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初恋に終止符を
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仕事に切りをつけた真尋は、海里より先にデスクの上を片付けフロアを出た。
1階につき、少しすると海里もメールで伝えてきた通りにやって来た。
真尋に近づくなり海里は甘い笑みを浮かべる。
「行こうか」
海里の浮かべる笑みにドキリと胸が高鳴り、彼が好きな自分を真尋は再確認する。
「···うん」
自分だけに向けられた笑みを嬉しく思いながら、真尋は頷いた。
ビルの出口に向かいかけた真尋は、そこに幼馴染みの祐也の姿を見つけ驚いた表情を浮かべた。
「え···祐也?」
向こうも真尋の姿に気づいたようで近づいてくる。
「ごめん、真尋。そろそろ仕事終わる頃かなって思って。まあ、今日会えなかったらまた別の日に来ようと思ってたから···会えて良かったよ」
「スマホにメッセージくれれば良かったのに···」
「うん···それだと、会ってくれないような気がしたから···」
祐也は隣にいる海里の顔をチラリと見た。
「あ··俺の上司なんだ。······あの、俺の··幼馴染みで··」
真尋は海里に紹介しながら、彼の顔をまともに見る事が出来なかった。
「真尋、そこの珈琲ショップで話してきたらどうだ?俺はここで待っているから」
海里の呼び方が早坂から真尋に変わっている事に気づきながら、真尋はうん···と小さく答えた。
珈琲を注文し、受け取ると店内の一角にある席に座った。
「なんか、ごめんな。あの上司と約束があるんだろ?」
急に会社に来て引き止めてしまった事を祐也は謝った。
「いや、飯食いに連れてってくれるってだけだから大丈夫だよ」
それより話しって?と真尋は聞いた。
「うん···結婚式の招待状の事で···」
封筒から出してもいない招待状を思い出し、真尋は小さくごめん、と呟いた。
祐也は静かに首を横に振る。
「違うんだ···真尋が返事を出せないと分かってて渡したんだ」
「────··」
「俺、真尋の気持ちに気づいてたけど···俺は普通に女の子が好きだし、応える事なんて出来ないから。女の子と付き合ってるって···お前にはなんか言えなくてさ···。だから結婚が決まってもなかなか言い出せなくて···」
「······。やっぱ気づいてたんだな···」
祐也は頷いた。
「招待状、渡せば···お前も諦められるんじゃないかって。でも、ちゃんと言葉で言うべきだった···お前に招待状を渡した時の傷ついた顔がずっと忘れる事が出来なくて」
「···ごめん。結婚前にそんな事で悩ませて···。この前は気持ち込めて言えなかったけど、今なら言えるんだ。もう···お前への想いにもけりつけたし」
真尋は祐也に心からの笑顔を向けた。
『結婚···おめでとう。幸せにな』
じゃあ、行くな···と、席を立った祐也を見送りながら真尋は一つの言葉が胸に刺さっていた。
普通に女の子が好き···か
俺は普通じゃないって思われてたんだろうな、と真尋は少し悲しい気持ちになった。
「どうした?」
いつの間にか店内に入ってきた海里に声をかけられ、真尋は彼の顔を見つめた。
彼は···海里は俺なんかに構っていないで普通の恋愛をしなくていいのだろうか···
「課長は普通の恋愛しようとか思った事ないんですか?」
海里は途端に不快そうな表情を浮べた。
「普通って何?俺は真尋が好きな事が普通だけど?」
「すみません···」
俯き謝る真尋の姿に、海里は腕を組み軽く溜め息を吐いた。
「幼馴染みの彼に何か言われた?」
「···普通に女の子が好きだって。···俺は···やっぱり普通じゃないのかなって思ったら···」
「普通か普通じゃないかなんて、他人の価値観で測るな。俺にとっての普通は男性の真尋が好きな事だよ。真尋が嫌じゃなかったら、ここでキスだって出来るけど?」
「会社では···」
顔を赤らめた真尋をクスクス笑うと、
「じゃあ、デートしようか、今度の休みに」
と海里は真尋を誘う。
会社じゃなかったら
─── キスしていいね?
1階につき、少しすると海里もメールで伝えてきた通りにやって来た。
真尋に近づくなり海里は甘い笑みを浮かべる。
「行こうか」
海里の浮かべる笑みにドキリと胸が高鳴り、彼が好きな自分を真尋は再確認する。
「···うん」
自分だけに向けられた笑みを嬉しく思いながら、真尋は頷いた。
ビルの出口に向かいかけた真尋は、そこに幼馴染みの祐也の姿を見つけ驚いた表情を浮かべた。
「え···祐也?」
向こうも真尋の姿に気づいたようで近づいてくる。
「ごめん、真尋。そろそろ仕事終わる頃かなって思って。まあ、今日会えなかったらまた別の日に来ようと思ってたから···会えて良かったよ」
「スマホにメッセージくれれば良かったのに···」
「うん···それだと、会ってくれないような気がしたから···」
祐也は隣にいる海里の顔をチラリと見た。
「あ··俺の上司なんだ。······あの、俺の··幼馴染みで··」
真尋は海里に紹介しながら、彼の顔をまともに見る事が出来なかった。
「真尋、そこの珈琲ショップで話してきたらどうだ?俺はここで待っているから」
海里の呼び方が早坂から真尋に変わっている事に気づきながら、真尋はうん···と小さく答えた。
珈琲を注文し、受け取ると店内の一角にある席に座った。
「なんか、ごめんな。あの上司と約束があるんだろ?」
急に会社に来て引き止めてしまった事を祐也は謝った。
「いや、飯食いに連れてってくれるってだけだから大丈夫だよ」
それより話しって?と真尋は聞いた。
「うん···結婚式の招待状の事で···」
封筒から出してもいない招待状を思い出し、真尋は小さくごめん、と呟いた。
祐也は静かに首を横に振る。
「違うんだ···真尋が返事を出せないと分かってて渡したんだ」
「────··」
「俺、真尋の気持ちに気づいてたけど···俺は普通に女の子が好きだし、応える事なんて出来ないから。女の子と付き合ってるって···お前にはなんか言えなくてさ···。だから結婚が決まってもなかなか言い出せなくて···」
「······。やっぱ気づいてたんだな···」
祐也は頷いた。
「招待状、渡せば···お前も諦められるんじゃないかって。でも、ちゃんと言葉で言うべきだった···お前に招待状を渡した時の傷ついた顔がずっと忘れる事が出来なくて」
「···ごめん。結婚前にそんな事で悩ませて···。この前は気持ち込めて言えなかったけど、今なら言えるんだ。もう···お前への想いにもけりつけたし」
真尋は祐也に心からの笑顔を向けた。
『結婚···おめでとう。幸せにな』
じゃあ、行くな···と、席を立った祐也を見送りながら真尋は一つの言葉が胸に刺さっていた。
普通に女の子が好き···か
俺は普通じゃないって思われてたんだろうな、と真尋は少し悲しい気持ちになった。
「どうした?」
いつの間にか店内に入ってきた海里に声をかけられ、真尋は彼の顔を見つめた。
彼は···海里は俺なんかに構っていないで普通の恋愛をしなくていいのだろうか···
「課長は普通の恋愛しようとか思った事ないんですか?」
海里は途端に不快そうな表情を浮べた。
「普通って何?俺は真尋が好きな事が普通だけど?」
「すみません···」
俯き謝る真尋の姿に、海里は腕を組み軽く溜め息を吐いた。
「幼馴染みの彼に何か言われた?」
「···普通に女の子が好きだって。···俺は···やっぱり普通じゃないのかなって思ったら···」
「普通か普通じゃないかなんて、他人の価値観で測るな。俺にとっての普通は男性の真尋が好きな事だよ。真尋が嫌じゃなかったら、ここでキスだって出来るけど?」
「会社では···」
顔を赤らめた真尋をクスクス笑うと、
「じゃあ、デートしようか、今度の休みに」
と海里は真尋を誘う。
会社じゃなかったら
─── キスしていいね?
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