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ドスケベ祓魔師
健気な悪魔
しおりを挟むルカが俺の使い魔になってからというもの、俺の生活は一変した。
今までは寝る為だけに帰っていた家。
ただいま、と声を掛ければ、おかえりなさーいとパタパタ音を立てて駆け寄ってきてくれる相手がいる。
家の中は綺麗に掃除され、洗濯物は畳まれ、ダイニングテーブルの上にはホカホカと湯気を立てる美味そうな料理。
頑張って尽くすと言ってくれた通り、彼は懸命に家事を覚え、あっという間に一通りのことはこなせるようになった。
元々素質があったのか彼の作る料理はどれも絶品で、食事なんて腹を満たす為の手段でしか無いと思っていた俺が、今では彼の手料理を食べることが一つの楽しみになっている。
そして彼は俺の為に尽くしてくれるだけでなく、俺が仕事でいない日中の暇な時間を使い、自ら進んで街の人達の手助けを始めた。
…というか、初めは俺の為に家事を覚えたくて、街の人達を手助けするのと引き換えに家事のやり方を教えてもらっていたらしい。
そのことを先日一緒に買い物に出掛けた際に聞かされて、そのあまりのいじらしさと、照れくさそうに話すルカの表情についムラっときて、我慢出来ず路地裏に連れ込み、激しいキスをし、外だと言うのにルカのことをイかせてしまった。
家事を教えてもらう為に始めたという人助け。
それがいつの間にか趣味のようになっていたらしく、今日は裏のおばあちゃん家の畑を耕してきたよ、だの、今日は木に登って降りられなくなった〇〇さん家の猫ちゃんを助けたよ、だの、今日は△△さん家の双子ちゃんの子守りをしたよ、だの。
仕事から帰宅した俺に一日の出来事を楽しそうに話して聞かせてくれるルカはどう見ても嫌々やっているようには見えなくて、心の底からこの生活を楽しんでいるんだということが伝わってきて微笑ましい。
最初は悪魔が人助けなんて信じられなかった。
今まで見てきた悪魔達は種族に関わらず皆傍若無人で、悪意と敵意に満ちていて、だけど悪魔とはそういうものだと思っていたからそのことに対して何も思わず、ただ淡々と祓ってきた。
だけど、ルカは違った。
裏のおばあちゃんに会った際、
「ルカちゃんがこの街に来てから色々と手伝ってもらっちゃって助かってるのよ、本当にいい子ねぇ。神父さんのお友達なの?」
なんて言われて、俺がいないところでもルカはルカのままなのだと知った。
仕事中街を歩いていたら、お年寄りの荷物持ちをしながら楽しそうに会話を交わしているルカに遭遇したこともある。
最初は身体目当てで契約しただけだった筈が、嬉しそうに俺に尽くす姿、楽しそうに街の人達に尽くす姿を見て、そんなルカに俺は次第に惹かれ始め、それが恋愛感情であると気付くのにそう時間は掛からなかった。
ただ、ルカに抱く恋心に気付いたところで、その気持ちを告げようと言う気にはならなかった。
何故なら、気持ちを告げようが告げまいが俺達の主従関係は変わらず、いつだってそばに居ることができるし、キスだってセックスだってできる。
気持ちを告げて恋人同士になったとしても何も変わらない。
そもそも、俺は人間でルカは悪魔。
この気持ちを告げることはきっと、許されない。
だから俺はずっとこのままの関係でいられればそれでいい、そう思っていた。
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