内緒にしていた視線の先にいる人。

羽月☆

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9 誰もが知ってると初めて教えてもらった事。

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「こんにちは。森友です。」

ピンポンの音の後にそう聞こえた。
画面にも顔が写ってるだろう。
携帯には連絡が来ていたし。
迷わずに来れたらしい。


お母さんが出てくれて、森友君が上がって来た。

手にはこんもりとした袋があった。
一体いくつ買って来たの?

お父さんの分もある、家族みんなに二個以上はある。

その中から選んで、残りは冷凍室へ。


「どう?」

「お尻で階段を上るのが得意になってるのよ。」

お母さんがばらす。
小さい頃のエピソードを交えて、ばらす。

笑顔で聞いてる森友君。
でもその後やっぱりごめんって顔になった。

「大丈夫だよ。青色も大分馴染んできたし、腫れも少しひいたの。痛みも昨日よりもいい。」

痛み止めが良かったらしく、昨日は何とか眠れた方だ。

「今日の草次郎の散歩は?」

「今日はお母さんがするって。」

「そうなんだ。」




「委員長が逆に心配してたよ。用事を言いつけてあげればいいよって。」

「あ・・・うん。相談したから。」



「美味しかった。ごちそう様。じゃあ、お母さんは森友君がいる間に用事を済ませてこようかな。お買い物に行ってくるから。」


そう言ってさっさとアイスのカップを片付けて出かけた。

玄関のドアが閉まると静かになった部屋。

「汐さん、ごめんね。」

「元気元気。大丈夫、気にしないで。」

「あの日、怪我をしなかったら、話があったんだ。話していい?」

「何?」


しばらく閉じた口が開いて、ビックリしたことを言われた。
なんで委員長が急に話しかけてきたのか、なんで駅で偶然二回も会ったのか、委員長のドタキャンの訳まで。全部嘘だったなんて・・・・・。

そしてゆめちゃんへの返事。その意味。

やっぱり怪我したのは・・・・そのせいかもしれないと思ったりした。


「たぶん、来生さんも、もしかしたら新川さんも気がついてると思う。」

「何に?」

「僕が見てるとよく目が合った。卒業式の日に新川さんにはじっと見られた。視線を動かされたからバレたと思った。」

「全然、知らない・・・・。」

だって、じゃあなんでゆめちゃんは私をあの場に立ち合わせたの?
絶対嫌だと思う。
そんな事悲しくて、辛い、絶対嫌だと思う。
あの時に瞳ちゃんに言われたのは、委員長のことだと思った。誤解だって思ったけど、私が間違ってたらしい。


「それを伝えたくて、何度もナオに相談して。結局時間をかけ過ぎたら、こんなことになったんだけど・・・・。」

こんな事って、何で私だけ怪我するの?


「お母さんは何も言ってない?」

「うちのお母さん?」

何を言うの?何を言ったの?

「だっていくら同級生でも、春休みに二人でランチを誘うついでに犬の散歩に誘うって思うかな?僕は他の子は絶対誘わないよ。」

そう・・・かな?

委員長に誘われたら、行った?行った気もする。
でも二日も行った?行ってもいいと思う。
あのハンバーガーが美味しそうで。
草次郎も可愛いし、どうせ暇だし。
でも一日は森友君を誘ったかもしれない。
二日とも二人ってなかったかもしれない、分からない。

お母さんは何を思った?
別に何も聞かれてない。

「大学生になっても会って欲しいって言ったけど、そう言う意味で言ったんだけど。あんまり簡単に答えられたから、全然気がついてないんだなあって思ってた。」

「だって委員長もって、そう言ったし。」

「一言も言ってないよ。ナオは別。二人でって思ってたのに。勝手にナオを入れたのは汐さんだよ。ナオに会いたいのかと思ったくらいだし、大学生になったナオにも興味があるって言いだすし。」


「だってあるよ。どんな勉強するんだろうって思ったから。」

・・・そんな感じの興味だけど。


「だから、改めて、ナオも草次郎もなしでも、会ってもらえるかな?」

「え・・・・っと・・・・。」


この家は駅からそう遠くないから、スーパーもそんなに遠くなくて。
ガチャガチャと音がしてお母さんが帰ってきて、話しはそこでお終いになった。

玄関をみて残念そうな顔をした森友君が、考えて返事が欲しい、小さい声でそう言った。
目が合ったから聞こえたと分かっただろう。
軽くうなずいた。

「お帰り、お母さん。」

「ただいま。ちょっと早すぎたかしら?」

森友君に言う。
真っ赤になる森友君は素直だ。

お母さん、本当にそう思ってるの?
気がついてたの?

「明日友達が来るでしょう?ジュースも買っておいたから。冷やしておくね。」

「ありがとう。」

「ああ、重かった。こんな事なら森友君を連れて行くんだった。」

お母さんが冗談を言う。
多分冗談だろう。

なんで娘の友達を荷物持ちにするの?


「まあ、邪魔しちゃ悪いしね。」

お母さんのセリフは丸ごと無視した。
やっぱり気がついてるのかもしれない、森友君の気持ちに。

「じゃあ、僕はそろそろ帰ります。」

「あら、話は終わった?大丈夫?明日以外はまた暇になるから、また来てね。いつでも歓迎よ。」

「あ・・・ありがとうございます。お邪魔しました。じゃあ、汐さん、また。」

今日もお母さんだけが玄関まで行って見送りしてくれた。
お母さんは満面の笑顔だろう。


戻ってきた時もそうだった。


「どう、話しは出来た?」

「話って何?」

とぼけてみた。

「だって森友君が素直過ぎて、分かるんだもん。気がつかないとしたら、かなりの鈍感な娘ってことになるし。」

いつ気がついたんだろう。

「いい人なんでしょう?どう?」

「分からない。だって本当にそんなに個人的に仲良くしてたわけじゃないし。」

「二回も散歩したりランチしたりして、それでもまだなの?」

ランチは三回だけど。

「お母さんは気に入ったみたいじゃない。」

「そうね。だって娘も気に入ってるんだったら言うことなし。早いうちに会えてむしろ良かった、安心。」

「だから・・・・友達だから。」

「そう思いたいなら、どうぞ。大学が別なら取られちゃったりするかも。泣くよ~。お母さんなんてお父さんが絶対他の子に近寄らないようにように見張ってたけど。」

そう、大学の頃知り合った二人、お母さんの方が積極的に攻めたらしい。
それでもお父さんも応えてくれたんだから、まあまあ以上だったんだろう。


そんな未来はまだ想像できない。
だって本当に今日聞いたばかりの話だし。

「考える。」

はいはい。そう小さく言われた。


そんな事をお父さんにも言ったんだろうか?
森友君のお母さんも気がついたんだろうか?

大人はずるい。
そうやって何でも分かって、自由に選べる。決められる。

あと数年したら私もそんな大人になる。
自由に選べる、決められる。
人生の大きな節目に、それは本当に未来を決めること。

まだ全然見定まってない未来なのに。


「お母さんはいつ大人になったなって思った?」

「難しいなあ。ずっと大人だと思って仕事もしたし、結婚もしたし、子育てもしたけど。子供と一緒に親らしくなるけど、やっぱり子供がいると自分も大人らしくって、そう思うことが多いかも。しっかりしないと本当に子供って大変なのよ。お父さんは本当に一日中いないようなものだし、自分がしっかり育てないとって。」

別に私が特別に手がかかってたわけじゃないだろう、きっと一般的な意見だろう。

「もう一人産んだらよかったって思う?」

「まあね。こうなったらあとは美波の子供を楽しみに待つから。孫を甘やかして育てたい。体力のあるうちにお願いね。」

「何の話?大人の自覚の話なのに。」

「そうなの?でも美波もお母さんやお父さんに隠したいことの種類が変ってくるでしょう?今回だって男の子の友達だったなんて、お父さんにはもっと隠したかったみたいだし。前は男の子の友達もいろいろと教えてくれてたのになあって、そう思ったわよ。」

「小学生の頃のことじゃないの?」

「中学の時は上手に隠してた?」

「別に何も隠してないよ。」

「そうなのかしら。」

今思い出してもそんなに特別な男の子がいたとは思えなかった三年間。
女の子の友達もほとんど連絡がなくなっている。

そんなものなんだろう。



次の日、皆が来てくれた。それでも来れなかった二人。
瞳ちゃんと・・・・ゆめちゃん。

お母さんが皆に森友くんに貰ったお菓子を出してくれて、お湯とカップと、ティーバッグ、ジュースを準備してくれて。

「ごめんなさい。美波に任せたら余計に危ないから、皆さん好きにセルフサービスになるんだけど。」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます。」

「じゃあ、美波、夕方まで出かけるから。皆さんごゆっくり。」

そう言って出かけて行ったお母さん。


ソファに座る私の周りに、適当に座って、いろんなものが準備された。


「昨日はごめんね。本当に変な落ちみたいな展開で、今日で来てくれてありがとう。」

「何で捻挫したの?」

「ちょっとした段差を踏み外したの。夜も痛み止めを飲まないと夜中に寝返りしただけでも目が覚めるくらいなの。腫れてて、凄い色になってるし。」

「骨は大丈夫だったんだ。それは良かったね。」

「うん、さすがに笑えない。」

「ずっと引きこもりなの?」

「そうなる。しばらく自宅安静って言われた。昨日どうだった?」

「ああ、楽しかったよ。ほとんど食べ歩きの練り歩き。平日なのにすごく混んでたから、ちょっと大変だった。」

「そうなんだ。あ~あ、ゆめちゃんは今日もう行っちゃうんだよね。会えなかったなあ。」

そう言いながらも、少しだけホッとしていたと思う、そして申し訳ないと思って、自分の足を見る。

「連休とか夏休みに帰ってくるって言ってたよ。」

「うん、そう私も連絡したの。また会えるといいなあ。」

そう思いたい。
そう思いたくて言葉にした。微妙な響きは誰にも気がつかれなかったと思う。


「ゆめ、失恋したって。告白したみたい。」

驚いた・・・ふりも出来た。
だって・・・・教えたの?

「本人が言ったの?」

「うん、最後にどうしても言いたかったって。でも全然期待してなかったっても言ってた。」

「遠くに行くしね。」

そう言ってみた。
最後の思い出、それでもハッピーな思い出だったらうれしかっただろう。
もっと違う言葉でも期待しただろうか?
せめて返事保留とか・・・・・・なんて中途半端なことできないか・・・・・。
本当の事を言う優しさもある、そう思ってもいいのだろうか?
私じゃなくてゆめちゃんがそう思う分にはいいだろう。


私は何も言えない・・・・。


「ねえ、遠くにも行かないんだから、美波はどうなの?」

「何?」

皆の注目を浴びてたらしい。

「知ってるでしょう?ゆめの相手。」

一緒にいたことまで教えたんだろうか?

軽くうなずくだけにした。

「美波ならいいと思うのに。ゆめもそう思ってると思うよ。」

「なにを?」

何を思われてるの?
ちょっと・・・・待って・・・・・・。


「だって森友君は美波を見てるって思う。ゆめが話しかけてても、美波がいる時は美波を見てたよ。」


なんでみんなそう思うの?
顔が熱くなる。
ゆめちゃんも知ってた?そんな・・・・・。

「何か・・・言われた?」

ブンブンと首を振る。
誰に?ゆめちゃんに?森友君に・・・・・・・?

「そうか。でもいいと思う。」

そうつぶやかれても、何も言えない。
やっぱりそれはバレたくもない事だった。
もうすぐ会わなくなるなら、このまま内緒にしたい。
大人じゃなくても、皆思ったより周りを見ていたらしい。
何かバレるようなことがあっただろうか?
思い当たらない。


「それと、瞳の事は知ってるんでしょう?偶然バレたって言ってた。」

瞳もちょっとだけ嘘をついたらしい。

「うん、後輩の子でしょう?」

元気に話を盛り上げる。嬉しそうに。だって立会人としてもうれしかったし。

「今更情報を公開されてもどんな子だかさっぱり分からない。」

「可愛い子だったよ。少しは年下感があるかもしれないけど、お似合いの可愛い子だった。」

「へえ。だって演劇部の舞台を見てって、一緒の舞台を見てたはずなのに、あんまり記憶にないんだよね。」

「そうだよね。主人公じゃないと分からない。」

「瞳は楽しい春休みみたいじゃない。今日は家族の用事で来れないって。」

「うん、メッセージが来たから。」

「もう、せっかくの春休みなのに、なんで引きこもりなの?」

「私だって悲しいよ。」

「毎日何してるの?」

「漫画を読み返して、時々英語の勉強をしなさいと言わたからやって、あとはほとんどお母さんとおしゃべりしたり、一緒にテレビ見てる。」

「寂しいなあ。いつになったら外に出れるの?」

「分かんない。来週には随分痛みも引くだろうって言われたけど。二週間くらいはかかるって言われた。」

「もう、ドジすぎる。」

「でも入学式には間に合うんだから、良かったよね。出遅れたくはないよね。」

「それは悲惨かも。」

喋りながらもお菓子は減って行く。
お土産とは別に皆もお菓子を持って来てくれた。

「アイスが冷蔵庫にあるよ。たくさんあるから食べたい人はどうぞ。」

「このクッキー美味しいね。」

「うん、貰い物なの。動かないのにこんなおいしいもの食べてて、なんだか一人で太りそうなの。遠慮しないで食べてね。」

「誰もしないよ。」

「そうか。それは失礼しました。どうぞどうぞ。」

「本当においしい。」

森友君に教えてあげたい、好評だったと。
多分教える。
毎日心配の連絡はくるから。



とりあえず連休にまた会おうと約束をした。
バイトをするだろうけど、連休後からかもしれないと。
そこまではいろいろと様子を見ながらだから。

「今度転んだりしたら本当に誘われなくなりそう。」

「そうだよ。ケガするなら手にしてね。」

「そんな不吉な。手だって不便だよ。」

「口よりいいでしょう?前歯全部折れたなんて言ったら、食事も楽しめないよ。」

「元気でいます。こんな怪我だって初めてだし。」


三時間くらい喋って食べて飲んで、それはいつもの事。

夕方になってみんなが帰って行った。
何とか玄関までは見送りに出た。

痛みもちょっとは良くなってきてる。
まだ足先をつくことも恐々で体重もちょっとしかのせられないけど。

玄関でみんなに手を振る。

それでも最後に伊那ちゃんが戻って来た。

「どうしたの?」

「忘れ物。」

そう言われてリビングを振り返る。私が取りに戻るのは大変。
そう思ったら耳元で言われた。

「ねえ、本当に気がついてないなら考えてもいいと思うよ。森友君、いい人だと思う。上手くいくと思う。」

そう言って笑った。

「ああ、あった。良かった。」

そう声を大きくしてドアに手をかけた。
笑顔で手を振られて、手を振り返しながら、閉まるドアを見ていた。


伊那ちゃん、どうしても言いたかったの?
気がついてないって、私がってこと?

玄関にぼんやり立っていたら、丁度お母さんが戻って来た。
玄関に立ってる私を見て驚いていた。

「さっきそこで皆に挨拶されたわよ。いいお友達ね。」

「うん。」

「美波、どうしたの?何かあったの?」

急いで表情を戻した。

「ううん、ちょっと・・・・。」

お母さんが急に心配な顔をしたのが分かった。

「大丈夫。ちょっと・・・・。」

ちょっと・・・・の先がなかなか言えない。

「ちょっと待って。整理する。」

ひょこひょことソファのところまで戻った。
テーブルも片付けてくれていた。
洗い物もしてくれてて、余ったお菓子とお土産がテーブルに寄せられていた。


ソファに座りながら考える。

皆が思ってる。森友君の事を。
誰だって褒めると思う。そう目立たなくてもいい人なのはわかる。

乱暴でも下品でもなく、優しいのは分かってると思う。
委員長と本当はすごく仲がいいのを知ってるだろうか?
クラスではそうでもなかったから、知らないかも。

私は皆よりちょっとだけ知ってる。
ゆめちゃんのことも丸わかりだった。
だから自分のことなんて考えることも・・・しなかった。

「本当にどうしたの?」

お母さんが隣に座る。

「皆が森友君の事、言ってた。ゆめちゃんが振られたって言ったらしい、そして誰もが私の事を思ったみたい。ゆめちゃんも知ってるから、いいんじゃないのって。」


「何?複雑な事?」

「ゆめちゃんがずっと森友君のことが好きで、一番に話しかけてたけど、みんなは森友君は違う人を見てるって。私を見てるって。ゆめちゃんもそれは分かってただろうって。」

「だってゆめちゃんが森友君に告白したいから一緒について来てって、私が頼まれたの。それで、私の目の前で森友君に振られたの。森友君は好きな子がいるからって、その時言ったの。私は全然知らなかったから・・・・・。」


「まあ、そんな事もあるんじゃない。確かめたかったのかもしれないし、どうしても伝えたいって事かもしれないし、諦めたかったのかもしれないし。」

「うん、だってゆめちゃん、今日引っ越しして遠くに行くから、もし森友君がいいよって言ってもすぐに遠距離恋愛になってたし。思い出作りだって言ってた、スッキリして良かったって。」


「いい子なんじゃないの?わざとなのかしら?」


「わからない。何も言われてないから。」

他の子に言われても、ゆめちゃんには言われてない。


「結局、昨日ちゃんと返事できたの?」


「何?」


「だって森友君が一仕事終えた顔してたから、言えたんだろうなあって思ったんだけど。美波は考えるなんて言うし。ねえ、好きでしょう?だから散歩にも付き合ったし、内緒にもしてたんだよね。ケガしなかったら、今日もお土産持って散歩に行ったんじゃないの?」

テーブルの上のお土産を指さされた。
怪我しなかったら昨日は皆と出かけてただろう。
そして今日、お土産を渡すなんて言いながら、草次郎と森友君と歩いてる自分も簡単に想像できた。



「だから素直になりなさい。本当に誰かに取られて泣き言を言うくらいなら、後悔しないように、自分の気持ちは本当に大切にしなさい。人の気持ちよりも、何より、自分の気持ちをね。」


それでいいんだろうか?合ってる?


「ほらほら、お土産あるから、明日ここに来てもらっていいんじゃない。お母さんはまたお出かけしてもいいわよ。」

顔が赤くなる。またワザと二人きりにしようとしてる?

「さてと、夕飯は遅くていいわね。」

そう言ってキッチンに行ったお母さん。

さっきクッキーが好評だったって教えようと思ってた。
ずっとずっと森友君の事を思い浮かべてた。
ゆめちゃんがいないのに、ずっと。

「連絡してみる。」

素直にそう言ってお尻上がりで二階に行った。

さすがにあそこで連絡はちょっと恥ずかしい。文字だとしても恥ずかしい。
ゆっくり携帯を開いたら皆からも連絡が来ていた。

予定した五月の連休予定を早速あげていてくれたらしい。
ゆめちゃんと瞳ちゃんが返事をしていた。


草次郎の写真を見て、森友君に連絡した。

『皆にお土産をもらったの。一緒に食べない?この間頂いたクッキーも大好評でした。みんなすごく美味しいって言ってた。』

すぐに返事が来た。

散歩も終わって草次郎とダラダラとしてたらしい。

『遊びに行ってもいいの?まだ歩けないよね。痛みはどう?』

『大分痛みはいいよ。でもまだ自宅安静中だから、草次郎の散歩が終わったら、時間ある?』

『もちろん。でも遊びに行ってもいいのかな?お母さんに図々しい同級生って思われてない?』

『思われてないよ。気に入られてるよ、素直だって。』

『良かった。それはうれしい。じゃあ、お昼ご飯食べた後に会いに行きたい。また連絡します。』

『うん。待ってるね。でも無理しないでね。委員長に誘われたらいいんだよ。』

『ナオはゲームに夢中で遊んでくれない。連絡もないくらい。』

そうなんだ。

『じゃあ、楽しみにしてる。』


そこまでやり取りして満足して終わりにした。
英語のテキストを開いて、カリカリとやる。

なんだか想像と違う春休みの過ごし方になった。
元気だったら毎日何をしようかと考えてたかもしれない。
家で出来ることは少ない。
だってまだ家事手伝いも出来ない状態。
何も言われないから手伝ってない。


お母さんに連絡した。

『明日午後遊びに来てくれるって。英語します。しばらくしたら夕飯の準備手伝います。』

『はいはい。』


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