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学園編
猫の日番外編 猫3匹目
食堂のいつもの椅子に座って、朝ご飯が出てくるのを待っていたら、お父さんが入ってきた。ガウンを着ていて、頭上にはケモ耳がついている。
「ルジェくん、おはよう。この耳は、ルジェくんがおしゃれでしてくれたのかな?」
『違うよ。オレも起きたらウィオに耳が生えてて驚いたんだけど、ウィオが落ち着いてるからよくあるのかなって』
「そういうのは聞いたことがないねえ」
やっぱり驚く事態なんだよね。だったら、ウィオもお父さんも、なんでそんなに落ち着いてるんだか。
お父さんもウィオと同じような、長い毛が生えた三角の耳だ。お父さんによると、お母さんも同じらしい。
オレの耳とはちょっと違って、オレの耳のほうが少し肉厚で、毛もびっしり生えてるんだよね。でもガウンの下からちょっとだけ見えている尻尾は、オレとおそろいのふわふわの尻尾だ。
そこに執事さんが登場した。
「大変お待たせいたしました。朝食をお持ちいたしました」
執事さんはいつものピシッとした隙のない執事服姿に、グレーの耳と、細く長いシマシマの尻尾をつけている。いや、つけてるんじゃないのは分かってるんだけど、あまりにもいつもと変わらないから、ただつけているように見えちゃうのだ。
思わず執事さんに駆け寄って、足元をぐるぐる回って尻尾を全方位から確認して、それから肩に飛び乗って耳をじっくり見ちゃう。執事さんの尻尾と耳は、ウィオたちと違って短毛だ。まっすぐな尻尾が、実直な執事さんの性格を表している。
「シェリスの尻尾は、毛が短いんだな」
「旦那様方にはルジェ様と同じブラシをご用意いたします」
すごいな。自分に耳と尻尾がついていることには一切触れずに、執事のお勤めを果たしている。さすがプロフェッショナル。
でもなんで執事さんだけ短毛なんだろう。執事さんの尻尾と耳は、アメショーっぽいよね。
あれ? 最近、執事さんはアメショーだなって思た記憶があるぞ。いつだっけ。あれは……
『あのね、耳と尻尾、オレのせいかも。ごめんなさい』
「そうか。元に戻せるのか?」
『怒らないの?』
「理由が分かれば、対策も立てられる。私はいいが、父上たちが長期間登城できないのは困る」
オレの意を決した告白に、ウィオがすごく冷静に返事をくれた。この事態にどう対処すべきか、ちゃんと考えてくれていたのか。あまりに平然としているから、なあーんにも考えていないのかと思ってごめんね。さすが元騎士だな。
でももしかしたらウィオも本当はすごく驚いていて、それでも冷静でいようとして、対処方法を考えていたのかもしれない。オレが先にパニックになって、ごめんなさい。
「ルジェくん、どういうことかな?」
『今思い出したんだけど、夢の中で誰かにお父さんたちを猫に例えてって言われたから、答えたの』
「ルジェ、誰にだ?」
『誰だろう。分からない』
「ルジェくんの夢に現れるなど、普通の存在ではないだろう」
「そうですね。ルジェがこの耳と尻尾に嫌な感じはしないと言っていたので、おそらく神界の方でしょう」
お父さんが困ったなあって顔で笑ってる。もしかしてあの夢の会話の相手って、神様だった?
ってことは、お父さんたちのケモ耳は、神様が生やした猫耳ってことだ。
もう、なんでこんな混乱するようなことするの! 元に戻るのか、戻るならいつになるのか、教えてよ!
夢の詳しい内容を話してほしいとお父さんに頼まれたので、頑張って思い出そう。夢って、見たことは覚えていても、内容まであんまり覚えていない。
当事者である一番目のお兄さんも呼ばれてやってきたけど、お兄さんも長毛種だ。
「子どもたちはまだ知らないから、見たら大騒ぎだろうな」
『あー、羨ましがるかも?』
子どもならきっと自分もなりたいって言うよね。
お母さんとお義姉さんは、ちゃんとしていない格好ではお部屋から出られないから、メイドさんが代わりに参加だ。ドレスで尻尾が隠れちゃうから平気なんじゃないのと思ったんだけど、尻尾のせいでもしもドレスがめくれ上がったら大変だからダメなのだそうだ。
「それで、猫に例えてと言われて、どう答えたのかな?」
『うーんと、ウィオはサイベリアンで、お父さんとお母さんはメインクーンで、お兄さんとお義姉さんはペルシャ、執事さんはアメリカンショートヘアのイメージだなって思ったの。その通りの耳と尻尾になってる。あ、二番目のお兄さんたちはマンチカンだと思ったんだけど……』
「ネウラのイリファスに至急連絡を」
ああ、お兄さんたち、ネウラで猫耳と尻尾が生えてるかも。うわあ、やっちゃったよ。
「サイベリアンというのは?」
『寒いところに住んでいる大きな猫で、毛が長くてもふもふしてる』
「メインクーンは?」
『大きくて、ゴージャスで、毛が長くてもふもふしてる』
「ペルシャは?」
『鼻ペチャで、毛が長くてもふもふしてる』
オレの答えにウィオがあきれているけど、ほかにどう説明したらいいの。正直、全部イメージだよ。隣の家のアメショー以外、身近にいたのはみんな雑種だったから、猫の種類は癒やし動画で見て知っているくらいの不確かな知識しかないんだもん。
お兄さんには「ルジェくんは、毛が長くてもふもふなのが好きなんだね」としみじみと言われてしまった。オレの中の貴族のイメージがそうなだけで、オレは毛が長くても短くても、もふもふは好きだ。ついでに言えば、イヌ科のほうが好きだけど、ネコ科も捨てがたい。
「マンチカンも毛が長くてもふもふなのかな?」
『マンチカンは、毛も足も短くて可愛い。あ、お兄さんが足が短いって言ってるんじゃないよ!』
「分かってるよ。じゃあ、イリファスとシェリスをイメージした猫は毛が短いんだね」
『そう、執事さんのアメリカンショートヘアは、灰色のシマシマでシュッとしてるの。すごく似合ってる』
「ありがとうございます」
執事さんと顔を見合わせてニコニコしていたら、ウィオに抱き上げられた。
「ルジェ、いつ元に戻るか、聞いてくれないか?」
『聞いてるけど返事がないんだ。ごめんね』
「父上、どうされますか?」
「ひとまず今日は休もう。耳だけなら隠せるが、尻尾がな」
やっぱりそうだよね。尻尾があると服が着られない。執事さんのズボンは、あけた穴から尻尾を出すようにして、その部分を上から布で覆うように改良されている。こんな緊急事態に執事さんがいないと上手く対応できないし、かと言って中途半端な姿で出てくるなんてプライドが許さなかったらしくて、まずは一番に執事さんの服を尻尾対応にしたそうだ。
朝からとんでもないお仕事することになったお針子さんたち、ごめんなさい。
――――――――――――――――
「シェリス様、おはようございま……す?」
「おはようございます。裁縫係は起きていますか?」
「まだです。あの、その耳は……?」
「今朝突然生えていました。尻尾もあって、今は無理やり服の中に入れています。このままでは動きに支障があるので外に出せないかと、裁縫係に相談したかったのですが」
「なるほど……?」
「起きていないのなら仕方がありません。尻尾は切ってしまいましょう」
「はあ。は? え? 感覚はないのですか?」
「いいえ、あります。動かせますよ」
「切ったら痛いですよ!」
「ですが、このままではルジェ様や旦那様方の朝食に間に合いませんので」
「裁縫係を今すぐ全員たたき起こしてくるので、やめてください!!」
「ルジェくん、おはよう。この耳は、ルジェくんがおしゃれでしてくれたのかな?」
『違うよ。オレも起きたらウィオに耳が生えてて驚いたんだけど、ウィオが落ち着いてるからよくあるのかなって』
「そういうのは聞いたことがないねえ」
やっぱり驚く事態なんだよね。だったら、ウィオもお父さんも、なんでそんなに落ち着いてるんだか。
お父さんもウィオと同じような、長い毛が生えた三角の耳だ。お父さんによると、お母さんも同じらしい。
オレの耳とはちょっと違って、オレの耳のほうが少し肉厚で、毛もびっしり生えてるんだよね。でもガウンの下からちょっとだけ見えている尻尾は、オレとおそろいのふわふわの尻尾だ。
そこに執事さんが登場した。
「大変お待たせいたしました。朝食をお持ちいたしました」
執事さんはいつものピシッとした隙のない執事服姿に、グレーの耳と、細く長いシマシマの尻尾をつけている。いや、つけてるんじゃないのは分かってるんだけど、あまりにもいつもと変わらないから、ただつけているように見えちゃうのだ。
思わず執事さんに駆け寄って、足元をぐるぐる回って尻尾を全方位から確認して、それから肩に飛び乗って耳をじっくり見ちゃう。執事さんの尻尾と耳は、ウィオたちと違って短毛だ。まっすぐな尻尾が、実直な執事さんの性格を表している。
「シェリスの尻尾は、毛が短いんだな」
「旦那様方にはルジェ様と同じブラシをご用意いたします」
すごいな。自分に耳と尻尾がついていることには一切触れずに、執事のお勤めを果たしている。さすがプロフェッショナル。
でもなんで執事さんだけ短毛なんだろう。執事さんの尻尾と耳は、アメショーっぽいよね。
あれ? 最近、執事さんはアメショーだなって思た記憶があるぞ。いつだっけ。あれは……
『あのね、耳と尻尾、オレのせいかも。ごめんなさい』
「そうか。元に戻せるのか?」
『怒らないの?』
「理由が分かれば、対策も立てられる。私はいいが、父上たちが長期間登城できないのは困る」
オレの意を決した告白に、ウィオがすごく冷静に返事をくれた。この事態にどう対処すべきか、ちゃんと考えてくれていたのか。あまりに平然としているから、なあーんにも考えていないのかと思ってごめんね。さすが元騎士だな。
でももしかしたらウィオも本当はすごく驚いていて、それでも冷静でいようとして、対処方法を考えていたのかもしれない。オレが先にパニックになって、ごめんなさい。
「ルジェくん、どういうことかな?」
『今思い出したんだけど、夢の中で誰かにお父さんたちを猫に例えてって言われたから、答えたの』
「ルジェ、誰にだ?」
『誰だろう。分からない』
「ルジェくんの夢に現れるなど、普通の存在ではないだろう」
「そうですね。ルジェがこの耳と尻尾に嫌な感じはしないと言っていたので、おそらく神界の方でしょう」
お父さんが困ったなあって顔で笑ってる。もしかしてあの夢の会話の相手って、神様だった?
ってことは、お父さんたちのケモ耳は、神様が生やした猫耳ってことだ。
もう、なんでこんな混乱するようなことするの! 元に戻るのか、戻るならいつになるのか、教えてよ!
夢の詳しい内容を話してほしいとお父さんに頼まれたので、頑張って思い出そう。夢って、見たことは覚えていても、内容まであんまり覚えていない。
当事者である一番目のお兄さんも呼ばれてやってきたけど、お兄さんも長毛種だ。
「子どもたちはまだ知らないから、見たら大騒ぎだろうな」
『あー、羨ましがるかも?』
子どもならきっと自分もなりたいって言うよね。
お母さんとお義姉さんは、ちゃんとしていない格好ではお部屋から出られないから、メイドさんが代わりに参加だ。ドレスで尻尾が隠れちゃうから平気なんじゃないのと思ったんだけど、尻尾のせいでもしもドレスがめくれ上がったら大変だからダメなのだそうだ。
「それで、猫に例えてと言われて、どう答えたのかな?」
『うーんと、ウィオはサイベリアンで、お父さんとお母さんはメインクーンで、お兄さんとお義姉さんはペルシャ、執事さんはアメリカンショートヘアのイメージだなって思ったの。その通りの耳と尻尾になってる。あ、二番目のお兄さんたちはマンチカンだと思ったんだけど……』
「ネウラのイリファスに至急連絡を」
ああ、お兄さんたち、ネウラで猫耳と尻尾が生えてるかも。うわあ、やっちゃったよ。
「サイベリアンというのは?」
『寒いところに住んでいる大きな猫で、毛が長くてもふもふしてる』
「メインクーンは?」
『大きくて、ゴージャスで、毛が長くてもふもふしてる』
「ペルシャは?」
『鼻ペチャで、毛が長くてもふもふしてる』
オレの答えにウィオがあきれているけど、ほかにどう説明したらいいの。正直、全部イメージだよ。隣の家のアメショー以外、身近にいたのはみんな雑種だったから、猫の種類は癒やし動画で見て知っているくらいの不確かな知識しかないんだもん。
お兄さんには「ルジェくんは、毛が長くてもふもふなのが好きなんだね」としみじみと言われてしまった。オレの中の貴族のイメージがそうなだけで、オレは毛が長くても短くても、もふもふは好きだ。ついでに言えば、イヌ科のほうが好きだけど、ネコ科も捨てがたい。
「マンチカンも毛が長くてもふもふなのかな?」
『マンチカンは、毛も足も短くて可愛い。あ、お兄さんが足が短いって言ってるんじゃないよ!』
「分かってるよ。じゃあ、イリファスとシェリスをイメージした猫は毛が短いんだね」
『そう、執事さんのアメリカンショートヘアは、灰色のシマシマでシュッとしてるの。すごく似合ってる』
「ありがとうございます」
執事さんと顔を見合わせてニコニコしていたら、ウィオに抱き上げられた。
「ルジェ、いつ元に戻るか、聞いてくれないか?」
『聞いてるけど返事がないんだ。ごめんね』
「父上、どうされますか?」
「ひとまず今日は休もう。耳だけなら隠せるが、尻尾がな」
やっぱりそうだよね。尻尾があると服が着られない。執事さんのズボンは、あけた穴から尻尾を出すようにして、その部分を上から布で覆うように改良されている。こんな緊急事態に執事さんがいないと上手く対応できないし、かと言って中途半端な姿で出てくるなんてプライドが許さなかったらしくて、まずは一番に執事さんの服を尻尾対応にしたそうだ。
朝からとんでもないお仕事することになったお針子さんたち、ごめんなさい。
――――――――――――――――
「シェリス様、おはようございま……す?」
「おはようございます。裁縫係は起きていますか?」
「まだです。あの、その耳は……?」
「今朝突然生えていました。尻尾もあって、今は無理やり服の中に入れています。このままでは動きに支障があるので外に出せないかと、裁縫係に相談したかったのですが」
「なるほど……?」
「起きていないのなら仕方がありません。尻尾は切ってしまいましょう」
「はあ。は? え? 感覚はないのですか?」
「いいえ、あります。動かせますよ」
「切ったら痛いですよ!」
「ですが、このままではルジェ様や旦那様方の朝食に間に合いませんので」
「裁縫係を今すぐ全員たたき起こしてくるので、やめてください!!」
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