62 / 98
第3章
36.……… ※エクレアの希望によりモザイク処理されてます
しおりを挟む
「はぁ……はぁ……もう……無理」
気力の限界が来た。
『悪魔化』を維持することもできず、素の状態に戻ったエクレアはローインの隣でばったりとあおむけになって転がる。
生命力の譲歩は技術的な意味でも不可能となるも……
その必要性はもうなくなっていたようだ。
倒れたまま顔だけをローインに向けると、彼は動いていた。呼吸のため胸を上下に動かしていた。
右手首を掴めば脈打っているので心臓の鼓動も再開されている。
冷たくなっていた肌も温かみを取り戻して張りがでている。
怪我こそ癒しきれてないが、命を脅かす要素はほぼ全て排除できた。
死の運命から逃れる事ができたのだ。
それをみてほっとする。
「ありがとう……本当にありがとう。これも“キャロット”のおか……げ……?」
エクレアは“キャロットに”……“深淵”の中からサポートしてもらっていた“キャロット”にお礼を言おうとしたところで、あるものに気付く。
「……ねぇ。なんか“深淵”にゴブリンとはまた別の乾燥ワカメが転がってるけどそれ誰なの?」
少なくとも先ほど訪れた時にはいなかった。
全く覚えはなかったが、“キャロット”曰くこれはエクレアのやらかしの一つらしい。
詳しく聞けば……
「………治療中に虚空から真っ黒なローブと大鎌携えたいかにもな死神がお迎えに来て、それを私が『邪魔するな』っと八つ当たり気味に有無言わさずカウンターで殴り飛ばして“深淵”に飲み込んだ???」
一部始終を聞いてサーっと青ざめるエクレア。
さらに聞けばほかにも治療中に無意識レベルでいろいろやらかしてたようだ。
「もしかして私、とんでもない事やらかした?」
そのいろいろも問題あるが、一番の問題は死神捕獲から搾り取り案件だろう。
少なくともお迎え……おそらくローインを迎えに来た死神をぶっ飛ばしただけならまだしも、捕獲してゴブリンと同様に生命力を搾り取ったのだ。
エクレア本人やダンジョンからぶんどった分では到底賄えなかった生命力を死神から徴収してローインに分け与えたのだ。
考えるまでもなく、とんでもないやらかしだ。
男の時同様に、これは死神達に喧嘩……いや、公務執行を妨害したに等しい行為だ。
“奴”より先に死神から命を狙われる羽目になる。
最早、絶望な未来待ったなしっと思いきや……
……
…………
………………
「あーそう……その死神、アンコさんは3年前の師匠のお迎えの際に顔見知りとなった仲で、今回の件はすでに話ついてるんだ。生命力も自ら進んで提供してもらったから心配するな……っと」
闇の玉なので表情諸々は見えないながらも、口調からしてとんでもなく良い笑顔でサムズアップしてるであろう“キャロット”
本当に話がついてるのか不明であるが、エクレアのようなただの人間?では死神と交渉なんてまず不可能。
“キャロット”みたく人外な存在でなければ相手にできない事なのは確定的に明らか。
よって精神衛生上、死神側から何か言われたら定番のアレ。
『悪魔がやれって言ったんです』
上記台詞でもって全責任を正真正銘の悪魔に押し付ける算段にした。
「とにかく、最後の仕上げをしないと」
エクレアはゆっくりと身を起こす。
ローインは息こそ吹き返すもまだ目覚めてない。
身体だけが生きている、いわば植物人間状態だ。
ここから先はもうローインの意思次第。生きる意志さえ取り戻してくれれば蘇生が完了となるわけだが……
「さて、どうしようか」
エクレアは考える。ギリギリの生命力しか残してない事もあって、意識を保つのも難しい頭で考える。
後はほんの一押し、その一押しがあれば助けられるのだ。
その一押しをどうするかを考え……
「やっぱりあれしかないかな」
くすりと笑う。
それこそ小悪魔のように、とってもいい悪戯を思いついた子供のような無邪気な笑みを浮かべながらそっとローインの耳に口をもっていき……
「………」
ぼそりと何かつぶやいた。
なお、この時何をつぶやいたかは……
「うふふ………な・い・しょ」
っとまぁ、エクレア自身が隠したかった事もあってか、読者の耳というか目には入らないようモザイクがかかったのである。
でもって肝心の効果といえば……
「な、なんだってー!」
ばつぐんだった。
がばりと起き上がった。
ローインは目覚めた。
エクレアの言葉は三途の川の畔に居たローインを現世にまで引き戻す事に成功した。
「あれ、ここは……?」
混乱中で自分の今の現状がわからずキョロキョロしはじめるローイン……
エクレアはその姿をみて、つい泣き出しそうになる。
泣き出しそうになりながらも、第一声を何にするか考え始める。
言いたい事ややりたい事はいろいろとあった。
“私を残して勝手に死ぬなんて許さない!!”
開口一番で顔面をぐーぱんでぶん殴ったりとか……
“よかった……生きててくれて本当によかった……”
胸に飛び込んで泣きじゃくるとか……
本当にやりたい事がいろいろ思い浮かぶも……
ぐらり……
(あっ、だめ……ほっとしたとたん意識が……)
すでに限界だったエクレアは企みを実行に移すどころか言葉を発する力も残ってなかったようだ。
だが、このまま何もせず気絶はプライドが許さない。
せっかくのシチュエーションを台無しにするような気絶なんて、許されざる行為だ。
なのでエクレアは最後の力を振り絞るように……
ローインに抱き着き、寄りかかるようにして……
その意識を消失させた。
気力の限界が来た。
『悪魔化』を維持することもできず、素の状態に戻ったエクレアはローインの隣でばったりとあおむけになって転がる。
生命力の譲歩は技術的な意味でも不可能となるも……
その必要性はもうなくなっていたようだ。
倒れたまま顔だけをローインに向けると、彼は動いていた。呼吸のため胸を上下に動かしていた。
右手首を掴めば脈打っているので心臓の鼓動も再開されている。
冷たくなっていた肌も温かみを取り戻して張りがでている。
怪我こそ癒しきれてないが、命を脅かす要素はほぼ全て排除できた。
死の運命から逃れる事ができたのだ。
それをみてほっとする。
「ありがとう……本当にありがとう。これも“キャロット”のおか……げ……?」
エクレアは“キャロットに”……“深淵”の中からサポートしてもらっていた“キャロット”にお礼を言おうとしたところで、あるものに気付く。
「……ねぇ。なんか“深淵”にゴブリンとはまた別の乾燥ワカメが転がってるけどそれ誰なの?」
少なくとも先ほど訪れた時にはいなかった。
全く覚えはなかったが、“キャロット”曰くこれはエクレアのやらかしの一つらしい。
詳しく聞けば……
「………治療中に虚空から真っ黒なローブと大鎌携えたいかにもな死神がお迎えに来て、それを私が『邪魔するな』っと八つ当たり気味に有無言わさずカウンターで殴り飛ばして“深淵”に飲み込んだ???」
一部始終を聞いてサーっと青ざめるエクレア。
さらに聞けばほかにも治療中に無意識レベルでいろいろやらかしてたようだ。
「もしかして私、とんでもない事やらかした?」
そのいろいろも問題あるが、一番の問題は死神捕獲から搾り取り案件だろう。
少なくともお迎え……おそらくローインを迎えに来た死神をぶっ飛ばしただけならまだしも、捕獲してゴブリンと同様に生命力を搾り取ったのだ。
エクレア本人やダンジョンからぶんどった分では到底賄えなかった生命力を死神から徴収してローインに分け与えたのだ。
考えるまでもなく、とんでもないやらかしだ。
男の時同様に、これは死神達に喧嘩……いや、公務執行を妨害したに等しい行為だ。
“奴”より先に死神から命を狙われる羽目になる。
最早、絶望な未来待ったなしっと思いきや……
……
…………
………………
「あーそう……その死神、アンコさんは3年前の師匠のお迎えの際に顔見知りとなった仲で、今回の件はすでに話ついてるんだ。生命力も自ら進んで提供してもらったから心配するな……っと」
闇の玉なので表情諸々は見えないながらも、口調からしてとんでもなく良い笑顔でサムズアップしてるであろう“キャロット”
本当に話がついてるのか不明であるが、エクレアのようなただの人間?では死神と交渉なんてまず不可能。
“キャロット”みたく人外な存在でなければ相手にできない事なのは確定的に明らか。
よって精神衛生上、死神側から何か言われたら定番のアレ。
『悪魔がやれって言ったんです』
上記台詞でもって全責任を正真正銘の悪魔に押し付ける算段にした。
「とにかく、最後の仕上げをしないと」
エクレアはゆっくりと身を起こす。
ローインは息こそ吹き返すもまだ目覚めてない。
身体だけが生きている、いわば植物人間状態だ。
ここから先はもうローインの意思次第。生きる意志さえ取り戻してくれれば蘇生が完了となるわけだが……
「さて、どうしようか」
エクレアは考える。ギリギリの生命力しか残してない事もあって、意識を保つのも難しい頭で考える。
後はほんの一押し、その一押しがあれば助けられるのだ。
その一押しをどうするかを考え……
「やっぱりあれしかないかな」
くすりと笑う。
それこそ小悪魔のように、とってもいい悪戯を思いついた子供のような無邪気な笑みを浮かべながらそっとローインの耳に口をもっていき……
「………」
ぼそりと何かつぶやいた。
なお、この時何をつぶやいたかは……
「うふふ………な・い・しょ」
っとまぁ、エクレア自身が隠したかった事もあってか、読者の耳というか目には入らないようモザイクがかかったのである。
でもって肝心の効果といえば……
「な、なんだってー!」
ばつぐんだった。
がばりと起き上がった。
ローインは目覚めた。
エクレアの言葉は三途の川の畔に居たローインを現世にまで引き戻す事に成功した。
「あれ、ここは……?」
混乱中で自分の今の現状がわからずキョロキョロしはじめるローイン……
エクレアはその姿をみて、つい泣き出しそうになる。
泣き出しそうになりながらも、第一声を何にするか考え始める。
言いたい事ややりたい事はいろいろとあった。
“私を残して勝手に死ぬなんて許さない!!”
開口一番で顔面をぐーぱんでぶん殴ったりとか……
“よかった……生きててくれて本当によかった……”
胸に飛び込んで泣きじゃくるとか……
本当にやりたい事がいろいろ思い浮かぶも……
ぐらり……
(あっ、だめ……ほっとしたとたん意識が……)
すでに限界だったエクレアは企みを実行に移すどころか言葉を発する力も残ってなかったようだ。
だが、このまま何もせず気絶はプライドが許さない。
せっかくのシチュエーションを台無しにするような気絶なんて、許されざる行為だ。
なのでエクレアは最後の力を振り絞るように……
ローインに抱き着き、寄りかかるようにして……
その意識を消失させた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
婚約破棄された瞬間、隠していた本性が暴走しました〜悪女の逆襲〜
タマ マコト
恋愛
白崎財閥の令嬢・白崎莉桜は、幼いころから完璧であることを強いられた女であった。
父の期待、社会の視線、形式ばかりの愛。
彼女に許されたのは「美しく笑うこと」だけ。
婚約者の朝霧悠真だけが、唯一、心の救いだと信じていた。
だが、華やかな夜会の中、彼は冷ややかに告げる。
「俺は莉桜ではなく、妹の真白を愛している」
その瞬間、莉桜の中の何かが崩れた。
誰のためにも微笑まない女——“悪女”の本性が、静かに目を覚ます。
完璧な令嬢の仮面を捨て、社会に牙を剥く莉桜。
彼女はまだ知らない。
その怒りが、やがて巨大な運命の扉を開くことを——。
逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)
ラララキヲ
恋愛
平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。
そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。
メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。
しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。
そして学園の卒業式。
第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。
そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……──
※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑)
※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。
※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません)
※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる