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「ふ…ん!トルンフィス王国なんて取るに足りない弱小国ではありませんの!その国の公爵家がなんだって言うんです?公爵家であったらば神聖な神託の間を騒がせていいとでもお思い?」

 どこまででも上から目線な聖女カナールであった…


 この自信…どこからくるのか不思議すぎる……


「騒がせてはいませんよ?出来ることをしているだけで、聖女カナール様も同じでしょう?」

 聖女はそれぞれできることをするものだろうから。

「まぁ!なんて傲慢な!私に出来ないからって馬鹿にしているのですね?アールスト様!こんな方の側に居られたら貴方様も穢れてしまいますわ!」

 ギュッとアールストの右腕に抱きついて聖女カナールはそう言い切った。


 なんでぇ?どこが傲慢?出来ることをやるってここの聖女達の当たり前な決まり事じゃないの?


 神託の間で聞いて来た他の聖女達の常識もとでも言える様なことが聖女カナールには通じない…

「聖女カナール様…」

「なんですの?アールスト様?」

 ニッコリとアールストの顔を見上げながら微笑む様は意外にも良いところのお嬢様という感じしか受けない。

「どうかお離し下さいませ。私はまだ任務中ですから。」

 それをニッコリとそのまた更に上を行く輝く様な笑顔でアールストは綺麗にかわしていく。

「んもう!いつも釣れないのですから!では、勤務外の夜ではどうです?一緒に星でも見に行きませんこと?」


 め、めげないのね…


 聖女となるには打たれてもまだ起き上がるそんな強靭な精神が必要なのかも知れない…でも、神託の間にいた他の聖女達ってもっと、こうお淑やかというか、慎ましいというか…

 ここにいる聖女カナールとは真逆な感じがしたものなのだが。

「ところで聖女ルーチェリア様とアールスト殿はどこに行かれるので?」

 成り行きを見守っていたであろう聖女カナールの護衛騎士テロットがここで初めて口を出した。

「はい!中央神殿の端を見に行くのです!」

 ここだとばかりにルーチェリアも声を上げる。ここに来てから中央神殿のあちこちをアールストと共に見て回っている。今日は1番近い神殿外れまで歩いて行こうとしていたのだった。

「端…?………そんな物好きがいたなんて………」

 聖女カナールはまるで虫を見るような目でルーチェリアを見つめて来た。

「物事の始まりと終わりを見る事は大事なことですよ、聖女カナール様。ですから聖女ルーチェリア様がまだこの中央神殿に慣れておられないようならば見て頂いてもらった方が良いのです。さ、聖女カナール様も本日の課題を済ませにまいりましょう。」

 騎士テロットは聖女カナールに有無を言わせず、流石はあの人聖女カナールの護衛騎士なのだと唸らせるほどの見事な手捌きで聖女カナールをアールストから引き剥がすとあっという間に神託の間の方に連れて行ってしまった。





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