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笑顔のために 2

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「ランくんとリーンくんのことです」
 二人のこども達のことを『様』で呼ぼうとしたけれど、さんざんオーシャンとフォレストのみんなの前で君づけしまくったなと、もう今さらかと開き直ってそのままにした。
 言って、視線を外さず、けれど、好戦的にならないように、できるだけ静かな色が出るようにと相反する考えをしながら居れば、フリストさんは何故か疲れたような表情になり、小さく頷いてくれた。
「蒸し返すようですが、ランくんとリーンくんの教育係にと私を危険をおかしてまでも拐おうとした。それは過ぎた事実です」
「はい」
 言えば、オーシャン組はもちろん、フォレストのみんなもハッとした表情になり、私を振り仰(あお)いだ。 
「あの子達へそこまでの思いがあるのに、鏡の中で大人がまわりに誰一人して付いていなかったのは何故か。それをお聴きしたいのです」
「ミーナ様は、その疑問が我等オーシャンの人間の逆鱗(げきりん)に触れるかも、と思ったのですな?」
「はい」
 そう。ランくんとリーンくんのために一種、なりふり構わずに行動していた彼等が、考えも無しに『御付きの者が無し』という
放任が過ぎるし、なんとなくだが、そんなことはしない。きちんと理由がある。
 そう、思ったのだ。
「これは私のワガママとも言える勝手な決意なのですが、こども達の育成を決めた時、彼等を例え泣かすことになったとしても、教えなければ、学ばなければいけないことが出たら貫く。そう、決めているのです。それが、今はランくんとリーンくんの成長に繋がると……」
 反らしたくてたまらなくなった視線を必死で耐えていると、フリストさんの眼差しが柔らかくなったことに気付いた。
 なんで??どうして??
「……うちのこども達のことも考えてくれたのですな??」
「はい」
「ありがとうございます!!ミーナ様、本当に……」
 思いつつも頷けば、正しくパッと厳しい表情を変えて、嬉しそうに柔らかく微笑んでくれた。
 それどころか、オーシャンの皆も続いてくれ、それどころか、あのオーシャン四人組なんてディーバさんに抱きついたまま、おいおいと声をあげて泣いていた。
「陛下。こんな、自分の首をかけて物申してくれる人間、そうそうおりませんぞ!?彼女を絶対に手離してはなりませんぞ!?」
 「ぁ、ああ」
 あまりの迫力に、若干引き気味ではあったけど、フリストさんの言葉になんとか王様は頷いていた。
「ミーナ様!!首を跳ねるなどとんでもない!!出来れば、これからオーシャンにまつわるジジイの話を聞いてもらえますかな?」
 良かった。
 この雰囲気だと、首チョンパは免(まぬが)れたようだ。
 けど、やっぱり事情はあるんだね。
 こども達のそばにオトナをおいておけない事情が……。
 出来れば、血生臭い事情じゃなきゃ良いけど……。
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