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〈26〉一安心からの大波乱の予感
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「あぁっ、ミリーナさんとってもキレイよ!素敵な結婚式だったわぁ……!」
「ありがとうございます!これも全てエレナ様のおかげですわ……!」
「おねーさま、泣き過ぎ。鼻水でてるよ」
ヒシッ。と抱き合う私とミリーナさんの姿を「またやってる……」と呆れた顔で見ながらエリオットが私の顔をハンカチで拭いてくれる。あれから数ヶ月、私とミリーナさんはすっかり仲良しになりこの結婚式の打ち合わせも何回もしたものだ。え?花婿はどうしたんだって……もちろんギリギリまで仕事してもらってたよ?新たな領地を経営するって大変よね~。ましてやいくらメルキューレ侯爵家の分家扱いとはいえ、当主の伯爵があのジェンキンスだし。これまでの悪評が祟ったのか、いくら妻が聖女様とはいえ不安視する声もチラホラ聞こえていたのだ。だから徹夜で仕事をして、結婚式とお披露目パーティーをすませてからまた仕事に行った。傍から見れば花嫁を放ったらかしているとんでもない旦那かもしれないが、それくらい詰め込まないと仕事が追い付かないのである。
そして、ミリーナさんがすごかった。あんなに儚げだったミリーナさんはすっかり強くなり、ジェンキンスの尻を叩く勢いで仕事をさせてくれているので、お腹の子が生まれるまでにはこの新たな伯爵領も落ち着きを見せる計算となっていた。
「生まれてくる子供のためにも、ジェンキンス様には頑張って頂かないといけませんもの。元々は才能のある方ですし、御本人がやる気にさえなってくださればきっと大丈夫ですわ!」
「まぁ、平民になって農作業する覚悟まで持ってたんだから領地経営くらい朝飯前でしょ?あんなに真面目に仕事してるジェンキンスなんて気味悪いけど。あいつ、僕に向かって「弟よ、お前も愛する人が現れればオレの気持ちがわかるさ」なんて気持ち悪い顔で気持ち悪い事言ってきたんだけど!キモッ」
よっぽど不気味だったのか、エリオットが思い出しながらうんざりした顔をしている。それを聞いてミリーナさんは楽しそうに笑った。
「うふふ……ジェンキンス様ったらなんてお可愛らしいのかしら!わたくしも頑張りますわ」
ちなみにミリーナさんは大きなお腹を抱えながら率先して前に出てくれていた。聖女様効果は絶大である。さすがはみんなの人気者!やっぱりもっと派手なお披露目パーティーの方がよかったかしら?本当はあのランドみたいなパレードとかしたかったんだけど。「それ、わかるの僕だけだから。そんな事したらみんなドン引きだから」って、エリオットに止められたのよね。ちぇっ。
***
「とにかく、これでもうジェンキンスルートは大丈夫だね。ただ……」
帰りの馬車の中、エリオットがポツリと呟いた。
「え?」
「ーーーー最近、ルーファスがなんか変なんだよ。いや、まぁいつもキモくて変なんだけどさ。ジェンキンスとミリーナさんの結婚が纏まった辺りからなんていうか……時々、“恐い”って感じがするんだよね。それに、使用人たちがルーファスがおねーさまの部屋の前でなんかブツブツ言ってるのを目撃してるみたいでさ。みんな僕に報告に来るんだから、参ったよ」
「使用人のみんながエリオットに?私には何にも言ってこないのに……」
「そりゃ、心配かけたくないからでしょ。結婚式の準備もあったしね。今のところルーファスが何かしてくる様子はないけど、気をつけるにこしたことはないよ。……まぁ、僕がおねーさまを守るけどさ」
最後に小声で何か言ってエリオットが少し目を逸らした。よく聞こえなくて首を傾げると、なんだかエリオットの目元が少し赤い気もする。……はっ!もしかしてエリオットはルーファスが怖いのね?!そうよね、当然だわ!いくら今は男の子だからってエリオットの中身はか弱い女の子なんだもの!ルーファスみたいな変態がおかしな行動をしてるなんて恐怖でしかないわ!それでも私を守ろうとしてくれるなんて……。
「大丈夫よ、エリオット!私がエリオットを守るから!」
エリオットの手をぎゅっと握ると、エリオットが慌てふためき出した。
「へ?え?いや、だからおねーさまに気をつけてって言ってるんだけど……!?僕の話、ちゃんと聞いてた?!」
「もっちろんよ!」
ジェンキンスの件が無事に終わった安堵感と、ミリーナさんのウエディングドレス姿を見て興奮気味だった私はちょっぴりナチュラルハイな状態だった。
「……心配だなぁ」
「私に任せて!」
このあと、エリオットの心配が的中する事をその時の私はまだ知らないでいたのだった。
「ありがとうございます!これも全てエレナ様のおかげですわ……!」
「おねーさま、泣き過ぎ。鼻水でてるよ」
ヒシッ。と抱き合う私とミリーナさんの姿を「またやってる……」と呆れた顔で見ながらエリオットが私の顔をハンカチで拭いてくれる。あれから数ヶ月、私とミリーナさんはすっかり仲良しになりこの結婚式の打ち合わせも何回もしたものだ。え?花婿はどうしたんだって……もちろんギリギリまで仕事してもらってたよ?新たな領地を経営するって大変よね~。ましてやいくらメルキューレ侯爵家の分家扱いとはいえ、当主の伯爵があのジェンキンスだし。これまでの悪評が祟ったのか、いくら妻が聖女様とはいえ不安視する声もチラホラ聞こえていたのだ。だから徹夜で仕事をして、結婚式とお披露目パーティーをすませてからまた仕事に行った。傍から見れば花嫁を放ったらかしているとんでもない旦那かもしれないが、それくらい詰め込まないと仕事が追い付かないのである。
そして、ミリーナさんがすごかった。あんなに儚げだったミリーナさんはすっかり強くなり、ジェンキンスの尻を叩く勢いで仕事をさせてくれているので、お腹の子が生まれるまでにはこの新たな伯爵領も落ち着きを見せる計算となっていた。
「生まれてくる子供のためにも、ジェンキンス様には頑張って頂かないといけませんもの。元々は才能のある方ですし、御本人がやる気にさえなってくださればきっと大丈夫ですわ!」
「まぁ、平民になって農作業する覚悟まで持ってたんだから領地経営くらい朝飯前でしょ?あんなに真面目に仕事してるジェンキンスなんて気味悪いけど。あいつ、僕に向かって「弟よ、お前も愛する人が現れればオレの気持ちがわかるさ」なんて気持ち悪い顔で気持ち悪い事言ってきたんだけど!キモッ」
よっぽど不気味だったのか、エリオットが思い出しながらうんざりした顔をしている。それを聞いてミリーナさんは楽しそうに笑った。
「うふふ……ジェンキンス様ったらなんてお可愛らしいのかしら!わたくしも頑張りますわ」
ちなみにミリーナさんは大きなお腹を抱えながら率先して前に出てくれていた。聖女様効果は絶大である。さすがはみんなの人気者!やっぱりもっと派手なお披露目パーティーの方がよかったかしら?本当はあのランドみたいなパレードとかしたかったんだけど。「それ、わかるの僕だけだから。そんな事したらみんなドン引きだから」って、エリオットに止められたのよね。ちぇっ。
***
「とにかく、これでもうジェンキンスルートは大丈夫だね。ただ……」
帰りの馬車の中、エリオットがポツリと呟いた。
「え?」
「ーーーー最近、ルーファスがなんか変なんだよ。いや、まぁいつもキモくて変なんだけどさ。ジェンキンスとミリーナさんの結婚が纏まった辺りからなんていうか……時々、“恐い”って感じがするんだよね。それに、使用人たちがルーファスがおねーさまの部屋の前でなんかブツブツ言ってるのを目撃してるみたいでさ。みんな僕に報告に来るんだから、参ったよ」
「使用人のみんながエリオットに?私には何にも言ってこないのに……」
「そりゃ、心配かけたくないからでしょ。結婚式の準備もあったしね。今のところルーファスが何かしてくる様子はないけど、気をつけるにこしたことはないよ。……まぁ、僕がおねーさまを守るけどさ」
最後に小声で何か言ってエリオットが少し目を逸らした。よく聞こえなくて首を傾げると、なんだかエリオットの目元が少し赤い気もする。……はっ!もしかしてエリオットはルーファスが怖いのね?!そうよね、当然だわ!いくら今は男の子だからってエリオットの中身はか弱い女の子なんだもの!ルーファスみたいな変態がおかしな行動をしてるなんて恐怖でしかないわ!それでも私を守ろうとしてくれるなんて……。
「大丈夫よ、エリオット!私がエリオットを守るから!」
エリオットの手をぎゅっと握ると、エリオットが慌てふためき出した。
「へ?え?いや、だからおねーさまに気をつけてって言ってるんだけど……!?僕の話、ちゃんと聞いてた?!」
「もっちろんよ!」
ジェンキンスの件が無事に終わった安堵感と、ミリーナさんのウエディングドレス姿を見て興奮気味だった私はちょっぴりナチュラルハイな状態だった。
「……心配だなぁ」
「私に任せて!」
このあと、エリオットの心配が的中する事をその時の私はまだ知らないでいたのだった。
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