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掛け違う心
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会社の入っているビルの1階には珈琲ショップが店舗をかまえている。元宮海里はいつもの珈琲を注文し受け取ると、通りの見える椅子に座った。
はぁ·····
溜息を吐きながら飲む珈琲は味がしない。
昨夜は行きつけのバーで飲んでいた。そこで会社の部下に偶然会うとは思わなかったが、彼は酷く酔っていて誘うような視線を向けられた。
元々、海里の性対象は男性だった。さすがに同じ会社の奴と関係を持つつもりはなかったのだが···、あの艶然とした笑みを浮べた彼の表情から目を離す事は出来なかった。
彼に誘われるまま、幼馴染みへの想いを忘れさせて欲しいと求めてくる真尋を大切に抱いた。
あれ程求めてくる真尋が目覚めた後、ベッドから姿を消しているとは思いもしなかったが···。
「朝から何、溜め息吐いてんだ?」
背後から声をかけられ、隣に座った男に視線だけ向ける。
部署は違うが、同じ研修期間を共にした同期の本間怜司だった。彼も出社前にここで珈琲を飲むのが日課となっており、自然と同期以上の親しい間柄となった。そして、会社の中で唯一、海里が同性愛者だと知っている人間だった。
「···一夜を共にした相手に逃げられた」
「は?」
聞き返してきた怜司に、二度も恥ずかしい事を言わせるな、と視線で制する。
「いやいや···逃げられたって冗談だろ?」
男女共にモテるお前が?と信じられないといった顔を向けてくる怜司に、海里は益々嫌そうな顔をした。
「···そうだよ。何も言わずに居なくなっていた」
「で?お前はその逃げられた奴に本気になって忘れられないって?」
半ば冗談混じりに聞いた怜司だったが、海里から何も応えが返ってこないのをみて、マジか···と呟いた。
「一夜をって···まさか、その辺で知り合った奴って事か?」
「まあ···飲んでたバーで会って成り行きでそうなったが···同じ会社の·····部下だ」
怜司は飲んでいた珈琲を噴き出しそうになり、咳き込んだ。
「はあ?お前···面倒事になるから会社の人間とは付き合わないって言ってなかったか?しかも部下って···」
逃げられた相手と今から上司として顔を突き合わせるって、どんな罰ゲームだよ···と怜司は呆れた顔をしている。
「で?部下って···誰?」
「早坂真尋···」
怜司は記憶を辿るように、聞いた苗字を繰り返し口にする。不意に、ああ···あの妙に色気のある奴か、と記憶と名前が一致したようで頷いた。
「お前でも弄ばれる事があるんだな~」
軽く笑いながら怜司はそう言うが、海里には真尋がそんな人間ではない事は普段の真面目な仕事ぶりを見ていれば分かる。同僚とも円滑にコミュニケーションを図れており、話しやすい雰囲気が周りの人間から好かれていた。
自分の部下ではなかったら口説いていたかもしれないと思っていた時期もあった。
そんな彼が向こうから誘ってきたのである。
失恋の隙につけ込むようで少し気が引けたが、あのまま放っておいては、また別の男に声をかけに行きそうだった。他の男にいかれるよりは、と彼の誘いに乗った。
放っておけなくて大切に抱き締め···
忘れさせてあげるからとその手を伸ばした
泣きそうな瞳で見つめ、背に手をまわして抱きついてきた彼の姿に、海里は大切にするから···と想いを込めて口づけた。舌を絡ませ応えてくる彼に、想いは届いたと思っていた。だが、彼はその手をすり抜けて行ってしまった。結局、自分では彼の失恋の相手を忘れさせてあげる事は出来なかった···という事だろう。
海里は少し温くなってしまった残りの珈琲を飲み干した。そして席を立つ。
「なぁ···。どうすんの?そんな奴、さっさと忘れちまえば?」
「忘れ··る···?」
怜司に聞かれ、まだ諦めきれない自分に気づく。
「···もう少し粘ってみるさ···」
そう答えると、少し心配そうな顔をしている怜司を残し、海里は先に店を出た。
──── まずは少しずつ真尋の心を埋めていくしかないだろう
はぁ·····
溜息を吐きながら飲む珈琲は味がしない。
昨夜は行きつけのバーで飲んでいた。そこで会社の部下に偶然会うとは思わなかったが、彼は酷く酔っていて誘うような視線を向けられた。
元々、海里の性対象は男性だった。さすがに同じ会社の奴と関係を持つつもりはなかったのだが···、あの艶然とした笑みを浮べた彼の表情から目を離す事は出来なかった。
彼に誘われるまま、幼馴染みへの想いを忘れさせて欲しいと求めてくる真尋を大切に抱いた。
あれ程求めてくる真尋が目覚めた後、ベッドから姿を消しているとは思いもしなかったが···。
「朝から何、溜め息吐いてんだ?」
背後から声をかけられ、隣に座った男に視線だけ向ける。
部署は違うが、同じ研修期間を共にした同期の本間怜司だった。彼も出社前にここで珈琲を飲むのが日課となっており、自然と同期以上の親しい間柄となった。そして、会社の中で唯一、海里が同性愛者だと知っている人間だった。
「···一夜を共にした相手に逃げられた」
「は?」
聞き返してきた怜司に、二度も恥ずかしい事を言わせるな、と視線で制する。
「いやいや···逃げられたって冗談だろ?」
男女共にモテるお前が?と信じられないといった顔を向けてくる怜司に、海里は益々嫌そうな顔をした。
「···そうだよ。何も言わずに居なくなっていた」
「で?お前はその逃げられた奴に本気になって忘れられないって?」
半ば冗談混じりに聞いた怜司だったが、海里から何も応えが返ってこないのをみて、マジか···と呟いた。
「一夜をって···まさか、その辺で知り合った奴って事か?」
「まあ···飲んでたバーで会って成り行きでそうなったが···同じ会社の·····部下だ」
怜司は飲んでいた珈琲を噴き出しそうになり、咳き込んだ。
「はあ?お前···面倒事になるから会社の人間とは付き合わないって言ってなかったか?しかも部下って···」
逃げられた相手と今から上司として顔を突き合わせるって、どんな罰ゲームだよ···と怜司は呆れた顔をしている。
「で?部下って···誰?」
「早坂真尋···」
怜司は記憶を辿るように、聞いた苗字を繰り返し口にする。不意に、ああ···あの妙に色気のある奴か、と記憶と名前が一致したようで頷いた。
「お前でも弄ばれる事があるんだな~」
軽く笑いながら怜司はそう言うが、海里には真尋がそんな人間ではない事は普段の真面目な仕事ぶりを見ていれば分かる。同僚とも円滑にコミュニケーションを図れており、話しやすい雰囲気が周りの人間から好かれていた。
自分の部下ではなかったら口説いていたかもしれないと思っていた時期もあった。
そんな彼が向こうから誘ってきたのである。
失恋の隙につけ込むようで少し気が引けたが、あのまま放っておいては、また別の男に声をかけに行きそうだった。他の男にいかれるよりは、と彼の誘いに乗った。
放っておけなくて大切に抱き締め···
忘れさせてあげるからとその手を伸ばした
泣きそうな瞳で見つめ、背に手をまわして抱きついてきた彼の姿に、海里は大切にするから···と想いを込めて口づけた。舌を絡ませ応えてくる彼に、想いは届いたと思っていた。だが、彼はその手をすり抜けて行ってしまった。結局、自分では彼の失恋の相手を忘れさせてあげる事は出来なかった···という事だろう。
海里は少し温くなってしまった残りの珈琲を飲み干した。そして席を立つ。
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「忘れ··る···?」
怜司に聞かれ、まだ諦めきれない自分に気づく。
「···もう少し粘ってみるさ···」
そう答えると、少し心配そうな顔をしている怜司を残し、海里は先に店を出た。
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