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第四十二話 人間の王子がやってくる
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「お米を売ろうとしたら王家に献上させられて、そしたら王子様が何故だか興味を持って直接プレゼントをしたいと言い出した?」
城の中に入れたニンゲンちゃんが語ったことを要約する。
「その通りだ」
「なるほど……全然ワケが分からないよ」
事情を聞いてもワケが分からないままだった。
なんでその王子は突然会ったこともない俺に捧げ物をしにわざわざここまで来ようと思ったんだ?
「どうやら、王子はあんたのことを話に聞いただけで……惚れたらしい」
ニンゲンちゃんが言いにくそうに口を開いた。
「惚れた??」
ニンゲンちゃんが口を開けば開くほどワケの分からなさ具合が深まっていく。
「ほう――――それはつまり、あれらは魔王様を奪わんとする簒奪者という訳ですか」
セバスチャンが殺意の滲む凄絶な笑みを浮かべた。
「セバスチャン、ステイ。落ち着け。しょせん相手は下等生物だ、セバスチャンが本気で嫉妬を抱くほどのことじゃない」
「確かにその通りでございますね」
俺の言葉にセバスチャンの殺気が収まった。
嫉妬……そう、嫉妬だ。
『魔王様は私のものです』と言わんばかりの執着心を感じた。
セバスチャンが俺に対して抱いている感情は忠誠心と食欲ばかりではないことを認めねばならない。
そういえば、と思い出されることがあった。
召喚したばかりのアスプに、俺にはもう番がいるからアスプの番にはなれないとセバスチャンが嘘を吐いていたことがあった。
まさかあれが嘘のつもりがないのだとしたら?
セバスチャンと俺がつがっているつもりなのだとしたら?
……いやいや、まさかそんな馬鹿な。
まさか魔界ってセックスしたらイコール結婚なんていう価値観ないよね?
むしろ性に奔放なのが魔族なんだと思ってたけど、もしかして違う?
いやいや落ち着け、今はセバスチャンのことについて考えている場合ではない。目の前のことに集中しなければ。
「まさか魔王様の愛らしさが人間たちにまで伝わってしまうとは……討伐を考えていないのは良いことですが、その代わり自分のものにしようとするだなんて……!」
セバスチャンはぶつぶつと呟いて怒りを露わにしている。
俺の魂の色の変化に気づいた様子はない。
「あんたに頼まれた服は王子が持ってきているよ。直接渡したいと言って聞かないんだ」
ニンゲンちゃんがタメ口で話す。
下等生物であるニンゲンちゃんが敬語を使えないのは仕方がないことだ。
パックだってタメ口だしな。
「うーん、服を受け取るだけ受け取ったら追い返すかあ。流石に全員飼うのは大変だし」
俺に惚れているとかいう王子とやらは喜んで飼われてくれるかもしれないが、王子だけ捕まえようとしたら他の人間たちと戦闘になるだろう。それは面倒臭かった。
「今度から余計な人は連れて来ないでね、ニンゲンちゃん」
「私にできるならそうしたいが……」
ニンゲンちゃんは首を縦に振れない。
ニンゲンちゃんの人間社会の中での地位が低くて自分の思い通りにできないからだろう。
「そっか、今度から欲しいものがあったらその王子に頼む方が確実なのか」
「なっ!?」
「魔王様!?」
ニンゲンちゃんが顔を青くし、セバスチャンが眉を吊り上げた。
「そんな、あんたらと商取引をすることで儲けようと思っていたのに……!」
「ニンゲンちゃんには持ってこれそうなものだけ頼むから、安心して。クビにはしないから」
俺の言葉にニンゲンちゃんはほっと胸を撫で下ろした。
「魔王様、人間の分際で思い上がり甚だしく魔王様に懸想する人間などを何度も魔界に招き入れるおつもりですか!?」
「分かった分かった、追い返すから」
セバスチャンが怒るので、王子に継続的に貢がせるのはやめた方が良さそうだった。
城の中に入れたニンゲンちゃんが語ったことを要約する。
「その通りだ」
「なるほど……全然ワケが分からないよ」
事情を聞いてもワケが分からないままだった。
なんでその王子は突然会ったこともない俺に捧げ物をしにわざわざここまで来ようと思ったんだ?
「どうやら、王子はあんたのことを話に聞いただけで……惚れたらしい」
ニンゲンちゃんが言いにくそうに口を開いた。
「惚れた??」
ニンゲンちゃんが口を開けば開くほどワケの分からなさ具合が深まっていく。
「ほう――――それはつまり、あれらは魔王様を奪わんとする簒奪者という訳ですか」
セバスチャンが殺意の滲む凄絶な笑みを浮かべた。
「セバスチャン、ステイ。落ち着け。しょせん相手は下等生物だ、セバスチャンが本気で嫉妬を抱くほどのことじゃない」
「確かにその通りでございますね」
俺の言葉にセバスチャンの殺気が収まった。
嫉妬……そう、嫉妬だ。
『魔王様は私のものです』と言わんばかりの執着心を感じた。
セバスチャンが俺に対して抱いている感情は忠誠心と食欲ばかりではないことを認めねばならない。
そういえば、と思い出されることがあった。
召喚したばかりのアスプに、俺にはもう番がいるからアスプの番にはなれないとセバスチャンが嘘を吐いていたことがあった。
まさかあれが嘘のつもりがないのだとしたら?
セバスチャンと俺がつがっているつもりなのだとしたら?
……いやいや、まさかそんな馬鹿な。
まさか魔界ってセックスしたらイコール結婚なんていう価値観ないよね?
むしろ性に奔放なのが魔族なんだと思ってたけど、もしかして違う?
いやいや落ち着け、今はセバスチャンのことについて考えている場合ではない。目の前のことに集中しなければ。
「まさか魔王様の愛らしさが人間たちにまで伝わってしまうとは……討伐を考えていないのは良いことですが、その代わり自分のものにしようとするだなんて……!」
セバスチャンはぶつぶつと呟いて怒りを露わにしている。
俺の魂の色の変化に気づいた様子はない。
「あんたに頼まれた服は王子が持ってきているよ。直接渡したいと言って聞かないんだ」
ニンゲンちゃんがタメ口で話す。
下等生物であるニンゲンちゃんが敬語を使えないのは仕方がないことだ。
パックだってタメ口だしな。
「うーん、服を受け取るだけ受け取ったら追い返すかあ。流石に全員飼うのは大変だし」
俺に惚れているとかいう王子とやらは喜んで飼われてくれるかもしれないが、王子だけ捕まえようとしたら他の人間たちと戦闘になるだろう。それは面倒臭かった。
「今度から余計な人は連れて来ないでね、ニンゲンちゃん」
「私にできるならそうしたいが……」
ニンゲンちゃんは首を縦に振れない。
ニンゲンちゃんの人間社会の中での地位が低くて自分の思い通りにできないからだろう。
「そっか、今度から欲しいものがあったらその王子に頼む方が確実なのか」
「なっ!?」
「魔王様!?」
ニンゲンちゃんが顔を青くし、セバスチャンが眉を吊り上げた。
「そんな、あんたらと商取引をすることで儲けようと思っていたのに……!」
「ニンゲンちゃんには持ってこれそうなものだけ頼むから、安心して。クビにはしないから」
俺の言葉にニンゲンちゃんはほっと胸を撫で下ろした。
「魔王様、人間の分際で思い上がり甚だしく魔王様に懸想する人間などを何度も魔界に招き入れるおつもりですか!?」
「分かった分かった、追い返すから」
セバスチャンが怒るので、王子に継続的に貢がせるのはやめた方が良さそうだった。
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