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大きな木の下で
天使のお迎え
しおりを挟む「…かんざき…?」
「あんた馬鹿かっ!なんでこのクソ寒い中そんな薄着で外出てんだ!死ぬぞ!」
「……なんで俺、神崎型の天使に説教されてんの…?」
「…っ、ハァ…もう……まだ死んでないから…ほんと、無事で良かった…」
「…え?俺、生きてるの?じゃあなんで神崎がここにいるの…?」
彼の話によるとどうやら俺はまだ生きていて、目の前に現れたのは神崎型の天使ではなく生身の神崎本人らしい。
物凄い剣幕で俺を怒鳴りつけてきた彼は、俺のあまりに的外れな発言に怒る気も失せたのか、深い溜め息を吐いて俺のそばにしゃがみ込み、脇に抱えていた毛布で俺をぐるぐる巻きにしながら、この場所へやって来た経緯を説明してくれた。
「あんたのこと探してたら、宿のおばちゃんが教えてくれたんですよ。泣きながらこの木の場所を訊ねてきて、薄着のまま外に飛び出して行った男の人がいるって。危ないでしょうが、一人でこんな夜遅くにうろちょろしたら」
「…なんだよそれ、女子供じゃあるまいし」
「結果迷子になってたんじゃないの?俺が助けに来なかったらどうするつもりだったんですか?」
「う……それは……」
……返す言葉もございません。
実際、神崎が来てくれてなかったら俺は多分ここで凍りついてたと思う。
宿から借りてきたという毛布に包まれて、失われかけていた体温が少しずつ上昇し始めたのも感じてる。
『助けてくれてありがとう』
『神崎のことが好きって気付いたけど、俺はお前に嫌われてると思ったら辛くなって逃げた』
そうやって本音を伝えられたら、何かが変わるかもしれない。
だけど、俺の誕生日の一件とか、女の子達に囲まれて嬉しそうにしてた神崎の姿を思い出すとやっぱり腹が立ってきて、どうしても素直に「ありがとう」や「好き」といったポジティブな台詞を伝える気にはなれなかった。
俯いて黙りこくってしまった俺と、神崎の間に気まずい沈黙が流れる。
それから、どれぐらい経っただろう?
実際には1分にも満たない程度だと思うけど、俺にとっては永遠にすら感じられる程、長くて苦しい沈黙。
それを先に破ったのは、神崎だった。
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