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聖女と魔王と魔女編
あなたに。
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「私、そろそろ、お暇しようと思うんですよ」
ユリアが、恨みがましそうな声でそう言っていた。
「ごめん」
「誠意が、全く! 感じられない謝罪など無意味です」
今日ばかりは援軍はなかった。
私が意識を失ってから一日後、魔女が気を利かせたのかユリアが送られてきた。
いるかなーって、と軽い調子で置いていったらしい。
ちょっと神気にあてられて魂がうろついていたようで、イーサン様と協力して元に戻したそうだ。
闇のお方がうろうろして鬱陶しかったと言いだしたユリアはそろそろ最強の名を語ってもいいかもしれない。
そして、目を覚まして早々にお暇宣言をもらった。
「全く、傷を作るなといったのになぜ負傷を増やしてくれるんです?」
「悪かったわ。そのつもりはなかったのだけど。しばらくは大人しくするつもりよ。
あっちは大丈夫なの?」
「イリューが死んだ目で見送ってくれました。早く戻らないと姫様、反逆されますよ?」
「そう。なにで報いればいいかしら」
「少し思い悩んでいるといいですよ」
いじわるな笑顔で言われてしまった。わりと本気で困ってるのを知っていてのこの態度。
「はい。これで二日ほど安静していればいいでしょう。あとで魔女様がお迎えに来ると言っていましたのでご一緒して砦で療養してください。
私は、ここに残ります」
「頼んだわ」
「頼まれました。人の言うこと聞かない患者しかいないんですからねっ」
ここには私以上に重症がいる。
自殺願望者でしたねと。冷酷に言われていたらしい。私はまだ会ってない。
どういう顔をして会えばいいのか、いまだにわからない。
ユリアと入れ替わるようにフィンレーがやってきた。
「姉様、明日には帰るって聞いたけど、ほんと?」
「あとでってユリアが言ってたから、今日、帰る」
「次はいつ帰ってくるわけ?」
「半月後くらいかな。あちこちで宣伝しながらだからもうちょっとかかるかも」
「……はー、わかった。留守は守っておくよ。あれこれ使っても怒らないでね」
「頼むわ。
それにしても」
ちょっと見ない間に成長したようだ。
褒めると調子に乗りそうなので戻ってからにしよう。兄様にも報告しなきゃいけない。
「なんだよ」
「痩せたわね。もっと食べてもいいのよ?」
「大丈夫だよ。ここはではね」
軽く言ってフィンレーは一つの花束を私に渡した。
「僕がするのはここまで。
約束だからね」
「約束?」
「そ。男同士のってやつかな」
面白そうにフィンレーはそう言って去っていった。
「誰からかな」
そうつぶやいてみたところで、私に花束をくれた人は二人しかいない。一人は遠く、もう一人は重症なんだけど。
赤い花、青い花、白い花。色とりどりで、まとまりのない花束。匂いもあるものもないものもごちゃまぜ。
思いついたままに花を選んだように思えた。
明るい黄色の包み紙に赤のリボンをつけて。
「……ん?」
ひとつだけ、はなやかさのない花があった。
緑の花は珍しい。
「人のこと振ったくせに、ひどいなぁ」
その花言葉は、あなたにすべてを。
ユリアが、恨みがましそうな声でそう言っていた。
「ごめん」
「誠意が、全く! 感じられない謝罪など無意味です」
今日ばかりは援軍はなかった。
私が意識を失ってから一日後、魔女が気を利かせたのかユリアが送られてきた。
いるかなーって、と軽い調子で置いていったらしい。
ちょっと神気にあてられて魂がうろついていたようで、イーサン様と協力して元に戻したそうだ。
闇のお方がうろうろして鬱陶しかったと言いだしたユリアはそろそろ最強の名を語ってもいいかもしれない。
そして、目を覚まして早々にお暇宣言をもらった。
「全く、傷を作るなといったのになぜ負傷を増やしてくれるんです?」
「悪かったわ。そのつもりはなかったのだけど。しばらくは大人しくするつもりよ。
あっちは大丈夫なの?」
「イリューが死んだ目で見送ってくれました。早く戻らないと姫様、反逆されますよ?」
「そう。なにで報いればいいかしら」
「少し思い悩んでいるといいですよ」
いじわるな笑顔で言われてしまった。わりと本気で困ってるのを知っていてのこの態度。
「はい。これで二日ほど安静していればいいでしょう。あとで魔女様がお迎えに来ると言っていましたのでご一緒して砦で療養してください。
私は、ここに残ります」
「頼んだわ」
「頼まれました。人の言うこと聞かない患者しかいないんですからねっ」
ここには私以上に重症がいる。
自殺願望者でしたねと。冷酷に言われていたらしい。私はまだ会ってない。
どういう顔をして会えばいいのか、いまだにわからない。
ユリアと入れ替わるようにフィンレーがやってきた。
「姉様、明日には帰るって聞いたけど、ほんと?」
「あとでってユリアが言ってたから、今日、帰る」
「次はいつ帰ってくるわけ?」
「半月後くらいかな。あちこちで宣伝しながらだからもうちょっとかかるかも」
「……はー、わかった。留守は守っておくよ。あれこれ使っても怒らないでね」
「頼むわ。
それにしても」
ちょっと見ない間に成長したようだ。
褒めると調子に乗りそうなので戻ってからにしよう。兄様にも報告しなきゃいけない。
「なんだよ」
「痩せたわね。もっと食べてもいいのよ?」
「大丈夫だよ。ここはではね」
軽く言ってフィンレーは一つの花束を私に渡した。
「僕がするのはここまで。
約束だからね」
「約束?」
「そ。男同士のってやつかな」
面白そうにフィンレーはそう言って去っていった。
「誰からかな」
そうつぶやいてみたところで、私に花束をくれた人は二人しかいない。一人は遠く、もう一人は重症なんだけど。
赤い花、青い花、白い花。色とりどりで、まとまりのない花束。匂いもあるものもないものもごちゃまぜ。
思いついたままに花を選んだように思えた。
明るい黄色の包み紙に赤のリボンをつけて。
「……ん?」
ひとつだけ、はなやかさのない花があった。
緑の花は珍しい。
「人のこと振ったくせに、ひどいなぁ」
その花言葉は、あなたにすべてを。
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