19 / 85
初恋に終止符を
19
しおりを挟む
海里はいつものように出社前の珈琲を、これまたいつもの通りの見える席に座り飲んでいた。
だが、その表情はどこか憂いを帯びている。
「お前ねえ···その端整な顔立ちで切なげな表情するなよ。さっきから、女子社員がチラチラ見ながら声かけるタイミング狙ってるぞ」
珈琲カップを海里の席の隣に置き、怜司が視線で女性社員の位置を目配せしながら座る。
「何だか元気がなさそうだから声かけて慰めたら付き合うきっかけになるかも···なんて言ってたのが聞こえたぞ」
なかなか計算高いよな~と言いながら怜司は珈琲を一口飲んだ。
「···俺は女性に興味ない」
「だったらいつものように隙きのない笑顔でも張りつけとけよ」
「今はそんな余裕はないな···」
ボソッと呟いた海里に、
「で?また逃げられちまったのか?」
と、ニヤニヤ笑いながら怜司は問いかけた。
「今度は逃げられてない」
海里の答えにじゃあ何だよ、と怜司は珈琲に口をつけながら聞いた。
「俺との関係を隠したがっている。名前で呼ばれるのも、朝送っていくのも嫌がられた」
海里の返答に一瞬ぽかんとした怜司は、
「いやいや、普通だろ。俺はお前が男が好きだろうがお前を見る目は変わらねえよ。だけど、そう見れない奴の方がまだまだ多い世の中だ。避けられるなら避けたいに決まってんだろ···。お前だってそう思ったから、同じ社の奴に手ぇ出さなかったんじゃねえの?」
「は?俺が面倒と言ったのは、色恋沙汰で仕事に支障をきたすと困るからだけど?別れでもすれば余計仕事し難いだろうが」
そっちかよ!と怜司は呆れた顔をした。
「出世を望むんなら、波風たてない事だな。それに、お前は気にしなくても相手はどうか分かんないぜ?好奇な視線にさらさせたくなかったらバレないように気をつけてやれよ」
出世などどうでもいいが、真尋が嫌な思いをするような事にはさせたくはない。
「それは···分かってるさ」
分かってはいるが···
彼は自分のモノだと知らしめさせたい
自分はこんなにも独占欲が強い人間だっただろうかと、考えながら海里は飲みかけの珈琲に口をつけた。
❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇
真尋はデスクの上のスマホをチラリと見た。
今朝の名前で呼びたそうな海里の表情がチラつく。
急にそんな事をされれば変に勘ぐる奴だって出てくるだろう。彼の早い出世を妬んでいる者だっているのだから、自分の所為でそんな奴らに足元を見られるような事にはなりたくない。
自分を好きにならなければ···そんな後悔だけはされたくなかった。
きっと···
海里には女性を好きになるという選択肢もあっただろうから···
真尋は常に女性社員に囲まれている海里の姿を思い出しながら、心が沈むのを感じた。
暗くなってしまった気持ちを、それでも海里は自分を選んでくれたのだからと振り払う。
真尋はスマホを手に取り、海里にメッセージを送る為のアプリを起動させた。
『今日、夕飯を食べに行きませんか?』
送信すると、すぐに返事のメッセージが送られてきた。
『いいよ。真尋がフロアを出たら、俺もすぐ後から行くから』
そのメッセージにささやかな幸せを感じ、真尋はスマホをそっと置いた。
❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇
海里のスマホが振動し、メッセージの受信を知らせるランプが点灯した。
スマホを開くなり、浮かない表情をしていた海里の頬が途端に緩む。
朝、車で送られる事も名前で呼ばれる事も拒絶された海里にとって、真尋からの誘いは単純に嬉しかった。
素早くメッセージを打ち込み、真尋へ送信する。
「···お前、顔が緩みまくってるぞ」
呆れた顔をした怜司をよそに、海里は先行くぞと席を立った。
だが、その表情はどこか憂いを帯びている。
「お前ねえ···その端整な顔立ちで切なげな表情するなよ。さっきから、女子社員がチラチラ見ながら声かけるタイミング狙ってるぞ」
珈琲カップを海里の席の隣に置き、怜司が視線で女性社員の位置を目配せしながら座る。
「何だか元気がなさそうだから声かけて慰めたら付き合うきっかけになるかも···なんて言ってたのが聞こえたぞ」
なかなか計算高いよな~と言いながら怜司は珈琲を一口飲んだ。
「···俺は女性に興味ない」
「だったらいつものように隙きのない笑顔でも張りつけとけよ」
「今はそんな余裕はないな···」
ボソッと呟いた海里に、
「で?また逃げられちまったのか?」
と、ニヤニヤ笑いながら怜司は問いかけた。
「今度は逃げられてない」
海里の答えにじゃあ何だよ、と怜司は珈琲に口をつけながら聞いた。
「俺との関係を隠したがっている。名前で呼ばれるのも、朝送っていくのも嫌がられた」
海里の返答に一瞬ぽかんとした怜司は、
「いやいや、普通だろ。俺はお前が男が好きだろうがお前を見る目は変わらねえよ。だけど、そう見れない奴の方がまだまだ多い世の中だ。避けられるなら避けたいに決まってんだろ···。お前だってそう思ったから、同じ社の奴に手ぇ出さなかったんじゃねえの?」
「は?俺が面倒と言ったのは、色恋沙汰で仕事に支障をきたすと困るからだけど?別れでもすれば余計仕事し難いだろうが」
そっちかよ!と怜司は呆れた顔をした。
「出世を望むんなら、波風たてない事だな。それに、お前は気にしなくても相手はどうか分かんないぜ?好奇な視線にさらさせたくなかったらバレないように気をつけてやれよ」
出世などどうでもいいが、真尋が嫌な思いをするような事にはさせたくはない。
「それは···分かってるさ」
分かってはいるが···
彼は自分のモノだと知らしめさせたい
自分はこんなにも独占欲が強い人間だっただろうかと、考えながら海里は飲みかけの珈琲に口をつけた。
❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇
真尋はデスクの上のスマホをチラリと見た。
今朝の名前で呼びたそうな海里の表情がチラつく。
急にそんな事をされれば変に勘ぐる奴だって出てくるだろう。彼の早い出世を妬んでいる者だっているのだから、自分の所為でそんな奴らに足元を見られるような事にはなりたくない。
自分を好きにならなければ···そんな後悔だけはされたくなかった。
きっと···
海里には女性を好きになるという選択肢もあっただろうから···
真尋は常に女性社員に囲まれている海里の姿を思い出しながら、心が沈むのを感じた。
暗くなってしまった気持ちを、それでも海里は自分を選んでくれたのだからと振り払う。
真尋はスマホを手に取り、海里にメッセージを送る為のアプリを起動させた。
『今日、夕飯を食べに行きませんか?』
送信すると、すぐに返事のメッセージが送られてきた。
『いいよ。真尋がフロアを出たら、俺もすぐ後から行くから』
そのメッセージにささやかな幸せを感じ、真尋はスマホをそっと置いた。
❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇
海里のスマホが振動し、メッセージの受信を知らせるランプが点灯した。
スマホを開くなり、浮かない表情をしていた海里の頬が途端に緩む。
朝、車で送られる事も名前で呼ばれる事も拒絶された海里にとって、真尋からの誘いは単純に嬉しかった。
素早くメッセージを打ち込み、真尋へ送信する。
「···お前、顔が緩みまくってるぞ」
呆れた顔をした怜司をよそに、海里は先行くぞと席を立った。
46
あなたにおすすめの小説
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる