ほの明るいグレーに融ける

さほり

文字の大きさ
上 下
43 / 52
月曜日の夜

8.

しおりを挟む
「…… うん、実はびっくりした。和臣ってこういうとこあるんだなって。でもなんか、綾人オレって大事にされてたんだなって思って、ちょっとうれしかった。」

綾人はそう言って微笑んだ。

「あ…… っ」

綾人の中に入ったままの、半分萎えていた性器に張りが戻る。

「ちょ…… っと…… 」

「もう、動いてもいいだろ?話しながら、ゆっくりしよう。」

「でも…… あっ…… やだ、これ……っ。話、できないよ。顔見え…… ないし…… っ」

「顔見ながら、したい?…… じゃ、電気、つける?」

「や…… っ、違…… っんん、あ…… っ」

後ろから手を伸ばして触れると、綾人のものも再び固く、熱くなっていた。

「…… いいね。」

耳元で低くそう言うと、綾人の身体がぶるっと震えた。
うなじにキスをしながら、後ろからゆっくりと揺する。その動きに連動して、ん、は、あ、と綾人は短く息を吐いた。

綾人の痩せた背中には、肩甲骨が浮いていた。その間には赤い小さな跡がある。腕を回して胸に触ると、とがった乳首の隣にあるもうひとつの跡に指が触れた。綾人の身体に3つある、小さな円いケロイド。一緒に暮らしていたときにはなかったものだ。
この身体は、綾人のもの。それならばこの跡は、事故にあったときの実際の綾人の身体にもあるものなのだろうか。

「これ、どうしたの?」

腰骨の跡に軽く触れながら訊くと、綾人の中が、一瞬ぎゅっと引き締まった。

「それは…… あんまり訊かないで…… 」

小さな低い声で、綾人はつぶやいた。無意識なのか、震える手で首をさすっている。
その反応だけで、和臣には、そのケロイドがどうしてできたのかがわかってしまった。強い怒りと悲しみがこみ上げて、胸がふさぐような思いだった。

和臣は綾人の肩を引いて振り向かせると、貪るようにキスをした。

「ん、んぁ…… っ、ふ、ん、んう…… んっ」

柔らかい唇の間から、綾人の甘い声が漏れる。
唇を離すと、透明な唾液が糸を引いて綾人の顎に垂れた。

「和臣、お願いきいてくれる…… ?」

ゆっくりと潤んだ目を開きながら、綾人がそう訊いた。

「…… 何?」

綾人は思いつめたような顔で和臣を見つめると、無言で身体を引いて後孔の性器を抜いた。

「んん…… っ」

「え、なんで…… ?」

和臣が口を開くと、綾人はそれを掌で制止した。不安げな目をそらし、言いにくそうに一度結んでから、綾人はその口唇から弱く言葉を紡いだ。

「…… つけないで、いれて…… 」

小さな、聞き取りにくい声だった。

「え……?」

「だから…… つけないで、挿れて、ほしい…… 。そ、それで、最後は、な…… 中で、出して…… 」

和臣は、自分が何かを聞き間違えたのかと思った。何をどう聞き間違えたら、こう聞こえるだろう。
ほんの束の間、そう考えた。

でもそのは、綾人を傷つけたらしい。

「…… ごめん。やっぱり、厭だよね…… そんなの、汚い、よね…… 」

綾人は震える声でそう言うと、するりと和臣の身体から離れた。

「ごめん、忘れて。」

俯いて布団をはがすと、ベッドから下りようとする。
和臣が慌てて後ろから抱き寄せると、綾人の目に溜まっていた涙がシーツの上にぽたりと落ちた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

冴えない大学生はイケメン会社役員に溺愛される

BL / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:4,262

隠れΩの俺ですが、執着αに絆されそうです

BL / 完結 24h.ポイント:227pt お気に入り:2,021

買った天使に手が出せない

BL / 完結 24h.ポイント:163pt お気に入り:4,486

出来損ないの次男は冷酷公爵様に溺愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:788pt お気に入り:7,434

聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:31,923pt お気に入り:11,548

悪役令息に転生したビッチは戦場の天使と呼ばれています。

BL / 完結 24h.ポイント:2,680pt お気に入り:5,749

超好みな奴隷を買ったがこんな過保護とは聞いてない

BL / 完結 24h.ポイント:688pt お気に入り:4,003

番から逃げる事にしました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:29,040pt お気に入り:2,282

落ちこぼれ催眠術師は冷酷将軍の妄愛に堕とされる

BL / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:2,870

処理中です...