見えるようだ。感動の言葉を発し、うっとりとした目で景色を見ている。俺はそんな表情に違和感を感じた。
「レンとかエリコは新しい世界に来て不安とかないのか? 何でこんなに手放しで喜べるんだ?」
「何だか酔っ払っているときのレンやエリコの感じに似ているのよ」
タツノさんもおかしいと思っているようだった。
緩やかな丘を越えると、城壁に囲まれた城下町が見えて来た。かなり大きな町だ。俺たちには赤黒い不気味な町にしか見えないが、エリコがはしゃいでいる。中世ヨーロッパ風の綺麗な町のようだ。
丘を下ったところに、馬車と護衛の一団が控えていて、レンとエリコは馬車へと案内されていた。
「さすがにホロの中はちょっと無理だな。仕方がない、歩くか」
「馬車のホロの上に乗ろうよ」
「え? 俺たちの体重に耐えられるか?」
「多分、私たちに体重はないと思うのよ」
その意見にはすぐには賛成できなかった。今まで歩いてきたが、いつもと同じ体重感覚だったからだ。だが、ふわりと乗れた。
「なあ、俺たち、飛べるんじゃないか?」
「うん、そんな気がする」
人間だった頃の感覚が抜けなくて、人間らしい行動をしていたのだが、自分が幽霊だと思って、色々と試してみると、飛んだり、すり抜けたり出来ることに気づいた。
「憑依とか出来るのかな?」
早速、その辺にいた兵士と体を重ねようとしたのだが、精神体らしきものがあり、同化出来なかった。当たり前だが、出来ないこともあることに気づかされた。
「なあ、タツノさん、俺たちだけ特別ってうまい話はないと考えた方がいいかもしれないな」
「さっき、無敵って喜んでたくせに」
「うん、反省する。他にもいるかもしれないので、そのときにやられないように何が出来るか、そして、やられないようにどう鍛えて行くかを真剣に考えないと、二人ともやられちゃうかもな」
「そうね。私も少し自分の力を気づかないうちに過信していたわ。あなたが裏切るかもしれないから、負けないように鍛えないとね」
そういって、タツノさんは妖艶な笑みを浮かべた。
しかし、さすがは勇者と聖女だ。レンもエリコも戦いなんて初めてだろうから、へっぴり腰で格好悪いが、強烈なエネルギー波がしこたま飛び出て来て、魔物がぐちゃぐちゃになって気持ち悪いぐらいオーバーキルしている。
ちなみに、魔物も人もエネルギー波も、すべて俺とタツノさんを通り抜けて行く。試しに魔物を殴ってみて驚いた。力一杯殴ると、魔物の内臓を直接殴ってしまうようで、心臓を殴ると即死してしまう。さっきの召喚のとき、おじさんの肩にそっとトントンした程度で本当によかった。危うく殺人犯になるところだった。
「なあ、タツノさん、俺たちってひょっとして無敵なんじゃないか?」
「だからどうだっていうのよ。人と交われないんじゃ、意味ないじゃない」
はあ、ごもっともですが、「無敵」の響きにロマンを感じないとは、いくら美人でも女は悲しいねえ。
タツノさんはずっと不機嫌だが、俺はだんだんと面白くなって来ていた。
しかし、こいつら、よくこんな暗い竹藪の中をズンズンと前に突き進んでいくな。と思っていたのだが、どうも写真のネガのような風景に見えるのは、俺とタツノさんだけのようだ。
竹藪を抜けた先は広大な陸地が開けていた。俺には赤黒い大地にしか見えないが、エリコには綺麗な大地に見えるようだ。感動の言葉を発し、うっとりとした目で景色を見ている。俺はそんな表情に違和感を感じた。
「レンとかエリコは新しい世界に来て不安とかないのか? 何でこんなに手放しで喜べるんだ?」
「何だか酔っ払っているときのレンやエリコの感じに似ているのよ」
タツノさんもおかしいと思っているようだった。
緩やかな丘を越えると、城壁に囲まれた城下町が見えて来た。かなり大きな町だ。俺たちには赤黒い不気味な町にしか見えないが、エリコがはしゃいでいる。中世ヨーロッパ風の綺麗な町のようだ。
丘を下ったところに、馬車と護衛の一団が控えていて、レンとエリコは馬車へと案内されていた。
「さすがにホロの中はちょっと無理だな。仕方がない、歩くか」
「馬車のホロの上に乗ろうよ」
「え? 俺たちの体重に耐えられるか?」
「多分、私たちに体重はないと思うのよ」
その意見にはすぐには賛成できなかった。今まで歩いてきたが、いつもと同じ体重感覚だったからだ。だが、ふわりと乗れた。
「なあ、俺たち、飛べるんじゃないか?」
「うん、そんな気がする」
人間だった頃の感覚が抜けなくて、人間らしい行動をしていたのだが、自分が幽霊だと思って、色々と試してみると、飛んだり、すり抜けたり出来ることに気づいた。
「憑依とか出来るのかな?」
早速、その辺にいた兵士と体を重ねようとしたのだが、精神体らしきものがあり、同化出来なかった。当たり前だが、出来ないこともあることに気づかされた。
「なあ、タツノさん、俺たちだけ特別ってうまい話はないと考えた方がいいかもしれないな」
「さっき、無敵って喜んでたくせに」
「うん、反省する。他にもいるかもしれないので、そのときにやられないように何が出来るか、そして、やられないようにどう鍛えて行くかを真剣に考えないと、二人ともやられちゃうかもな」
「そうね。私も少し自分の力を気づかないうちに過信していたわ。あなたが裏切るかもしれないから、負けないように鍛えないとね」
そういって、タツノさんは妖艶な笑みを浮かべた。
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