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なんとも遠回しで要領を得ない彼の話に、シェイラは首をかしげる。
そんなにも不名誉な噂なのだろうか?
だとしても、所詮噂は噂。気にすることなどないと言うのに。
そんなことを考えていたら、彼は再び口を開いた。


「誰に言い寄られても靡かないのは……その……僕が男色家だ、とか、不能だ、とか小児性愛者だ、とか…………そう言った類の噂です。」

なるほど。これは逆にモテまくっている割に堅実だったことによる思わぬ弊害だ。
しかもこの言いがかりのつけられ方は全員が全員本気でそう思っている訳ではなく、腹いせや妬みも含まれるのだろう。


「ですがまぁ……小児性愛者はひとまずおいておいたとして、同性愛者は気にすることでもないのでは?その、恋愛対象については自由だと思いますし……。」
「確かにその通りです。僕がそうかはさておき、否定されるべきものではないのですが、貴族の一員としては致命的です。」

なるほど、その噂を払拭したいと言う事か。
ひとまず一つは納得した。だが後二つ残っている。そんなシェイラの脳内を見透かしたかのように、レナードは続けた。


「それから、子供についてと貴女を選んだ理由、でしたね。結論から申しますと、子供はできなくても問題ありません。貴女もご存じだと思いますが、僕は次男ですので侯爵家の後継ではありませんから。そして、貴女を選んだ理由も同じく、僕が後継ではないからです。」

貴族の子息たちの中で、長男は家を継ぐことが約束されているが、次男以降はそうでは無い。将来が約束されている訳ではない彼らは、よほどの高位貴族でなけれ、ばどこかの貴族の後継娘と結婚して婿養子となりその爵位を継ぐか、騎士となって国に尽くすこととなる。
高位貴族の場合、爵位を複数持っている場合もあるが、大抵は一番上の爵位とはかけ離れているくらいの下級爵位のことが多い。爵位が一気に下がると、それに応じた生活ランクになってしまう。生活水準が一気に下がったとして、今まで贅沢な暮らしをしていた高位貴族の子息たちで耐えられる者の方が少ないだろう。


「率直に申し上げます。今現在、『バートリー伯爵』の爵位を持っているのは……貴女ですよね?」

彼の言葉に、シェイラはうっそりと微笑んだ。
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