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そこのモンスター社員、今すぐ退職届を書きなさい!
第8話 物品横領①
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「もーう、信じられませんよお、青葉マネージャー」
私は昨日の痴漢社員の件で伊集院係長の無茶苦茶な指示の元、とっても酷い目に遭ったことをお目付役としてマネージャーにぶちまけていた。
「痴漢のオトリってそれは問題だな」
「大問題ですよお。実際に触られたのですよ!」
「ふむ。それにしても配属早々お手柄だったね」
……は? いやいや私の痴漢被害はどうなった?
「ま、経緯をまとめてメールしてくれ」
「か、かしこまりました……」
全くあの傍若無人な係長が信じられない。にしてもマネージャーもマネージャーだ。厳重に注意なさるおつもりがあるのでしょうか? この上司にもネガティブな印象を持たざるを得ないわ。
私は少々不満顔だ。いえ、かなり。
「まぁまぁ。君の活躍は専務の耳にも入っているから」
「え、そうですか。専務さまが?」
「あぁ、君は凄く期待されてる様だ」
ふ、ふーん、専務がねぇ。じゃあもう少し様子見ようかなー。
少しだけ気分を取り戻した私は会議ブースから出た。そして程なく……
「花さーん」と呼ぶ声が聞こえてくる。彼だ。
あ、東薔薇さま!
「報告ですか。昨日色々あったみたいだね。愚痴なら僕がいくらでも聞くからね」
まぁ! まぁ! 何てお優しい! 私の癒しです。大好きですよっ。
「ありがとうございます。東薔薇さん」
うふふん。
思わずにっこりしてしまいました。彼のお陰で私はすっかり立ち直ったのです。けれども事務所へ戻るとあの上司が待ち構えておりました。
「おい、次のターゲットだ。資料を見ろ」
あら係長。不在だと思ったけどいらしたのですね。いつも何処ほっつき歩いてるんだか。まだまだお一人で歩いてても宜しいのですよ?
と、心の中で悪態吐きつつも、渡された書類に目を通す。
「……え、工場のマネージャーって幹部社員ですよね? しかも物品横領って?」
「あぁ。元々、労政係がパワハラの相談受けてた案件でな。ま、せいぜい異動か降格処分だろうから俺の出る幕はないと思っていたが……」
パワハラを訴えた従業員たちは、とある工場の品質スタッフだ。不具合を出す度にマネージャーから傘の先を顔面に突きつけられ、「死ね」だの「お前に土日はない」だの事務所で罵詈雑言を吐かれ、何人も鬱病へ追い込んだモンスターらしい。
ところが……
労政係が彼ら一人一人を呼び出し事情聴取すると、酷いパワハラ事例と共に物品横領の疑いもあることが判明した。腹心の部下を使って業者と連み、自社製品を社外へ持ち出し売り捌いていると言う。
事実なら極めて由々しき事案。
あのモンスターを追い出さないと精神が持たない……そう危機感を募らせた従業員たちによる必死の調査結果だと思う。信憑性が高い。
その内通者の情報では、本日怪しげな動きがあるとのこと。
「おい行くぞ。カメラを準備しろ」
心なしか係長の口角が上がってる様に見えた。今回は酷い目に遭わなくて済みそうだ。
よーし。なら頑張ります。
「はい、只今」
私ども、さながら社内警察ですわね!
私は昨日の痴漢社員の件で伊集院係長の無茶苦茶な指示の元、とっても酷い目に遭ったことをお目付役としてマネージャーにぶちまけていた。
「痴漢のオトリってそれは問題だな」
「大問題ですよお。実際に触られたのですよ!」
「ふむ。それにしても配属早々お手柄だったね」
……は? いやいや私の痴漢被害はどうなった?
「ま、経緯をまとめてメールしてくれ」
「か、かしこまりました……」
全くあの傍若無人な係長が信じられない。にしてもマネージャーもマネージャーだ。厳重に注意なさるおつもりがあるのでしょうか? この上司にもネガティブな印象を持たざるを得ないわ。
私は少々不満顔だ。いえ、かなり。
「まぁまぁ。君の活躍は専務の耳にも入っているから」
「え、そうですか。専務さまが?」
「あぁ、君は凄く期待されてる様だ」
ふ、ふーん、専務がねぇ。じゃあもう少し様子見ようかなー。
少しだけ気分を取り戻した私は会議ブースから出た。そして程なく……
「花さーん」と呼ぶ声が聞こえてくる。彼だ。
あ、東薔薇さま!
「報告ですか。昨日色々あったみたいだね。愚痴なら僕がいくらでも聞くからね」
まぁ! まぁ! 何てお優しい! 私の癒しです。大好きですよっ。
「ありがとうございます。東薔薇さん」
うふふん。
思わずにっこりしてしまいました。彼のお陰で私はすっかり立ち直ったのです。けれども事務所へ戻るとあの上司が待ち構えておりました。
「おい、次のターゲットだ。資料を見ろ」
あら係長。不在だと思ったけどいらしたのですね。いつも何処ほっつき歩いてるんだか。まだまだお一人で歩いてても宜しいのですよ?
と、心の中で悪態吐きつつも、渡された書類に目を通す。
「……え、工場のマネージャーって幹部社員ですよね? しかも物品横領って?」
「あぁ。元々、労政係がパワハラの相談受けてた案件でな。ま、せいぜい異動か降格処分だろうから俺の出る幕はないと思っていたが……」
パワハラを訴えた従業員たちは、とある工場の品質スタッフだ。不具合を出す度にマネージャーから傘の先を顔面に突きつけられ、「死ね」だの「お前に土日はない」だの事務所で罵詈雑言を吐かれ、何人も鬱病へ追い込んだモンスターらしい。
ところが……
労政係が彼ら一人一人を呼び出し事情聴取すると、酷いパワハラ事例と共に物品横領の疑いもあることが判明した。腹心の部下を使って業者と連み、自社製品を社外へ持ち出し売り捌いていると言う。
事実なら極めて由々しき事案。
あのモンスターを追い出さないと精神が持たない……そう危機感を募らせた従業員たちによる必死の調査結果だと思う。信憑性が高い。
その内通者の情報では、本日怪しげな動きがあるとのこと。
「おい行くぞ。カメラを準備しろ」
心なしか係長の口角が上がってる様に見えた。今回は酷い目に遭わなくて済みそうだ。
よーし。なら頑張ります。
「はい、只今」
私ども、さながら社内警察ですわね!
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