上司と部下の恋愛事情

朔弥

文字の大きさ
3 / 85
回想

3 ※

しおりを挟む
 家に上がり込むなり、男は口づけてきた。
 マンションの入口では気のない溜め息を吐いていたのに、舌が歯列を割って入り込むと、荒々しく口腔内を貪りはじめる。互いの唾液が絡み合い、濡れた音が静かな廊下に響いた。


 ──── んうっ···はぁ···あっ···


 角度を変え何度も口づけられる度に、唇の隙間から吐息と共に悩ましげな甘い声が零れる。
 腰にまわされた手に力が込められ、強く抱き締められた。男に引き寄せられるようにグイッと躰を密着させられた為、真尋の股関は男の太腿に擦り付ける形となった。


 ──── んんっ


 びくんと躰を震わせ、唇を塞がれたまま真尋は小さく声をあげた。
 擦られる気持ち良さに、真尋は男の背に手をまわす。


 ──── 気持ちいい?真尋···


 そう聞かれ、頷きながら彼に自分の名前をいつ名乗っただろうか···と頭の片隅で考える。だが、すぐに舌を絡め取られる巧みな舌下使いに、そんな些細な疑問は消されてしまった。
 男は真尋の唇を堪能すると、抱きかかえベッドルームへ向かった。自分と似たような細身の体型かと思ったが、特に躰を鍛えている訳ではないにしても真尋はこれでも大の成人男性だ。それを軽々と持ち運んでしまうのだから、彼は普段から躰を鍛えているのだろうか。
 そんな事をぼんやりと考えている間に真尋は寝室へ運ばれ、ベッドに降ろされると男に覆いかぶされた。
 首筋に唇を落としながら、男の指はシャツのボタンを外していく。ボタンを外されたシャツの隙間から手を滑り込ませ、肌を撫で上げた。


 ──── っつ···はっ··ぁあ···


 指先が肌を這う感触は甘い痺れに似た快楽を生み出し、切ない吐息が真尋の口から零れる。


 ──── 真尋···俺の名前も呼んで···


 名前なんて聞いただろうか···と、考えていると耳元に唇が寄せられ、


 ──── 海里かいり


 と囁かれる。
 真尋はその名をゆっくりと口にした。海里は目を細め優しい笑みを浮かべると、再び真尋の唇に口づける。唇を軽く吸われ、口を開けるよう舌が唇を舐め促される。
 真尋は唇を開き、海里の口づけを深く受け入れた。
 口づけを交わす間にも海里の愛撫する指は、滑らかに肌を滑り、時々、胸の突起を掌で擦りながら優しい刺激を与えていく。


──── 優しくなんか···しなくていい···


 唇が離れる合間に真尋は海里に告げた。
 壊れてしまえばいい···。祐也への想いと一緒に躰も心も。
 それなのに、海里の触れ方は優しく真尋の躰を気遣うように終始大切に扱ってきた。まるで恋人に接するかのように···。
 その優しく包み込まれる心地良さに真尋はいつの間にか海里の背にすがっていた。



 


 よりによって上司を誘っていたなんて···と、昨夜の事を思い出した真尋は頭を抱えた。
 自分はヤケになっていたが、誘ったからといって部下である男を抱こうなんて。ましてやこの上司、仕事も出来て長身で端正な顔立ちをしていて女性に不自由した事が無いと聞く(噂だが···)。何も男を相手にしなくてもいいと思うのだが···。
 チラリと海里の寝顔を見つめる。
 何度も名前を囁かれ、甘い快楽を与えられ続けるうちに真尋の頭の中はいつの間にか祐也の影は消え、海里でいっぱいになっていた。今まで祐也の事を何度も諦めようとしても、その存在を掻き消される事などなかったのに···。
 

 ····嘘だろ


 心の中で真尋は呟いた。
 抱かれて好きになるなんて···。
 

 ベッドに眠る海里を起こさないようにそっとベッドを抜け出した真尋は、違和感の残る腰を抑え服を整えた。


 この上司は···海里はどう思いながら自分を抱いたのだろうか。
 失恋を忘れたいから抱いてくれと部下から絡まれ、仕方なく相手をしてくれたのかもしれない。
 確かめる勇気のない真尋は、静かに部屋から逃げ出した。


しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...