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第十四章

嵐がやってきた②

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「会いたいわ」
「突然来て何言ってる。無理だ」
「なんでよ」
「さくらと桂がびっくりする」
「……。桂?誰?まさか二股!?」

 怪訝な顔をして怜を睨む母だが、子供の存在を知らないので、当然の反応だ。

「はあ?何言ってる?俺の息子だ」
「「……!?」」

 怜の爆弾発言に、両親は口をパクパクさせ声も出ない。人間驚き過ぎると、本当にこんな反応になるんだなと、怜は呑気に思っていた。

 がーー

「怜!あなた、何考えてるの?」

 母が詰め寄り胸ぐらを掴まれる。怜を見上げながら、かなりお怒りのようだ。

「まさか、女性を妊娠までさせて、放ったらかしにしてたの?」

 あまりの剣幕に、陸斗が割って入る。

「違うんです」
「どういうこと?」

 怜を掴んだまま、陸斗に問い返す。

「二年前に出会ったんですが女性とすれ違ってしまって、怜はずっとその女性の行方を探してたんです。この地に来て、ようやく再会することが出来たんです。子供の存在もそれまで全く知らなかったんです」
「そうなの?」
「ああ。そろそろ手を離してくれ。苦しい」

 怜より身長のかなり低い母が、下から引っ張っていたのだ。陸斗の説明でやっと解放された。

「じゃあ私達には孫がいるってこと?」
「そうなるな」

 次の瞬間、母は父に飛びつき泣き出した。怜は、意味が分からず戸惑う。

「なんで泣く?」
「なんで?私達の周りは、みんなもうお孫さんがいて羨ましくて……。でも、うちの長男は女性を寄せ付けないうえに冷酷と言われてるし、次男はのんびりし過ぎてるし、孫なんて夢のまた夢だったのよ?それが、突然怜から結婚するなんて言われて、居ても立ってもいられなくて飛んできたの。そしたら何?孫がすでにいるなんて、どんなサプライズ?嬉しすぎて涙が止まらない。あなた~」

 まだ父に抱きつき泣きながら喜んでいる。反対されるどころか熱烈な喜びに、両親の今までの思いを知り複雑な心境になる。

「明日、さくらに会ってもらえるか聞いてみる」

 こんなに喜んでいる両親を前に、自身も父親になってみてわかる親心を蔑ろには出来ない。

 陸斗や陽も、胸が熱くなり見守っている。桂の存在が、怜を成長させているのだ。元々経営者としての実力はあるが、人間性の成長が更に神楽坂の未来を明るくする。
 
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