上 下
4 / 5

黒幕

しおりを挟む
近所の人も、いつも買い物している店の店員さんも
にっくき相手、イーリン・クライスを調べてくれた。

「皆んな、暇なのかしら?仕事があるのに。けどあれなら調査の仕事もできそうよね。」

弟がすごい顔で見てくる。

「何?」
「いや、姉さんって凄い…なって。」

“褒めていない”とはわかる言葉だったけど、戸惑って絞り出したようなので
お咎めなし。

貧乏でも人の出入りは多い。
どっかから帰ってきたとか、その土産話を聞きながら食事にするって。

「男爵家って、よくわからないルールがあるわ。
“ふちっこ”でも貴族、かな」

「ププっ」
『腐ってないんだ?』弟が何故か笑っていた。


今はパーティに向け
家族総出で、いえ近所にも協力してもらって盛大な仕込みをしている。

証拠集めとお願いに走り回った。

そして…思い出す
「あの突撃訪問には、冷や汗ものだったわ。」



「婚約者の仇を取りたいからね!」
「がんばれー」

婚約者セドリックは、慣れた様子で家の書類仕事してくれていた。

けど
「本家に挨拶しに行ってもらうわよ?」
母から聞いた瞬間。…折れた足でも速かったわ。


『お会いしたい』と母が手紙を出し、その返事があったそうで。
年始の挨拶には、父母の後ろにいたけど。今回は私が直接お願いするのが筋だ。


ちょっとお会いするまでの記憶が飛んでいる。

『キラキラしいこれが貴族というもの!』
本家、当主様は若い。5つ上で、ご婚約はまだだ。

セドリックもカッチンこっちんで、弟に支えられていた。

『失礼のないように!アイナが暴走しませんように。噛みませんように!』

『わあ。やっぱ本家って綺麗だなあ』


「楽にしてくれ、緊張しているって顔に書いてある」

(本家でもある言い回しなのね。)

『弟に似た、無表情フェイスね。』

「こほっ」
咳をした侯爵様へお願いの経緯をはなした。

「パーティーには出るから構わない。」
「1人だもんな?」

仲良いなあ。
「良くない。」
「仲良し、仲良し。」


『親しみやすい従者様ねえ。ナンパそう。』

「クッ(笑)」

侯爵様、喉の調子が悪いのかしら?
後でジンジャー漬けを届けよう。


「分家の喧嘩に出るってわけだな。」
いつの間にか、従者様とセドリックが仲良くなっている。

こっちも…

「家を出るらしいな」
「子爵家に婿入りです。」

弟とは話している2人は雰囲気が似ていて兄弟みたい。

「黒い笑顔で怖い坊ちゃん!」


従者様。それが弟もですか?賛成です。

「クッ…弟は羨ましいな。」
『弟は差し上げられませんが、懐いているので仲良くしてあげてください。』



「今後ともよろしく。」

侯爵様と私は堅い握手をする。身分を超えての戦友だ。

舞台は整った。
私はニヤリと笑みを浮かべる。

「首だけで済むのかしら?」

色々失ってもらおう。

「おお。エスコーツ家だわ。」


お母様に似たかしら?
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

姉は暴君

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:76

妄想アイガール

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:221pt お気に入り:0

お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:255pt お気に入り:373

未亡人クローディアが夫を亡くした理由

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:216

貧乏令嬢、山菜取りのさなかに美少年を拾う

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:669

処理中です...