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第4章
23.今日はもう一日ベットでごろごろしたい(side:エクレア)
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昨日は疲れた……
とてつもなく疲れた………
とことんまで疲れた………
理由は様々で一々説明したらキリがない。
よって『疲れた一日』の一言で済ます事にしてエクレアは思う。
「あー今日はもう一日ベットでごろごろしたい。惰眠貪りたい。不貞寝したい」
思うというか口にするも、生まれてから今まで骨の髄まで染みついた『貧乏暇なし』体質には抗えない。加えて今日は今日でやることあるから身体は勝手に動いていた。
かぼちゃ一枚の恰好で身支度を整えていた。
「一応言っておくけど、私は別に裸で寝たり、うろうろするような趣味ないからね。これは傷の手当をするためだから」
そう読者に突っ込み入れながら、エクレアは改めて鏡越しで自分の身体をみる。
少し前はもう女の子の身体じゃないってぐらいの傷を負っていたが、今は大分治っていた。
多少傷跡が残る程度で目立つほどではない。
疵痕とすれば3年前の傷。バジリスクにかまれた跡の方がよほど目立つぐらいだろう。
エクレアはその首筋の傷跡をなぞるようにして触れながら、当時の事を思い出す。
師匠であるマイの事を思い出す。
「師匠は全てを捧げて私を救ったけど……それは文字通りの全てだったなんてね」
あの時は死にかけだったのでエクレアはほとんど覚えてない。
“キャロット”が言うには、エクレアが死に瀕した際に無意識化で封印していた“深淵”にアクセスして召喚。自身に宿らせてそこら一帯から生命力を奪い取ろうとしてたらしい。
間一髪で“キャロット”が駆けつけて制御してくれなかったら周辺一帯を草木一本生えない死の大地に変えるとこだったようで、そういう意味では“キャロット”のおかげで最悪は避けれたわけだ。
ただ、最悪は免れたといってもエクレアの死を回避させるにはどこからか生命力を補充しなければいけなかった。
例え『霊薬』を飲もうとも、解毒や治療に回すだけの力が残ってなければ意味がない。
エクレアはもう助からない……
現場に立ち会った冒険者、グランの判断は正しかった。
スージーから使う時は躊躇するなっという教えがあっても、非情にもエクレアを切り捨てた判断は正しかったともいえる。
だから、あの時マイは差し出したのだ。
エクレアの中に入り込んで“深淵”制御中だった“キャロット”に悪魔の契約を交わし、自分の生命力をエクレアに分け与えた。
その結果、エクレアは『霊薬』と前世が持っていた毒への耐性……無効化ではなく、バジリスク程度の毒なら平然とできる超耐性を呼び起こす事で一命を取り留めるのに成功するもマイ本人は助からなかった。
自分を治療するために使われるはずだった生命力までエクレアに分け与えたのだから当然ともいえよう。
これが3年前の真相であったわけだ。
「師匠は今の今までずっと私の中に居て見守ってくれていたんだよね」
中にいるといっても、魂そのものはすでに冥府へと旅立っている。
“キャロット”が死神……アンコとかいう名前の死神に連れられて行くのを態々見送ったから確実だ。
その際に死神アンコと縁が出来たようで、以後は“深淵”内で度々会ってはお茶……アトリエに保管してる食料を勝手に拝借……をしつつ世間話?する仲になってたそうだ。
これでアトリエ内で度々食料が消える原因は判明したわけだが、まぁ死神と良好な仲となれたのだ。
1週間前のローインの蘇生に関してのやらかしも、ある意味被害者であるアンコからの口添えもあって冥府側は『あまり調子ぶっこいてると首を物理的にはねる』っという忠告程度で済ませてもらえてるから必要経費と考えれば十分おつりがくる。
それに……
「調子ぶっこくな。それに関しては同意できるかな」
エクレアはそうぼやきつつ一度目を閉ざし、脳内でチャンネルをまわすかのように切り替えて再度開く。そうすることで現れる瞳……
『魔眼』を開放させた。
『魔眼』は魔に属する者が持つ固有能力であり、効果も様々。
バジリスクは対象を恐怖で縛る“威圧”で男は吸血鬼らしく“魅了”だ。
対してエクレアの『魔眼』は対象を狂わせる“狂気”の付与。名づけるとしたら『“狂乱”の魔眼』だろう……
……
…………
………………
「どこぞの月の兎みたく、瞳は紅くなったりはしないんだ」
まぁなったらなったでいろいろやばいから、この仕様は割とありがたいが……それはさておいて、この『魔眼』は3年前のあの日。“深淵”や『毒耐性』といった前世の力を内に宿したことによる副作用的な要素で所持したようだ。
当時はそんな自覚なかったものの、度々無意識で発動させてたらしい。
それが今回“キャロット”と契約した事で『魔人化』と同じく自分の意思一つで切り替え可能となった。
なったが……
「この『魔眼』で付与する“狂気”って“深淵”に直結されてるだけあって耐性貫通力が凄いもんね。今の一部だけの封印解除させた段階でさえボス耐性すらぶち抜いて付与させるぐらい強力だし、封印を全て解けば『神』という『ラスボス』すら付与可能だなんてどんだけぶっ飛んでんだか……それに加えて私には『乙女ゲームヒロイン補正』なんてものがあるせいか、補正と“狂気”が合わさる事でバグに近い現象が起きるから気軽に使っちゃだめな部類というか、問題ありすぎて使いどころがあんまりないというか」
思い出すのは昨日のローインの欲望垂れ流しな暴走だ。
あれは“深淵”を表に出す際に錯乱してSAN値直葬されないよう、あらかじめ『魔眼』で軽く“狂気”を付与させていたからこそ起きたものであった。
軽く……本当に軽く狂わしただけであれだ。
可能性として“深淵”を直視した事で減るはずのSAN値を理性に代用させたのかもしれないが、どちらにしろ“狂気”を付与させる事もあって付与者への行動の予測ができない。
そして軽くではなく全力の付与は……
対象を魂レベルで狂わしてしまうらしい。
バグってる力なだけに、対象を転生に影響が出てしまうほどのレベルで狂わせてしまうのだ。魂や転生の管理をする冥府が釘をぶっ刺してくるのは当然の処置ともいえる。
そんな感じで“狂気”付与の『魔眼』は『乙女ゲームヒロイン補正』と合わさった事でラスボスにすら通用してしまうチートを超えたバグとなるも、使用者本人の思惑を外れた『混沌』ともいうべき無秩序へと導いてしまうせいで使い勝手が非情に悪い代物。戦術でも戦略でも組み込むには難しいという困りすぎる代物であった。
「はぁ……こんな使い勝手の悪い力なのに、私の中の前世と思わしき“私”がどんどん使えっと促して来てるし、私の前世って相当な愉快犯だって思わざるを得ないよねぇ」
『魔眼』を解除し、傷の手当を終えたエクレアは服を着こみながらぼんやりと考えはじめた。
とてつもなく疲れた………
とことんまで疲れた………
理由は様々で一々説明したらキリがない。
よって『疲れた一日』の一言で済ます事にしてエクレアは思う。
「あー今日はもう一日ベットでごろごろしたい。惰眠貪りたい。不貞寝したい」
思うというか口にするも、生まれてから今まで骨の髄まで染みついた『貧乏暇なし』体質には抗えない。加えて今日は今日でやることあるから身体は勝手に動いていた。
かぼちゃ一枚の恰好で身支度を整えていた。
「一応言っておくけど、私は別に裸で寝たり、うろうろするような趣味ないからね。これは傷の手当をするためだから」
そう読者に突っ込み入れながら、エクレアは改めて鏡越しで自分の身体をみる。
少し前はもう女の子の身体じゃないってぐらいの傷を負っていたが、今は大分治っていた。
多少傷跡が残る程度で目立つほどではない。
疵痕とすれば3年前の傷。バジリスクにかまれた跡の方がよほど目立つぐらいだろう。
エクレアはその首筋の傷跡をなぞるようにして触れながら、当時の事を思い出す。
師匠であるマイの事を思い出す。
「師匠は全てを捧げて私を救ったけど……それは文字通りの全てだったなんてね」
あの時は死にかけだったのでエクレアはほとんど覚えてない。
“キャロット”が言うには、エクレアが死に瀕した際に無意識化で封印していた“深淵”にアクセスして召喚。自身に宿らせてそこら一帯から生命力を奪い取ろうとしてたらしい。
間一髪で“キャロット”が駆けつけて制御してくれなかったら周辺一帯を草木一本生えない死の大地に変えるとこだったようで、そういう意味では“キャロット”のおかげで最悪は避けれたわけだ。
ただ、最悪は免れたといってもエクレアの死を回避させるにはどこからか生命力を補充しなければいけなかった。
例え『霊薬』を飲もうとも、解毒や治療に回すだけの力が残ってなければ意味がない。
エクレアはもう助からない……
現場に立ち会った冒険者、グランの判断は正しかった。
スージーから使う時は躊躇するなっという教えがあっても、非情にもエクレアを切り捨てた判断は正しかったともいえる。
だから、あの時マイは差し出したのだ。
エクレアの中に入り込んで“深淵”制御中だった“キャロット”に悪魔の契約を交わし、自分の生命力をエクレアに分け与えた。
その結果、エクレアは『霊薬』と前世が持っていた毒への耐性……無効化ではなく、バジリスク程度の毒なら平然とできる超耐性を呼び起こす事で一命を取り留めるのに成功するもマイ本人は助からなかった。
自分を治療するために使われるはずだった生命力までエクレアに分け与えたのだから当然ともいえよう。
これが3年前の真相であったわけだ。
「師匠は今の今までずっと私の中に居て見守ってくれていたんだよね」
中にいるといっても、魂そのものはすでに冥府へと旅立っている。
“キャロット”が死神……アンコとかいう名前の死神に連れられて行くのを態々見送ったから確実だ。
その際に死神アンコと縁が出来たようで、以後は“深淵”内で度々会ってはお茶……アトリエに保管してる食料を勝手に拝借……をしつつ世間話?する仲になってたそうだ。
これでアトリエ内で度々食料が消える原因は判明したわけだが、まぁ死神と良好な仲となれたのだ。
1週間前のローインの蘇生に関してのやらかしも、ある意味被害者であるアンコからの口添えもあって冥府側は『あまり調子ぶっこいてると首を物理的にはねる』っという忠告程度で済ませてもらえてるから必要経費と考えれば十分おつりがくる。
それに……
「調子ぶっこくな。それに関しては同意できるかな」
エクレアはそうぼやきつつ一度目を閉ざし、脳内でチャンネルをまわすかのように切り替えて再度開く。そうすることで現れる瞳……
『魔眼』を開放させた。
『魔眼』は魔に属する者が持つ固有能力であり、効果も様々。
バジリスクは対象を恐怖で縛る“威圧”で男は吸血鬼らしく“魅了”だ。
対してエクレアの『魔眼』は対象を狂わせる“狂気”の付与。名づけるとしたら『“狂乱”の魔眼』だろう……
……
…………
………………
「どこぞの月の兎みたく、瞳は紅くなったりはしないんだ」
まぁなったらなったでいろいろやばいから、この仕様は割とありがたいが……それはさておいて、この『魔眼』は3年前のあの日。“深淵”や『毒耐性』といった前世の力を内に宿したことによる副作用的な要素で所持したようだ。
当時はそんな自覚なかったものの、度々無意識で発動させてたらしい。
それが今回“キャロット”と契約した事で『魔人化』と同じく自分の意思一つで切り替え可能となった。
なったが……
「この『魔眼』で付与する“狂気”って“深淵”に直結されてるだけあって耐性貫通力が凄いもんね。今の一部だけの封印解除させた段階でさえボス耐性すらぶち抜いて付与させるぐらい強力だし、封印を全て解けば『神』という『ラスボス』すら付与可能だなんてどんだけぶっ飛んでんだか……それに加えて私には『乙女ゲームヒロイン補正』なんてものがあるせいか、補正と“狂気”が合わさる事でバグに近い現象が起きるから気軽に使っちゃだめな部類というか、問題ありすぎて使いどころがあんまりないというか」
思い出すのは昨日のローインの欲望垂れ流しな暴走だ。
あれは“深淵”を表に出す際に錯乱してSAN値直葬されないよう、あらかじめ『魔眼』で軽く“狂気”を付与させていたからこそ起きたものであった。
軽く……本当に軽く狂わしただけであれだ。
可能性として“深淵”を直視した事で減るはずのSAN値を理性に代用させたのかもしれないが、どちらにしろ“狂気”を付与させる事もあって付与者への行動の予測ができない。
そして軽くではなく全力の付与は……
対象を魂レベルで狂わしてしまうらしい。
バグってる力なだけに、対象を転生に影響が出てしまうほどのレベルで狂わせてしまうのだ。魂や転生の管理をする冥府が釘をぶっ刺してくるのは当然の処置ともいえる。
そんな感じで“狂気”付与の『魔眼』は『乙女ゲームヒロイン補正』と合わさった事でラスボスにすら通用してしまうチートを超えたバグとなるも、使用者本人の思惑を外れた『混沌』ともいうべき無秩序へと導いてしまうせいで使い勝手が非情に悪い代物。戦術でも戦略でも組み込むには難しいという困りすぎる代物であった。
「はぁ……こんな使い勝手の悪い力なのに、私の中の前世と思わしき“私”がどんどん使えっと促して来てるし、私の前世って相当な愉快犯だって思わざるを得ないよねぇ」
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