ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷と契約しました。

練太郎

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第6話 ギルドマスター

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 ユニークスキルをお試しで使うタイミングを見計らっていたある日。
 俺たちがいつものごとくギルド内の掲示板に張られているクエスト一覧を見て何を受けようかと話し合っていたところ、ある人物が話しかけてきた。

「あらエリック。久しぶり、と言うべきかしらね」
「あ、ミア。いや~いつもお世話になっておりますぅ~。今日も相変わらずお美しいようでハハハ! ここ二ヶ月、ダンジョンに籠もりっきりだと聞いていたけど、首尾はどうだったんだ?」
「相変わらずお世辞をいうときは敬語で気持ち悪くなるのね。まあ一部を除いて問題はなかったわ」
「ぐっ……すみません……。んん! まあ怪我なくて良かったよ。お疲れ様」
「……ありがとう」

 彼女のご機嫌取りをするためにゴマすりをしていたら、隣に立っていたシエナがあまりの変わりように目を見開いて驚いていた。ご、ごめんよ……ミアに面と向かって『今日もきれいだね』っていうのは恥ずかしくてつい……。

 俺に話しかけてきた女性の名前はミア。俺が所属するギルドのギルドマスターをしているお偉いさんである。ミアと俺は幼なじみで、昔はよく一緒に遊んだり勉強したりしていたものだ。俺たちは同時期に冒険者になったのだが、彼女は優れた才能とたゆまぬ努力ですぐさま名のはせた冒険者となり、シエナと同じく王都の冒険者としてかなりの活躍していた。ちなみに彼女の冒険者ランクはシエナと同じくSランクで、ジョブは俺と同じ剣士。この前、ファンサービスが悪い身近な人として挙げていたのが彼女だ。
 
 そんなミアは、1年前に俺が活動していた地方に帰ってきて、ちょうど定年退職した前任のギルドマスターに代わる形で王都で史上最年少のギルドマスターとして君臨することとなった、という感じである。

 このように凄い経歴の持ち主であるミアは俺との挨拶もそこそこに、シエナのほうを一瞥し、彼女の首にかかっている奴隷の首輪をじっと見ていたとおもったら急に苦虫を潰したような顔をする。

「……どうも。王都でパーティーを組んだぶりね。シエナ」
「ええ、そうですね。あのときはお世話になりました、ミア」
「それはお互い様よ。それで? あなたがなぜこんなところに? それとその奴隷の首輪は何かしら?」
「この街の奴隷市場で一ヶ月前に売られていたところ、たまたま通りかかったエリックさんに契約していただきまして、今こうして一緒にパーティーを組ませていただいています」

 ミアが『エリックがシエナと奴隷契約を……? 私がいない間にそんな……』と言いながら一瞬ふらつくが、すぐに何事もなかったように持ち直す。

「そ、そうなのね。ふぅ~ん? ただ、シエナが奴隷として売られるなんて普通は起こり得ないわね。…………あなた……まさかとは思うけど、お父上の国王の力を使っ--」
「--ああああ! ミアが何を言っているか分かりません! そうですよね! エリックさん!」

 二人って王都でパーティーを組んでいたんだ。彼女たちが手を組んで戦っている姿を一度拝んでみたかったなぁ、なんて思っていたら急にシエナが大声を出して俺に話を振ってきた。
 正直、直前の話は頭に入ってきていなかったので何を聞かれたのか分かっていない。なので、とりあえず『そうだな』と言うとミアが俺に詰め寄ってきた。

「エリック、あなた、とんでもない人が側にいるという自覚はあるのかしら?」
「え? そりゃもちろん自覚はあるぞ? Cランクの俺がSランクの冒険者と一緒にクエスト受けるなんて普通はありえないからな」
「そういうことじゃないのだけど。ミアに教えてもらっていないのね……。まあそれは好きにすればいいわ。で? まさかとは思うけど手なんて出していないでしょうね? エリックはお猿さんじゃないものね? ちゃんと理性がある男性だものね?」

 もの凄い剣幕でお手つきをしたのかと迫ってきたが、俺はシエナといかがわしいことをしたことはないので『出してないが』と答える。すると、ミアは一安心したような顔をして俺から少し離れる。

「それは良かったわ。これからも紳士的な振る舞いを期待するわね。ま、まあ……どうしても我慢できなくなったら、その不服ではあるけど、仕方がないから私がなんとかしてあげ--」
「--ギルマス! ちょっとお聞きしたことが……あっ……すみません……」

 いつもはクールキャラなミアが、珍しくもじもじして俺に何かを伝えようとしてきていたのだが、受付嬢の1人が彼女に話しかけてきたことで話が途切れてしまう。結構勇気を出して何かを言おうとしていたらしく、ミアは思わずその受付嬢をひと睨み。
 だが、そのまま放置することはなくすぐに『ちょっと気が立ってたの。ごめんなさい』と謝った後、俺に『くれぐれもお手つきはしないことね。それと、私と今度パーティーを組んでもらうからそのつもりで』と言ってから仕事に戻っていった。
 パーティーの件はミアとたまに組んでいるし全然ウェルカムなのだが……

「俺のこと疑いすぎだと思うんだが……そんなことをするやつに見える?」
「そうですね……泥酔状態に持ち込むとエリックさんの理性の壁は突破できそうですね……」
「うっ……気をつけます」

 お酒の量は気をつけようと思いつつ、パパッとクエストを受注して今日も今日とてモンスター討伐に出かけた。
 
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