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第八章 新たな命
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「久我さん……。助けてください……」
縋るように唇を震わせて頼むと、彼は小さく頷いた。
「萌音は店を売らないと言っている。お前たちに話すことはもうない。さっさと出ていけ」
すると、継母が尚の背中をバシッと叩いた。
「ボケっと突っ立ってないで、さっさと言い返しな!アンタの大好きな姉ちゃんを他の男に取られちまうよ!」
尚は顔を青ざめさせる。昔からそうだ。尚はいつも母親に絶対服従を強いられていた。
「も、萌音はそいつに騙されてるんだよ!今は良い顔をしていても、後でこっぴどく裏切られて後悔するよ!」
「やめて、尚!久我さんを悪く言うなら、あなたを許さない」
「萌音……」
尚に向かって叫ぶと、久我さんが続いた。
「お前が血の繋がりのない萌音を姉ではなく異性として見ているのは知っている。だが、本当に萌音を想っているなら、どうして萌音を傷付けようとする母親の言うことを黙って聞いているんだ」
「くっ……」
「店を売りたいのだって本当は萌音の為ではなく、自分の為だろう?仕事で彼女が忙しくしているせいで、一緒にいる時間が取れないのが嫌か?今のお前はまるで、自分の思い通りにならないことに駄々をこねている子供だ」
「違う!」
「だったら、どうして萌音の意思を尊重しないで、自分の意見ばかり押し付けるんだ。話にならない。今すぐ萌音から手を引け」
冷ややかに吐き捨てる久我さんに尚は俯いたまま言い返すことができない。
すると、久我さんはダメ押しするように続けた。
「少し調べさせてもらったんだが、お前今なんの仕事をしているんだ?」
「……は?」
尚が顔を上げて、顔を歪ませる。
「お前、不動産ブローカーだろ。宅地建物取引業の免許がないくせに、ちょっとした知識を応用して不動産取引の仲介をして違法な報酬を得てるんだってな。その界隈ではちょっとした有名人らしいな」
「尚……、アンタ……大手の不動産会社に就職してるんじゃ……。それ話ホントなの!?」
私以上に驚いている継母が信じられないというように声を上げる。
「どうせ就活に失敗したのが恥ずかしく言えなかったたとか大した理由でもないんだろ?だが、ブローカーは法律に抵触する。俺をヤクザだとバカにしたが、お前はどうなんだ」
「おい!尚、テメェどうにかしろ!!」
すると、黒岩が尚のおしりを蹴り上げた。二人の様子は明らかな上下関係をうかがわせる。
「個人で不動産ブローカーをしていたお前は、ある物件を巡って竹政組と揉めた。そのとき、間に入ってくれたのがそこにいる黒岩だったんだろ?その日から、母親の恋人である黒岩に頭が上がらなくなった。そして、ついに身の保身の為に大好きな姉の店にまで手を出した。全部姉の為だと自分に言い訳して。なぁ、そうだろ?」
「……っ」
「呉服屋の両隣は空き店舗でこの呉服屋と合わせたらそれなりの広さになる。全部解体して更地にしたら相当な高値で売れるんだってな」
その通りなのか、尚は言い返せない。
「お前は両隣の店欲しさに相当な圧力をかけていたらしいな?俺が直接出向いて持ち主に事情を説明したら、どちらも売らないと約束してくれた。もし今後土地を売るように催促する人間が来たら警察を呼ぶように勧めておいた」
彼の言葉に尚はがっくりとうな垂れて「黒岩さん、すみません。もう……終わりです」と頭を下げた。
縋るように唇を震わせて頼むと、彼は小さく頷いた。
「萌音は店を売らないと言っている。お前たちに話すことはもうない。さっさと出ていけ」
すると、継母が尚の背中をバシッと叩いた。
「ボケっと突っ立ってないで、さっさと言い返しな!アンタの大好きな姉ちゃんを他の男に取られちまうよ!」
尚は顔を青ざめさせる。昔からそうだ。尚はいつも母親に絶対服従を強いられていた。
「も、萌音はそいつに騙されてるんだよ!今は良い顔をしていても、後でこっぴどく裏切られて後悔するよ!」
「やめて、尚!久我さんを悪く言うなら、あなたを許さない」
「萌音……」
尚に向かって叫ぶと、久我さんが続いた。
「お前が血の繋がりのない萌音を姉ではなく異性として見ているのは知っている。だが、本当に萌音を想っているなら、どうして萌音を傷付けようとする母親の言うことを黙って聞いているんだ」
「くっ……」
「店を売りたいのだって本当は萌音の為ではなく、自分の為だろう?仕事で彼女が忙しくしているせいで、一緒にいる時間が取れないのが嫌か?今のお前はまるで、自分の思い通りにならないことに駄々をこねている子供だ」
「違う!」
「だったら、どうして萌音の意思を尊重しないで、自分の意見ばかり押し付けるんだ。話にならない。今すぐ萌音から手を引け」
冷ややかに吐き捨てる久我さんに尚は俯いたまま言い返すことができない。
すると、久我さんはダメ押しするように続けた。
「少し調べさせてもらったんだが、お前今なんの仕事をしているんだ?」
「……は?」
尚が顔を上げて、顔を歪ませる。
「お前、不動産ブローカーだろ。宅地建物取引業の免許がないくせに、ちょっとした知識を応用して不動産取引の仲介をして違法な報酬を得てるんだってな。その界隈ではちょっとした有名人らしいな」
「尚……、アンタ……大手の不動産会社に就職してるんじゃ……。それ話ホントなの!?」
私以上に驚いている継母が信じられないというように声を上げる。
「どうせ就活に失敗したのが恥ずかしく言えなかったたとか大した理由でもないんだろ?だが、ブローカーは法律に抵触する。俺をヤクザだとバカにしたが、お前はどうなんだ」
「おい!尚、テメェどうにかしろ!!」
すると、黒岩が尚のおしりを蹴り上げた。二人の様子は明らかな上下関係をうかがわせる。
「個人で不動産ブローカーをしていたお前は、ある物件を巡って竹政組と揉めた。そのとき、間に入ってくれたのがそこにいる黒岩だったんだろ?その日から、母親の恋人である黒岩に頭が上がらなくなった。そして、ついに身の保身の為に大好きな姉の店にまで手を出した。全部姉の為だと自分に言い訳して。なぁ、そうだろ?」
「……っ」
「呉服屋の両隣は空き店舗でこの呉服屋と合わせたらそれなりの広さになる。全部解体して更地にしたら相当な高値で売れるんだってな」
その通りなのか、尚は言い返せない。
「お前は両隣の店欲しさに相当な圧力をかけていたらしいな?俺が直接出向いて持ち主に事情を説明したら、どちらも売らないと約束してくれた。もし今後土地を売るように催促する人間が来たら警察を呼ぶように勧めておいた」
彼の言葉に尚はがっくりとうな垂れて「黒岩さん、すみません。もう……終わりです」と頭を下げた。
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