上司と部下の恋愛事情

朔弥

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翻弄される真尋

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「え?課長?来てたんですか?」
 松永の問いに海里は上司としての優しい笑みを浮べた。
「ああ、さっきまで怜司に付き合って食事をね。俺はこれから社に一旦、戻ってから帰るが···城戸はかなり飲んでるみたいだな、大丈夫か?」
 部下を心配そうに見る顔は、先程まで城戸を誘うのかと問いただしながら股関をまさぐっていた事など微塵も感じられない。
 真尋は海里の後ろで、二人に自分の半身の変化に気づかれはしないかとヒヤヒヤしながら、早くこの会話が終わりこの場から去りたいと願っていた。
「大丈夫じゃないですよ、課長!こいつ俺に奢れだのタクシーで送れだの」
「分かった、分かった。松永、ここは俺が奢ってやるから城戸を連れてタクシーで帰ってくれ。このまま放っておいたら、家に辿り着く前にその辺で寝そうだ」
 海里はテーブルの上に置かれた伝票を手に取った。
「早坂も酔ってるみたいだから、俺が送ってくな。松永、後は頼んだぞ」
 そう言いながら海里は椅子の上に置いてあった鞄を手渡してくれた。真尋は受け取るなり、前を隠すように鞄を持つ。顔が熱かった。
「あれ?早坂、そんな飲んでたっけ?」
 城戸に聞かれ、
「···ああ···ちょっと··酔いが回った···かも」
と、なんとか答えるが下半身が気になり言葉がたどたどしくなる。意識をしないようにすればするほど、陰茎は脈打ち淫靡な疼きをもたらした。 
「あ─··確かに顔が赤いな。早坂、無理せず課長に送ってもらえよ?」
 松永は真尋のたどたどしい言葉は仕事でミスをした事を気にして課長に送って貰う事に抵抗を感じていると思ったようだった。
「ぁ···はぃ···」
 消え入りそうな声で答える。
「じゃあ。行くか、早坂」
 海里の後ろを追いかけるように真尋は店を出た。



「ま、待って··あのっ···課長···」
 真尋は途切れる息で先を行く海里に声をかける。
「どうした?」
 振り返り訪ねてくる海里の顔はどこまでも涼やかだ。
 人通りも少なくなってきたとはいえ、まだ帰宅途中の人や飲み歩いている人が往来する中で半身に熱を持たせている自分が酷くみだりがわしく感じられ、真尋は泣きそうな顔をした。
「もう少しで着くから、頑張って歩いて」
 海里は足取りの遅い真尋の腰に手を回し引き寄せた。
「酔ってる奴を支えてるようにしか見えないから大丈夫」
 この状況を作り出した本人なのに気遣うように優しく接してくる海里の態度が、彼が何を思ってそうしているのか分からず真尋は不安な面持ちになりながらも従うしかなかった。


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