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43. 地味活動は難しい
しおりを挟む「…結婚?」
この前に言った事を全て忘れてしまったんでしょうか?え~と、もう一度言った方が良いのかしら。
「有宗さん前回にお会いした時に私が言った事を覚えておられますか?」
大量の薔薇の花束の向こう側から有宗さんの声だけが聞こえてきます。
「…はい。菫様に友人だと言われたことを覚えています」
ツッコミどころが多すぎて何から言えばよいでしょうか。
友人だと分かっていてプロポーズ?
しかも、なぜ様呼び?
取り敢えず…。
「あの…菫様はやめていただけませんか」
薔薇の花束が大きく揺れました。
「それは無理です!」
なぜ?
「私にとって菫様は他の女性達とは比べものにならないくらいの唯一無二の存在なのです!」
まあ、そんなに激しく薔薇の花束を動かしながら言われましても話に集中できませんわ。
「お気持ちは有りがたいですか、私は有宗さんと結婚する気はありませんわ」
ボトッと大きな音と共に薔薇の花束が床に落ちました。薔薇の薫りが部屋にたちこめています。
やっと、有宗さんの顔を見る事ができました。
…て、号泣されています。男の人がこんなに泣くのを見たのはお父様以外では初めてですわ。
静さんが有宗さんにタオルを渡してくれています。気がききますわね。
「…菫様、分かりました。婚約は一旦破棄ということにします。ですが…友人としてはつきあっていただけますよね?」
様呼びは直りませんのね…。
「友人としてなら…」
「ありがとうございます!」
私の両手をしっかりと握りしめ、また号泣しています。
有宗さんの最初の印象が崩れていきますわ…。
本来はこんな人でしたのね。
「今日は…友人としてお食事をご一緒させていただいても宜しいでしょうか?」
話し方もだんだんと変化していませんか?
「ええ…有宗さんのことですから予約されていますよね?お店に悪いですし行きますわ」
いつも出かける時はお店を予約してくれていますから、今回も恐らくお店を予約しているはずです。
「お優しい…。菫様は、やはり素敵です…」
なんて言うのでしょうか…キラキラした目で私を見ながら、私の両手を離さない有村さんを少し気持ち悪いと思ってしまいますわね。
やはり、前回に新しい扉を開いたみたいですね。
これは冷たくしても喜ばれてしまいそうで対応に苦労しますわ。
あ~、なぜ悩み事は減らないのでしょうか…。
できれば、どなたかに教えていただきたいですわ。
気がつけば個性的な人達が周りに集まってきてしまいます。
どうすれば、トラブルなく穏やかに過ごせるのでしょうか。
私の願いは心穏やかに自分の時間を過ごしたいだけです。
地味活動を極めるのは、すごく難しい道のりですのね…。
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