THE THEATRE BEYOND THE REASON


第1章 ― 虚無の劇場(きょむのげきじょう)

目を開けると、そこには何もなかった。
光も、音も、時間さえも――ただ、終わりなき静寂だけがあった。

少年は、自分の名前を思い出せなかった。
過去も、故郷も、誰かの声も。
ただ、胸の奥で「何かを探している」という感覚だけが残っていた。

やがて、遠くに小さな灯りが見えた。
それは炎ではなく、まるで「呼び声」のように揺れていた。

少年はその光に導かれるように歩き出す。
どれほど歩いたのか分からない。足跡さえも、すぐに消えていく。

そして、彼の前に――古びた劇場が現れた。
壊れかけた扉には、奇妙な文字が刻まれている。

「The Theatre Beyond the Reason」

扉を押し開けると、冷たい風が頬をなでた。
中は闇に包まれていたが、どこか懐かしい感覚を覚える。

その時、奥から声がした。

「やっと来たか……」

その声には、安堵と狂気が混じっていた。

少年は一歩を踏み出した――そして、彼の物語が始まった。
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