上司と部下の恋愛事情

朔弥

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掛け違う心

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 エレベーターが地下に着くと、海里に促されるまま降り、彼の後ろをついていった。
 車のロックが外れるハザードランプが点滅し、海里は助手席のドアを開ける。
「······」
 手慣れた動作に、何時も女性にしているのだろうかと思いながら乗り込んだ。
 住所を伝えようとすると、
「ああ、知っている。詳しくは近くに行ってからで大丈夫だ」
 と言って車を走らせた。
 部下の事全て把握しているのだろうか、それとも···。
 自分に都合の良い解釈をしそうになり、真尋は窓の外に視線を向けた。



「···ありがとう···ございました」
 アパートの近くの路肩に停車してもらい、真尋はお礼を言って車を降りようとした。その腕を海里に掴まれ、座席に引き戻される。
「真尋···俺はあの夜だけの関係だけで終わらせるつもりはない。躰だけの関係だけだとしても···」
「何···言って···」
 躰だけの関係···。そう思われても仕方がない、と真尋の瞳が悲しみに揺れた。確かに最初の誘い方は最悪だったと言えるだろう。
 真尋は耐えきれず、車を降りようとした。だが、逃さないとばかりに海里の手が首の後ろにまわされ、
「だから···誘うなら俺だけにしていろ···」
 甘い囁きと共に引き寄せられ海里の唇が重なった。
 強引に舌を押し入られ、口腔内をまさぐられる真尋の鼻腔から抗う声が洩れた。
「んんっ···」
 舌で押し戻そうとしても巧みにその舌を絡めとられ、翻弄ほんろうされていく。
「んっ···っう···」
 呼吸さえも飲み込まれ、苦しそうな吐息が洩れた。
 口腔内を堪能していた舌が真尋の中から抜け出し、唇が離れると真尋は大きく息を吸い込む。
「···っ··はぁ···あっ··」
 だが、直ぐに呼吸に喘ぐ唇を塞がれ、深く口づける事となった。
「んうっっ···」
 口腔内の奥まで犯され、下肢に痺れるような快楽が走り抜ける。


 何度も唇を貪られ、ようやく海里の唇が離れた時には真尋の躰の力は抜け、乱れた呼吸には甘い吐息が混じっていた。

 はぁ··ぁっ···はぁ···

 呼吸を整えながら、高潮した顔で海里を見つめる。
 その瞳は戸惑いに揺れていた。
「な···んで···」
 幼馴染みへの想いを忘れる為に抱かれようとした奴など、躰だけの関係を求めてるとしか見えないという事だろう···と、自分を卑下せずにはいられない。
「俺なんか相手にしなくったって、他にいい相手がいるだろ!放っておけよ!」
 真尋は声を荒げた。
 躰だけの関係なら···恋人のような優しさなんか見せないで欲しい。

 勘違いしそうだ···

「優しくなんか···するな···」
 絞り出すような声で言うと、海里の腕を払い除け車を降りた。彼が今どんな顔をしているのか、振り返る事もせず自分のアパートへと走り帰っていった。



 走り去る真尋を見送りながら、海里は車のハンドルに腕を預けるようにもたれかかった。


 上手く伝わらないな···

 
 今は躰だけの関係だけだとしても、いずれ幼馴染みへの想いを忘れさせてあげる···そう伝えたかったのだが、彼が求めているのは優しく包み込む恋人ではないのかもしれない。
「優しくするな···か」
 海里は真尋の言葉を繰り返すように呟くと、シフトレバーを切り替え車を走らせた。


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