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番外編
ハロウィンの悪戯
しおりを挟む真尋はお風呂で濡れた髪をタオルで拭きながらリビングのドアを開けた。
「俺、出たから海里も─···」
声をかけながら部屋へ入るが、先程までキッチンで夕食後の洗い物をしていた海里の姿はそこにはなくリビングも、
『Trick or Treat!皆さん今日はハロウィンの仮装を─··』
と、テレビからのハロウィンの様子を伝えるキャスターの明るい声が流れているだけで静かだ。
「海里?」
きょろきょろとリビングを見渡しながらソファーに近くと海里は横になり、うたた寝をしていた。
ここ数日お互い残業続きで忙しい日々を送っていた。特に課長である海里は真尋より帰宅時間も遅く、家でも顔を合わせる時間が殆ど取れないほどだった。だが、今日はハロウィンだからと予定があるという社員が多く、いつもよりは早く仕事を切り上げて帰宅をしていた。
しかし、それでも夕食が終わった時間は23時に近く、あまり隙のない海里には珍しくソファーで真尋がお風呂から出るのを待つ間に眠ってしまったようだ。
「海里、起きて···」
肩に軽く手を触れながら声をかける。だが、静かな寝息が聞こえるだけで起きる気配はない。
真尋は海里の寝顔をじっと見つめた。
整った綺麗な顔立ち。改めて見ると、何故彼は自分なんかを好きになったんだろうか···と不思議に思う。同性愛者だから相手を見つけるのは難しいかもしれないが、彼ほど容姿端麗で気配りの出来る人間であれば、つき合いたいと想いを寄せる男性に出会う事など簡単のように感じる。
「独占欲が強いの···海里だけじゃないからな。俺だって···したいって思う日くらいあるし···」
いつも海里のペースに嵌り、啼かされているが、たまにはこちらが主導権を握りたい。
真尋はソファーの傍らに膝をつくと躰を屈め、眠る海里の唇にそっと口づけた。
下唇を軽く甘噛しながら舌で擦る。
「·········ん······真···尋·······?」
薄っすらと瞼を開けた海里は、ぼんやりと瞳の前の真尋を見つめた。
「···え?どう···した···の?」
仕事の疲れで食器を片付けた後、ソファーで真尋がお風呂から出てくるのを待っていたつもりだったが、いつの間にかうとうとしてしまっていたようだ···というのは直ぐに理解出来たが、真尋が自分から口づけている状況に戸惑いの声を洩らした。
珍しく狼狽えている海里に、先程テレビの画面から流れていた音声を思い出した真尋は悪戯心が芽生える。
「Trick or Treat ─··」
口元に笑みを浮かべると、海里の耳元で甘えるような声で囁いた。
「···Trick or Tr···?」
真尋の言葉を繰り返すように小さく呟きながら、今日はハロウィンだったか、と思い出す。
「お菓子くれないなら···悪戯、しちゃうよ?」
そう言いながら真尋はソファーに上がると、海里の脚の間に躰を滑り込ませ引き締まった腹部に右手で触れた。
スラックスからシャツの裾を引き出し、隙間から手を忍ばせ、脇腹を撫でるように直接肌に触れる。その手は中央へと移動していき、ベルトのバックルに指をかけた。
「真···尋?ちょ···っと待った、悪戯って···」
外し始めた真尋に、海里は慌てたように手を掴んで止める。
いつも余裕のでいる海里の表情が崩れるのを見て、真尋は堪えきれずクスクス笑った。
「──···」
揶揄われた事に気づいた海里は渋い顔をして真尋を見つめた。
だが、すぐに何かを企む笑みを口元に浮かべる。
「悪戯する悪い子には──··」
そう囁いたかと思うと、海里は真尋の躰に腕を伸ばし捕まえると、引き上げながら自分の躰と反転させるように組み敷いた。
「──··え?」
一瞬の事に真尋は反応できず、何が起こったのかときょとんとしながら、今まで見下ろしていた海里の顔を今度は見上げる。
「お仕置きが必要かな?」
楽しそうに笑う海里の表情を見つめ、そこで初めて立場が逆転した事を真尋は知る。
「ま···って···ちょっと悪戯しただけだって······。それに疲れてるみたいだから、早く休んだ方が···」
「煽ったのは真尋だよ──···」
真尋の声を遮るように言いながら指先を頬に触れさせ、優しく擦る。
「·········」
真尋は黙ったまま、頬を僅かに赤く染めた。
こちらがリードするつもりで仕掛けたのは確かだ。それが形勢逆転となった途端、逃げようとした。だが、躰の奥には既に淫らな欲情が僅かに芽生え始めており、海里に組み敷かれただけで、腰に甘い痺れが走り抜ける。
「悪戯···してくれるんじゃないの?真尋もそのつもりで誘ってくれていると思ったんだけど···」
「·········」
見透かされている。
真尋は返事の代わりに、するりと自分から海里の脚に自分の脚を絡みつかせた。
「····今日はどうしたの?そんなに積極的に甘えちゃって···」
そんなつもりなんてない!と怒った表情で言い返してくると思っていた海里は、意外な反応に戸惑いを隠せない声で真尋の顔をまじまじと覗き込んだ。
「俺からしたいって思うのはおかしい?俺だって···」
好きな人に性欲くらいあるし···と、最後の方は小さく呟いた。
海里は、全然···と笑いながら横の髪を梳くように優しく撫でると、唇に口づけた。
軽く啄むようなキスを繰り返した後、舌を絡ませながら口腔内を弄る。
「んぅ···」
喉の奥まで海里の舌に侵され、混じり合う唾液を懸命に飲み込む。
「は···ぁっ···」
呼吸のままならない濃厚な口づけに、真尋は喘ぐように息を吐いた。
微熱の混じる吐息に、海里は満足そうに笑みを浮かべながら耳元に唇を寄せ、欲情を孕んだ声でそっと囁いた。
悪戯のお仕置きだから···
今夜は覚悟して ──···
─────────────────────
暫く更新予定はなかったのですが、季節ネタが浮かんだので書いてみました。
「真尋が物凄く甘えたら、海里は焦ったりする事はあるのかな···?」といった感じのコメントを頂いたので、今回の話しに組み込んでみましたが···いかがだったでしょうか
色々と真尋が甘えるシチュエーションを考えてはみたのですが、特別な何かがないと真尋は甘えられないかな···と思い、ちょうどハロウィンだったので悪戯♡という形で(^_^;)
ちょっと攻め気味にいかないと、海里も焦ったりしない···ですよね(~_~)大抵の事は包み込んでしまうかと···
イメージに沿っていたら嬉しいですが、違っていてもご容赦下さいマセ(^ ^;)
(2023.10.30)
エールを押して下さった方、ありがとうございます(^ ^)嬉しいです!
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