ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷と契約しました。

練太郎

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第5話 これからのこと

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 ギルドから帰宅し、食事やお風呂、またシエナさんの部屋決めやその部屋に荷物運びなどをした後。ようやく一息つけたということで、先程気になっていたことについて聞いてみた。

「シエナさん。俺たちって奴隷契約を結んでいますよね?」
「はい。ちょっと形は特殊ですけど、このネックレスがその証です」

 彼女は自分の首元を指す。俺ももう一度確認するが、やはりそれは奴隷の首輪に違いなかった。まあ命令を強制的に聞かせることは出来ないし、俺の元から逃げられなくなるような機能もない。俺と彼女の間に魔術的な繋がりを持たせるためだけのアイテムというような感じだ。ちなみに、その繋がりがあっても出来るようになることは何もない。結婚指輪をイメージして、そこから愛を抜いたものだと思ってくれたほうが分かりやすいだろう。

 まあそういうことだから、俺は確実にシエナさんと契約しているわけだ。そうなるとやはりおかしい。

「ですよね……。シエナさん、実はですね……奴隷契約したのに口座からお金が引かれていないんですよ。あの日は泥酔してましたし、もしかしたらお金を払い忘れていたもしれなくて……」

 なので、確認のためにも今からシエナさんと出会ったお店まで連れて行って貰えますか? と言おうとしたのだが……彼女が突然『あ……』という声を出して急に謝ってきた。

「すみません! 店主さんからの伝言を伝え忘れてました! お代はいりませんとのことです! なので、心配いりません!」
「え……!? そんなことあります……? あちらもあくまで商売ですし、そんなことしたら大赤字じゃ……。本当にそうだとしても、せめてシラフの状態でお礼を--」
「--大丈夫です! 昨日散々お礼を言われていましたし、彼女、お金には困っていませんので! それと私の昔からの知り合いなので、後から私の方でもう一度お礼をしておきます! なのでエリック様はお気になさらず!」

 なんだか勢いで押し切られた気がするが、シエナさんがそこまで言うのならということで、心のなかで感謝の念を述べるにとどまった。

 ありがとうございます! 失礼ながら顔も思い出せないですけど優しい店主様!



◆◆◆


 翌日から俺たちはお互いの信頼度を高める目的でかなりの高頻度でクエストを受注し、モンスターを討伐する日々を送っていた。
 戦場でお互い背中を預けて戦うことで、より早く打ち解けられるのではないかと思っての行動だったのだが、一ヶ月も一緒に戦っていると予想通り、結構親密な関係になれた。

 俺はシエナに対して敬語ではなくてタメ口で話すようになったし、シエナも俺に様づけするのをやめて、よく冗談を言ってくれるようになった。なんというか、本当に気心の知れた友達って感じだ。

 それと、彼女のことも少し知ることが出来た。
 シエナは元々王都で活動していた冒険者で、そこで最高難易度Aのクエストをソロで達成したこともある凄腕魔術師だった。冒険者ランクは王国内だと数えるくらいしかいないトップランクのS。

 王都付近には強力なモンスターが大量に出てくるダンジョンがいくつも存在しており、王都を拠点として冒険者活動するには、そのダンジョンに入るための実力を備えている必要がある。
 まあつまりは、『王都で冒険者稼業をしている』というのは強者である証であり、周りから羨ましがられる存在なのだ。しかもランクもSときた。もう雲の上の存在すぎる。だからその話を聞いたときは驚いたし、記念に握手とサインをしてもらったくらいだ。身近な人でもう一人同じランクの人がいるのだが……彼女はファンサービスが悪いしなぁ……。
 あ、ちなみに俺の冒険者ランクはCです。これでも俺としては頑張っている方なのだ。

 それと、シエナはユニークスキルは保持していなかった。まあ、そもそもスキルを持っている人が滅茶苦茶珍しいので特に驚くことはなかった。
 どちらが優れていてどちらが劣っているかということでたまに論争が繰り広げられるのだが、俺としては一長一短という気がしている。例えば俺の場合、素の状態だと一般的な冒険者と比べて身体能力や動体視力などの戦闘能力が全てにおいて劣っている。だが、ユニークスキルを使うと、一気に彼らを上回ることも可能になるのだ。
 要は、ユニークスキル持ちは瞬間風速的な強さはあるが、スキルなしの人のように継続的な強さはないという感じである。
 俺的には、スキルなしのほうがいい人生を歩めたのではないかとちょっとだけ思ったり思わなかったりする。やっぱり『発情』という効果が厄介すぎます……。
 
 と、まあシエナに関して重要度の高い情報は今のところこれくらいである。
 個人的には、なんでSランクの冒険者が奴隷になったのかその経緯が知りたい気持ちがあるが、このあたりは彼女自身が自発的に教えてくれるのを待とうと思っている。知らなくても正直困ることはないし、奴隷商人とは旧知らしいから『騙されて売られました!』という悲惨な過去を抱えていることもないと思うからだ。

 それよりも、俺のユニークスキルを彼女がいる前で実際に使っていないことのほうが問題かもしれない。口では説明したし、それを聞いたシエナは問題ないと言ってくれた。しかし、聞くのと体験するのは違うと思うのだ。

 いや、緊急事態以外は使わないという基本方針を変えるつもりはないのだが、その緊急事態が訪れたとき、実際に自分がどんな状況になるのかを把握しておくのはこれから先も一緒にパーティーを組む仲間として大事なことだと思ったのだ。

 というわけで、近いうちに実際にこのスキルを体験してもらおうと思いつつ、今日も一日が過ぎていった。
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